新型コロナ クォータリーリポート その2


初めに

2021年も半年が経ち、2021年の統計では現状を捉えきれなくなってきたので、2021年7月から統計を取り直してみたところ、結構んぢゃな数字が出てきた。そこで、四半期ごとの感染状況とワクチン接種状況の統計を取り直したところ、さらにんぢゃという数字が出てきた。

先週は2021年第3四半期(7月1日から8月31日)までの新型コロナの陽性件数、死者数、ワクチン接種回数などの項目をランキングにして、それぞれ上位20国をリストして、第一位の国地域の感染状況の説明をした。引き続き、今回は第3四半期(8月31日時点)の陽性件数ランキング上位10国について、四半期ごとの変化を紹介し、いつもの週ごとの統計も合わせて、今後どうなるかを数学的に解析する。

データ等の入手先は先週の投稿に記してあるので、そちらを参照してください。

A. 感染大国の変遷

下の表は20年の四半期ごとの上位20カ国と日本の順位である。

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第1期でが欧米がトップ20を独占する。西ヨーロッパばかりで東はない。その中に中国と韓国がある。日本は30位であった。この時期世界の202の国と地域とプリンセスダイアモンド号で新型コロナの陽性患者が確認されている。欧米の感染爆発は3月から始まったが、中国は1月、韓国は2月に感染爆発が発生した。中国の増加率は毎週800%、韓国の増加率は1300%であった。ヨーロッパではスペインとイタリアから始まったが、増加率は300%であった。WHOはヨーロッパの第1波を目の当たりにして初めて、3月12日にようやく緊急事態宣言出した。2月の韓国での感染爆発の時に緊急事態宣言を始めておけば少しは違った展開になったと考えられるかもしれない。しかし、アメリカでは緊急事態宣言と同時に、中国からの渡航を制限した。その時に第1波が発生したので、結局は同じだったかもしれない。

第2期では、インドやサウジアラビアなど西寄りのアジアと、ブラジルやべルーなどの南米で感染拡大が深刻になる。感染は世界215国地域に広まった。ロックダウン効果でヨーロッパは順位を下げる。日本でも第1波が発生したが、緊急事態宣言を発令し一旦は終息を見せた。

第3期では、南米とアジアでさらに感染拡大し、インドがアメリカを抜かして世界一の感染大国になった。アメリカと日本では第2波が発生した。アメリカはBLM暴動、日本では都知事選が第2波の原因と考えられる。

4半期ではヨーロッパで第2波、アメリカで第3波が発生した。12月になっったら、その波の威力が大きくなった。また、12月にはヨーロッパを中心に37カ国でワクチン接種が始まった。

次の表は21年の四半期ごとの上位20カ国と日本の順位である。第3期は8月末の時点のものである。

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21年第1期では、ポーランドやチェコなど東ヨーロッパでの拡大が目立つ。ワクチン接種国も世界168カ国地域に広まった。ワクチン接種を開始した国では、感染の減少が始まった。摂取と同時にロックダウンなどの規制も実施したので、ワクチンの効果であるとは一概に言い切れない。

第2期はアメリカと西ヨーロッパでの感染縮小が目立つ。インド、ブラジルがアメリカを抜いた。第1期でワクチン接種率が比較的高かった欧米ででは陽性件数死者数ともに減少する傾向が見られる。そこで、ワクチン接種が推進され、接種回数が第一四半期の約4倍になり、接種国も217国まで増える。接種率は約23%と倍増した。

第3期では、ワクチン接種率は約40%を超えた国で再び感染拡大傾向になる。また、今までほとんど感染0であった地域でも第1波が発生した。地域的にはヨーロッパ、カリブ海、インド以東のアジアである。南米はペルー由来のラムダ株をWHOが要注意株と認定した6月14日以来、感染が減少している。今まで感染がほとんど0であった地域はワクチン接種開始が遅く接種率が低いので、接種率と感染の関係が指摘されている。しかし、接種率が高い国でも感染拡大は起こっている。


B. ワクチン接種率が高くなると致死率が減る?

ワクチンを接種しても新型コロナに感染しないというデータは存在しない。ワクチンの原理を考えれば、ワクチンを生産する元となった株、例えばアストラゼネカに対するアルファ株、に対しては感染することはない(だろう)が、それ以外の変異株に関してはよくわかっていない。しかし、変異株とは言っても新型コロナウイルスであるのだから、構造が似ており、ある程度はウイルスの増殖を抑えることができると考えられる。その結果が巷で言われる、重症化しにくい、と言うことである。Worldometer でも Serious の項目で重症者数を取り上げているが、重症者の定義が各国でまちまちであるのと、重傷者の数え方が陽性件数とは異なるので、重症者の比率を求めることが難しい。このような統計から検定することは難しい。

だだし、重症化しにくいのなら、死に至るケースも少なくなると考えることができる。下のグラフは、世界各国の接種率(横軸)と第三四半期の致死率(縦軸)をプロットしたものである。右に行くほど接種率が高くなり、上にいくほど致死率が上がる。

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グラフが三角形なので、接種率が上がれば致死率が下がると言うことができる。しかし、接種率が低ければば致死率が高くなるとは言えない。接種率が低くて致死率が低い国は北朝鮮などたくさんあるし、R2≒0.1503 なので接種率と致死率に負の相関があるとは言えない。

次のグラフは接種率ごとに、どのくらいの数の国地域でどのくらい致死率が減少あるいは増加させたかを表している。

致死率の変化と接種率


縦軸は接種率、横軸は国の数を表している。グラフの中央から右が、致死率を減少させた国の数、左が上昇させた国の数である。例えば、接種率が1%以上10%未満のクラスでは、11の国と地域で致死率が1ポイント以上上昇している。一方、6カ国で致死率が1ポイント以上落ちている。このクラスでは、致死率が上がった国が23国地域あるのに対し、15の国と地域で致死率が下がった。一方、接種率が50%以上70%未満のクラスでは、33の国と地域で致死率が下がり(うち11カ国で1ポイント以上の減少)、13の国と地域で致死率が上がっている。全体的には、接種率が上がれば致死率が下がった国が多いと言えるかもしれない。

ただし、 一つの接種率クラスの中で減少した国地域は欧米が多く、上昇した国地域は中南米と中東、東南アジアが多いと言う特徴がある。これは、欧米では少なくとも3回の波が来ているのに対し、その他の地域はせいぜい一、二回であることと関係がある。と言うのも、感染症研究者の間では、二度目以降の感染の波は感染力は強くなるものの、致死力は弱くなるという法則が存在するからである。

下のグラフは世界での致死率(緑の折れ線ぐらふ)と陽性件数(青の棒グラフ)の混合グラフである。

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陽性件数は20年は毎期増加していった。伸び率も大きかった。最初は中国。治ったかなと思うと、次はヨーロッパやアメリカ、治ったかなと思うと今度はアジアというように、感染の中心が移動し、感染が移動するたびに、規模が大きくなった(増加期間が長く、ピーク時の陽性件数が大きくなった)からである。しかし、死者数は減少していたので、致死率は下がる結果となった。致死率は20年1期から2期にかけて上昇しているのは、ヨーロッパの第1波が1期から2期にわたる長いものであったからである。

20年後半からは同じ場所で感染拡大が繰り返された。例えば、アメリカでは7月に第2波、11月に第3波が発生した。二度目三度目はピーク時の陽性件数は高くなるのだが、増加期間が短くなった。21年からは陽性件数の伸びが小さくなった。

また致死率が下がる原因として、医療従事者が患者に対してどう対処すれば良いのかわかってきた、と言うこともある。最初のうちは、特効薬もワクチンもなく、手探り状態であった。のちに、既往症を持つものは重症化しやすいことなども判明して、手遅れになることも少なくなったことが大きいのではないかとも考えられる。


D. 陽性件数上位10国の現状と予測

下の表は2021年第3四半期(第3期)の陽性件数上位20カ国のプロファイルである。

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1位のアメリカから10位のフランスまでと日本について、感染状況を振り返り、今後どうなるかを数学的に予測してみる


1位アメリカでは南部で感染拡大が続いている

アメリカの21年第3期は5,698,565件の陽性と39,015人の死者があった。陽性件数は2位インドの倍以上ありダントツの1位であるが、死者数は第5位である。致死率0.7%で世界平均の半分以下である。人口100万人あたりの1日平均陽性件数は275.0件(36位)、面積1000㎢当たりの陽性件数は9.5件(89位)で、いずれも世界平均(72.8件、4.2件)よりも高い。ロシアほどではないが、人口100万人あたりと面積1000㎢当たりとで10倍以上の差が出ているのは、アラスカや大平原など人口の少ない広大な地域があるためである。

次のグラフはアメリカの四半期ごとの陽性件数と致死率の複合グラフである。

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アメリカでは、20年4期が陽性件数のピークであった。大統領選での騒動が原因と思われる。しかし、21年1期は19.2%減り、第2期はさらに68.9%の大幅減となり、第2期の陽性件数は、インド、ブラジルに次ぐ第3位に下がった。しかし、21年3期は73.8%増加して、再び1位となった。3期はまだ3分の2しか経っていないが、すでに2期の陽性件数を上回っている。インド、ブラジルは第3期に陽性件数が減少しているので、2倍以上の差がついた。

一方、死者数は2021年第1期がピークであった。第2期の減少率は75%だったので、第3期は減少率が45.3%と少し下がったが。実は7月半ばから死者数は7周連続増加中で、毎週の平均増加率は24%なる。陽性件数の増加が10週続いたので、死者数の増加はあと3、4週ほど続くと考えられる。

21年1期では陽性件数が減少傾向であったため致死率が上昇した。2期では陽性件数の減少傾向が止まり、第3期では増加傾向となったので、再び致死率が減少となった。今の所、死者数の増加率は陽性件数の増加率に比べて低いので、致死率が下がる結果となっている。3期の致死率は0.7%で、第2期の半分以下となった。しかし、これからは陽性件数が減少し死者数が増加するので致死率は増加すると予想される。


アメリカは早くからワクチンの接種を開始した国で、現在は、ファイザー、モデルナ、ジョンソンの3種類を接種している。内訳はファイザーが56%、モデルナが40%、ジョンソンが4%となっている。総接種回数は3億7000万回を超えて、中国、インドに次ぐ世界第3位であるが第3期の接種回数は約4370万回で、第2期に比べて75%も減少した。

第3期の1日平均接種回数は人口100万人あたりで2114.5回(138位)、面積1000㎢当たりで73.2回(151位)で、いずれも世界平均(4604.9回、266.2回)よりもかなり低い。接種率は3月末で28.5%、6月末で54.3%、8月末で61.5%となった。今後も接種回数の増加のペースは上がらないだろうが、9月からは追加接種が計画されている。

アメリカも国土が広いので、ちょうどヨーロッパが東西で異なるように、感染状況は地域別に異なっている。国全体では7月第2週に感染の波が発生したのだが、それは、51の州と特別区のうち28州で7月第2週に感染の波が発生したからである。一方、アーカンソー、ミズーリ、オクラホマ、テキサスでは6月半ば、カリフォルニア、アリゾナ、ワシントンD.C.、フロリダ、ジョージア、イリノイ、カンザス、バージニアでは6月末に波がアメリカ全体に先行して発生している。イリノイ以外はすべて南部にある。下の表はアメリカを6の地域に分けたときの21年の各四半期の陽性件数とその前期からの伸び率、および致死率である。

アメリカ

南部で感染の波の発生が早かっただけではなく、感染の勢いも大きい。南部(南東部、テキサス周辺、南西部)はいずれの地域でも、伸び率が100%以上になっている。特にテキサス周辺は、第3期はまだ途中であるにもかかわらず、第2期の4倍近くになっている。また、フロリダなど南東部やワシントン州などの北西部では、第3期の波のピーク時の陽性件数が、第1期の波の陽性件数よりも多くなっている。北東部以外は全て第3期に陽性件数が増加すると予測される。

致死率は1期では北東部とテキサス周辺でアメリカの平均よりも高かったが、2期では、南部がアメリカの平均よりも高くなった。第3期では中西部とテキサス周辺でアメリカ平均より高くなっている。

アメリカの21年3期の感染増は、ワクチン接種率が高まり、ニューヨークやカリフォルニアなどいくつかの州で規制緩和が行われ、例えば、公共の場でマスクをしなくても良くなったことが原因であると考えられている。疾病予防センターは慌てて公共の場ではマスクをするように推奨することとなった。北東部では当たっているかもしれないが、テキサスなど南部ではそのような規制緩和は特に実施したという報告はないので、感染拡大の原因は他にある。1番の可能性は不法移民であろう。通常なら、国境の検疫で陽性患者は隔離されるが、不法移民は検疫を受けずに、アメリカに入国してくるからである。隣国メキシコでは6月の初めから感染拡大が始まっていた。また、キューバなどカリブ海諸国も同じ時期感染拡大になっている。

2位インドは10月から感染拡大するかもしれない。

インドの2021年第3期は2,400,315件の陽性と39,579人の死者があった。陽性件数は1位アメリカの半分以下であるが、死者数はアメリカよりも若干多い。致死率は1.7%で世界平均よりも少し高い。1日平均の陽性件数は人口100万人あたりで27.7件、面積1000㎢あたりで11.8件で、人口100万人あたりに関しては世界平均よりも低いが、面積1000㎢あたりについては世界平均よりも高い。これは、インドはそれほど密ではないが、結構満遍なく感染が広まっていることを示す。


次のグラフはインドの四半期ごとの陽性件数と致死率の複合グラフである。

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インドでは、2021年第2期が陽性件数のピークで、インドでの全陽性件数の55.4%が第2期に確認されている。しかし、2021年第3期は86.8%の大幅減となった。インドでは3月半ばから感染拡大になり、9週間連続で陽性件数が増加した。平均の増加率は43%で、ピーク時は1日あたり40万件以上の陽性件数があった。5月半ばから減少傾向となり、7月末まで11週連続で減少した。この間の平均減少率は19%以上であった。しかし、8月からは増えたり減ったりを繰り返している。

死者数も2021年第2期がピークであった。第3期は第2期に比べ83.2%の減少となった。死者数も陽性件数同様、3月半ばから9週連続で増加(平均増加率34%)し、5月半ばから11週連続で減少(平均減少率3.6%)であった。死者数の減少率が陽性件数の減少率に対して小さいので、インドの致死率は21年第2期から上昇した。第3期では陽性件数が減少したため、致死率はさらに上昇した。インドは長らく致死率が低い国であったが、第3期でついに世界平均を超えた。インドでのこの感染拡大はデルタ株によりもと言われている。この統計からもデルタ株は致死率を上げる、すなわち重症化しやすい傾向があることは、否定できない。


インド1月15日からワクチンの接種を開始した。現在は、自国製のコバクシン、アストラゼネカ、ロシア製スプートニクの3種類を接種している。内訳は公表していない。総接種回数は約65億回になり、中国に次ぐ世界第3位であるが接種率は34.1%と高くない。

第3期の接種回数は約3億1564万回以上で、第2期に比べて20%増えた。スプートニクを追加したのは6月28日なので、もしスプートニクを追加しなかったら第3期の接種回数は第2期よりも少なくなっていた可能性がある。6月末の接種率は20%だったので、もしスプートニク和追加しなかったら、今でも接種率は20%台にとどまっていたっと考えられる。

1日平均の接種回数は人口100万人あたりで3647.4回、面積1000㎢あたりで1548.7回で、人口100万人あたりに関しては世界平均よりも低いが、面積1000㎢あたりについては世界平均よりも大幅に高い。全体の順位では32位になるが、日本より面積の広い国(60カ国ある)の中ではトップである。都市部だけでなく、地方でも積極的にワクチン接種を行っているようである。

下の図はインドのワクチン接種回数と陽性件数のグラフである。接種率が20%を超えて、接種回数が増えるにつれ陽性件数が減少するという傾向になっている。このままいけば接種率が40%を超えると欧米のように陽性件数が再び増え出すかもしれない。

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3位ブラジルは感染減少中


ブラジルの21年3期は2,163,013件の陽性と62,279人の死者があった。陽性件数は1位アメリカの半分以下であるが、死者数はアメリカやインドの1.5倍以上で世界2位である。したがって、致死率は2.9%と高く、アメリカの約4倍、インドの約2倍となっている。世界では35位である。1日平均の陽性件数は人口100万人あたりで162.8件、面積1000㎢あたりで4.1件で、人口100万人あたりに関しては世界平均よりも高いが、面積1000㎢あたりについては世界平均と同程度である。これは、ブラジルはアマゾンなど人口の少ない広大な地域があるためである。

次のグラフはブラジルの四半期ごとの陽性件数と致死率の複合グラフである。

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ブラジルの陽性件数のピークは、インドと同じ21年2期であるが、1期も陽性件数は多く、合わせるとブラジルの全陽性件数の半分を超える。3期は2期に比べて62.9%減となった。死者数は21年第2期が最も多いが、第1期も多い。合わせて、全体の55%を占める。3期の死者数は2期に比べて68%の減少となった。

致死率は2020年3期から世界平均よりも高くなった。また、21年は1期、2期ともに致死率を上昇させたが、3期は少し減少した。

南米には12の独立国と2つの海外領土があるが、仏領ギアナと英領フォークランド諸島では致死率が世界平均以下である。ベネズエラ以外の独立国全てで致死率が平均より高くなっている。ワクチン接種率はそのベネズエラは21%しかなく、それ以外の国では30%以上ある。また、致死率が下がった国はペルー、エクアドル、ブラジル、スリナムのみで、他は上昇している。致死率が高いのは南米特有の事情がある可能性が高い。

ブラジルのワクチン接種は1月16日から始まった。当初はシノバック、アストラゼネカを接種していた。5月にファイザー、7月にジョンソンを追加した。ボルソナロ大統領は新型コロナをめぐってアンに中国を批判したという記事(https://www.yomiuri.co.jp/world/20210508-OYT1T50232/ )が5月8日に出たが、その直後にファイザー、そしてジョンソンを追加したところを見ると、中国からシノバックの提供を拒否されたのかもしれない。第3期のワクチン接種回数は第2期に比べ16.3%とそれほど多くはなっていない。5月6月中は毎週の接種回数の増減が激しく、接種回数で日本に追い越されたが、7月以降は接種回数は安定し、再び日本よりも接種回数が多くなった。接種率は63%と高い。1日平均の接種回数は人口100万人あたりで6974.5回、面積1000㎢あたりで175.5回で、人口100万人あたりに関しては世界平均よりも高いが、面積1000㎢あたりについては世界平均よりも低い。

下の図はブラジルのワクチン接種回数と陽性件数のグラフである。ブラジルでは接種率は高いが基本的に接種回数は増加傾向にある。従って、陽性件数は減少傾向である。しかし、接種回数は近いうちに確実に減少にする。そうなったときに、ヨーロッパ同様陽性件数が再び増加する可能性もある。

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4位イギリスでは国中至る所に陽性患者がいる

イギリスの2021年3期は1,189,117件の陽性と4,395人の死者があった。陽性件数は1位アメリカの約3分の1であるが、死者数はアメリカやインドの文字通り桁違いに低い。致死率も僅かに0.2%である。1日平均の陽性件数は人口100万人あたりで469.7件、面積1000㎢あたりで132.3件で、両者とも世界平均よりも大幅に高い。特に、面積1000㎢あたりについては世界
第17位である。面積が10万㎢以上の国は世界に107カ国あるが、その中で最も高い。

次のグラフはイギリスの四半期ごとの陽性件数と致死率の複合グラフである。

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陽性件数のピークは20年4期である。21年1期は8.5%減少したが、陽性件数は180万件以上あった。ちょうどこの頃はイギリス変異株と呼ばれたアルファ株の全盛期で、20年第4期と21年第1期でイギリスの全陽性件数の56%を占める。しかし、1月中旬からは減少に転じ、2期75%減少となったが、3期は323%増となり、21年1期の陽性件数を超えた。最終的には今まで最大だった20年第4期を超えると予測される。

死者数は21年1期が一番多く、イギリスの全死者数の40%を占める。2期では実に96%減少となった。3期は206%増であるが、陽性件数の伸び率に比べると小さくなっている。

イギリスの致死率は20年第1期第2期がともに10%以上で一番高い。これは、発生初期でシンガかコロナの感染者に対する処置の仕方が全くわからず、試行錯誤を繰り返していたためと考えられる。ある程度処置の仕方のわかった第3期以降は致死率は激減している。アルファ株のせいで21年第1期は致死率が上がったが、以降は減少している。

イギリスのワクチン接種は2020年12月13日から始まった。当初はファイザーとアストラゼネカを接種していた。4月にモデルナを追加した。2021年第3期のワクチン接種回数は12,929,417回で、第2期に比べて70%近く減少した。第2期終了の時点で完了率が48%あったので、ワクチンを受けるべき人の数がそれほどいないので減少となった。。1日平均の接種回数は人口100万人あたりで3053.2回、面積1000㎢あたりで860.0回で、人口100万人あたりに関しては世界平均よりもひくいが、面積1000㎢あたりについては世界平均よりも大幅に高い。

イギリスではアストラゼネカを追加した途端に陽性件数の激減が見られる。このことはアストラゼネカはアルファ株にか効果があると考えられる。したがって、第3期では別の変異種が原因であると考えられる。アルファ株がさらに変異したものか、それとも外来のものかはまだ不明であるが、致死率が異常に低いので、アルファ株の更なる変種である可能性が高い

また、7月末に陽性件数が減少したが、8月末から再び増加傾向である。イギリスも9月入学なので、アメリカ同様、学校の再開と共に感染数が増加したと考えられる。従って、21年第3期は過去最悪の300万件以上になると予想される。


5位インドネシアは全陽性患者の半分がこの7月8月に感染している

インドネシアの21年3期は1,911,529件の陽性と74,532人の死者があった。陽性件数は1位アメリカの約3分の1であるが、死者数はアメリカの2倍近くで世界第1位である。致死率は3.9%でブラジルよりも高く、世界16位である。1日平均の陽性件数は人口100万人あたりで111.3件、面積1000㎢あたりで16.1件で、両者とも世界平均よりも高い。

次のグラフはインドネシアの四半期ごとの陽性件数と致死率の複合グラフである。陽性件数のピークは2021年第3期で全陽性件数の47%を占める。

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インドネシアは少しづつ陽性件数を増やしていった。まるで津波の前に一時的に波が引くように、21年2期で13%の減少となったが、3期では186%の大幅増となった。3期の陽性件数は47%になる。3期の終了する9月までには50%を超えていると予測される。死者ううも同様で、21年2期では6%賞であったが、3期では322%と陽性件数の2倍近い増加率となった。すでに、全死者数の56%あり、最数的には66%を超えると予想される。

インドネシアの致死率は2020年2期を除いて、いつでも世界の平均致死率よりも高い。世界全体では2021年の致死率が下がっているが、インドネシアは逆に増え続けている。3期も2期に比べ1.25ポイントの大幅上昇となった。

インドネシアの第3波は感染力が非常に強く致死力も高いので、外来株が原因である可能性が高い。インド由来のデルタ株が有力であるという説もあるが、致死率がインドで猛威を奮っていた時よりも高いので、別の変種の可能性もある。

インドネシアのワクチン接種は1月12日から始まった。当初はシノバックを接種していた。3月にアストラゼネカを、5月にシノファームを、7月にモデルナを、8月末にファイザーと2ヶ月おきくらいにワクチンを追加した。2021年第3期のワクチン接種回数は56,221,858回だった。1日平均の接種回数は人口100万人あたりで3275.0回、面積1000㎢あたりで474.5回で、あまり多くはない。接種率は3月末で3%、6月末で10%となかなか接種が進まなかった。モデルナとファイザーの追加によって、第3期は第2期に比べて80%以上増加した。それでも接種率は25%に満たない。

下のグラフはインドネシアの陽性件数とワクチン接種回数のグラフであるが、接種率の少ない国の特徴としての陽性件数がワクチン接種回数に比例して上昇するという傾向が見られる。接種率が20%を超えた7月16日以降は接種回数が増えるに従って、陽性件数が減少するという形になった。ヨーロッパでの接種率と陽性件数との関係が当てはまるならば、しばらくはこの減少傾向が続くと思われる。

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6位. イランは致死率が下がった

イランの21年3期は1,787,506件の陽性と23,530人の死者があった。致死率は1.3%で世界平均よりは低い。1日平均の陽性件数は人口100万人あたりで338.2件、面積1000㎢あたりで17.5件で、両者とも世界平均よりも高い。

次のグラフはイランの四半期ごとの陽性件数と致死率の複合グラフである。

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陽性件数のピークは21年3期である。21年1期は14%減であったが、2期は93%増、3期は35%増で第2期の伸び率の方が高い。2期と3期を合わせると、イランの全陽性件数の60%以上になる。死者数のピークは20年4期で、2期と第3期はそれほどでもない。合わせても、イランの全死者数の40%ほどである。また3期の死者数の増加率は8%で、陽性件数の伸びよりも小さい。

イランの致死率は2020年中は世界平均より高く、2021年は低くなっている。21年3期の致死率は第2期に比べ0.3ポイント下がった。

イランのワクチン接種は2月8日から始まった。当初はスプートニクを接種していた。4月にアストラゼネカを、5月にシノファームとバーラトを、8月に自国製のコブイランを追加した。2021年第3期のワクチン接種回数は21,339,339回だった。1日平均の接種回数は人口100万人あたりで4037.7回、面積1000㎢あたりで208.8回で、平均よりもちょっと少なめである。接種率は、接種開始が遅かったので、3月末で1%未満、6月末で5%未満と非常に低かったが、第3期は、第2期よりも接種回数が約300%増え、接種率も20%を超えた。

下のグラフはイランの陽性件数とワクチン接種回数のグラフであるが、接種率の少ない国の特徴としての陽性件数がワクチン接種回数に比例して上昇するという傾向が見られる。しかし接種率も20%超えたので、ヨーロッパと同様にこれからしばらくの間は陽性件数減少が見込まれる。

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7位ロシアは致死率が上がった

ロシア021年第期は1,404,366件の陽性と48,010人の死者があった。致死率は3.4%で世界平均の倍以上高い。1日平均の陽性件数は人口100万人あたりで155.1件、面積1000㎢あたりで1.3件である。人口100万人あたりでは世界平均より高く、面積1000㎢あたりでは世界平均より低いので陽性患者の発生する地域がはっきりしている。

次のグラフはロシアの四半期ごとの陽性件数と致死率の複合グラフである。

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陽性件数のピークは20年4期で、21年は1期、2期ともに30%減少させたが、第3期では逆に44.9%増加した。死者数のピークは21年3期である。1期は死者数は15%の増加、2期は13%の減少、3期は32%の増加である。従って、21年は致死率増加傾向であり、世界の趨勢とは逆になっている。3期は第2期に比べ0.4ポイント下がった。致死率が以前に比べ高いので、ロシアの第3波は、主にアジアから流入してきた変異株ではないかと推測される。

ロシアのワクチン接種は20年12月15日から始まった。当初はスプートニクを接種していた。3月にエピバックを追加した。両方ともロシア製ワクチンである。2021年第3期のワクチン接種回数は40,216,582回だった。1日平均の接種回数は人口100万人あたりは4442.6回で平均よりもちょっと少なめで、面積1000㎢あたりは37.9回で、平均よりもかなり少なめである。接種率は、3月末で5%、6月末で15%と同じ時期に開始したアメリカやイギリスと比べると、非常に低い。おそらくワクチン製造能力の問題であろう。第3期は接種回数が第2期に比べ40%増え、インドにスプートニクを提供できるくらい生産能力を上げたようだが、8月末で接種率は30%に満たない。

8位スペインはワクチン接種率が80%近いのに陽性患者が倍増した

スペインの21年3期は1,046,105件の陽性と3,465人の死者があった。致死率は0.3%で非常に低い。1日平均の陽性件数は人口100万人あたりで360.7件、面積1000㎢あたりで33.3件である。両方とも世界平均より高い

次のグラフはスペインの四半期ごとの陽性件数と致死率の複合グラフである。

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陽性件数のピークは21年1期であるが、20年4期も大きい。両期を合わせると50%を超える。、2期は60%減少したが、3期の伸び率は102%で、すでに2期の2倍の陽性が確認されている。

死者数のピークは20年4期である。次に多いのが20年2期である。21年は死者数が少なく8月末の時点で合計でも20年4期に及ばない。従って、スペインの致死率は2020年2期が最も高く22.6%もあった。2021年は世界平均以下である。21年3期は0.3%となった。

スペインのワクチン接種は他のヨーロッパ諸国より2週間ほど遅れた2021年1月4日から始まった。西ヨーロッパの標準でファイザー、アストラゼネカ、モデルナから開始し、4月からジョンソンを追加した。2021年第3期のワクチン接種回数は24,102,636回で、第二期よりも30%近い減少となった。1日平均の接種回数は人口100万人あたりで4037.7回、面積1000㎢あたりで208.8回で、減ったとはいえ、世界の平均よりもかなり高めである。接種率は現在78%と非常に高い。


9位マレーシアは20年3期は世界134位だった

マレーシアの21年3期は994,275件の陽性と11,494人の死者があった。致死率は1.2%である。1日平均の陽性件数は人口100万人あたりで488.2件、面積1000㎢あたりで48.5件である。両方とも世界平均よりかなり高い

次のグラフはマレーシアの四半期ごとの陽性件数と致死率の複合グラフである。

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陽性件数のピークは21年3期である。3期だけでマレーシアの全陽性件数の約60%を占める。(集計時点で)第3期終了まであと1ヶ月あるので、この比率はもっと高まり、70%近くになるのではないか。死者数も21年3期が最大で、マレーシアの全死者数の70%になる。最終的には80%近くになるのではないか。20年3期では134位だったのが、4期では57位、21年1期では37位、2期で14位、3期で9位とものすごく順位を上げた。マレーシア以上に順位を上げたのはタイ(165位→12位)とベトナム(175位→22位)だけである。いずれも東南アジアである。

マレーシアの致死率は20年1期の1.6%が最大であった。20年は致死率は減少したが、21年は逆に致死率が上昇した。3期は死者数の増加率の方が高いので、3期の致死率はさらに上昇すると思われる。3波は感染の勢いも強く、致死率も上がっているので、インドネシアで流行していたもの、おそらくは新たな変異株、が移動してきた可能性が考えられる。

インドネシアを含めて東南アジアでは陽性件数、死者数の伸び率が100%以上と極めて高い。また、21年第3期が陽性件数と死者数のピークを迎えているところばかりである。

マレーシアのワクチン接種は他のアジア諸国同様21年2月27日から始まった。現在はファイザー、アストラゼネカの欧米製と、シノバック、カンシノの中国製を接種している。21年第3期のワクチン接種回数は26,668,655回で、第二期よりも260%以上の増加となった。1日平均の接種回数は人口100万人あたりで13,094.8回、面積1000㎢あたりで1300.3回と極めて高い。特に人口100万人あたりでは世界第4位である。6月末で18%だった接種率も8月末には60%までになった。

下のグラフはマレーシアの陽性件数とワクチン接種回数のグラフである。ヨーロッパとは違って接種率が20%を超えても、陽性件数がワクチン接種回数と比例して上昇している。接種率が50%を超えて、ようやく陽性件数が減少となった。

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10位フランスはイギリスやスペインの3週間遅れで同じ状況になっている

フランスの2021年3期は990,407件の陽性と3,409人の死者があった。致死率は0.3%である。1日平均の陽性件数は人口100万人あたりで244.1件、面積1000㎢あたりで24.9件である。両方とも世界平均よりかなり高い

次のグラフはフランスの四半期ごとの陽性件数と致死率の複合グラフである。

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陽性件数のピークは20年4期であるが、21年1期も同じくらい多い。フランスの全陽性件数の56%を占める。フランス21年2期では25%減、3期では30%減となった。死者数のピークも20年4期と21年1期で合わせて56%になる。2期では50%減、3期では78%減と死者数の減少率の方が陽性件数よりも大きい。

フランスの致死率は2020年第2期の24.5%が最大であった。これは陽性件数が1万件以上ある時の最大値である。ちなみに、西ヨーロッパでは全ての国で20年第2期で致死率が最大になっている。しかし、その後は致死率は確実に減少し、21年第3期では0.3%と極めて小さくなった。

フランスのワクチン接種は20年12月27日から始まった。西ヨーロッパの標準でファイザー、アストラゼネカ、モデルナから開始し、4月からジョンソンを追加した。21年第3期のワクチン接種回数は32,914,516回で、第二期よりも23%以上の減少となった。1日平均の接種回数は人口100万人あたりで8112.2回、面積1000㎢あたりで828.6回と世界平均よりもかなり高い。接種率も8月末で57%である。

日本は16位で接種率は欧米並みに。その先は米英タイプか西仏タイプか

日本の21年3期は671,168件の陽性と1,254人の死者があった。致死率は0.2%である。1日平均の陽性件数は人口100万人あたりで85.9件で世界平均より少し高い程度であるが、面積1000㎢あたりで28.6件で、世界平均の約7倍である。街で陽性患者とすれ違う確率が高いということである。

次のグラフは日本の四半期ごとの陽性件数と致死率の複合グラフである。

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陽性件数のピークは21年4期である。8月末で46%を占める。最終的には50%を超えると予想される。毎期陽性件数を増やしている点は、マレーシアなどの東南アジアと同じ傾向である。死者数のピークも21年1期と2期で合わせて70%を超える。3期では78%減で、陽性件数は倍増しているのに死者数は4分の1以下となった。

日本の致死率は2020年第2期の5.6%が最大であった。21年は世界平均と同じくらいであったが、第3期は1.57ポイント減少させた。

日本のワクチン接種は21年2月17日から始まった。西側陣営なのでファイザー、アストラゼネカ、モデルナを接種している。21年第3期のワクチン接種回数は81,488,106回で、第二期よりも68%以上の増加となった。1日平均の接種回数は人口100万人あたりで10,423.9回(世界第9位)、面積1000㎢あたりで3,475.6回(同16位)と世界平均よりもかなり高い。接種率は3月末で0.7%。接種開始後日も浅いのに、すでに3ヶ月以上も接種を続けている欧米各国に比べ接種率が低いと不当な評価を受けていたが、6月末には25%、8月末には57%になった。9月末には65%ほどになって、アメリカを超え、ドイツやイスラエルと同じくらいになると予想される。

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2週間前に予想したよりも早くに日本の陽性件数減少が始まった。このまましばらく減少は続くと思われる。欧米は接種率が40〜60%の時に陽性件数が再び増加した。日本も同様であった。今後は接種回数は減少する。同じような状態のアメリカとイギリスでは陽性件数は一旦減少したが、再び増加になった。一方、スペインとフランスは今の所減少中である。日本はどちらのタイプになるだろうか。

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