Covid-19 Quarterly Report 2023 1Q Part 3

最近はすっかり更新の頻度が落ちてしまったが、性懲りも無く、世界の新型コロナの感染状況を報告していこうと思う。今回は、23年1期(1月〜3月)のワクチン接種状況と感染との関係性をデータ的に考察する。また、日本の厚労省は新型コロナ患者の総数の公表をやめてしまったので、今回から、NIID 国立感染研究所が公表しているデータから推計された値を使うことにする。

1。日本は隠れ世界一の可能性

日本は新型コロナ感染症の感染状況の位置づけを5類に変更した。その結果、新規陽性患者の数え方が大幅に変わった。今まで厚労省は、全国の病院や保健所からの報告をまとめ、「新型コロナウイルス感染症の現在の状況について」で公表していたが、23年5月8日を最後にその報告を止めた。したがって、QRが普段使用しているWorldometer でも日本の新規陽性数、死者数、重症者数の更新が止まり、治療者数も N/A となった。現在では、NIID 国立感染研究所が全国約5000カ所ある定点医療機関から報告された新規陽性者数などを「新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報 - 速報」をまとめている。しかし、速報値は日本の新規陽性数の総数ではない。下のグラフは23年の日本の新規陽性数と定点報告の推移である。

新規陽性数は厚労省の「新型コロナウイルス感染症の現在の状況について」から、定点報告はNIID 国立感染研究所の「新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報 - 速報」から作成した。新規陽性数のグラフが途中で途切れているのは、厚労省がリポートをやめたからである。

厚労省の公表してきた新規陽性数は平均して定点観測の新規陽性数の7~8倍になっている。ここから、23年21週(5月22日~28日)はおよそ13万人の新規陽性患者が確認されたと推定される。Worldometer で21週に最も新規陽性患者数が多かったのは韓国の12万2952人であるが、日本の方が韓国よりも多く、再び世界一の感染国となっている可能性がある。

23年13週以降、定点での新規陽性数は増加が続いており、また、伸び率も拡大している。定点報告から推測すると22年5月の日本の新規陽性数は2020年秋の第3波くらいの勢いはあるので、このままのペースでいけば、第9波となる可能性もある。

下のグラフは日本の新規入院患者数と7日間平均の入院患者数の推移である。NIID 国立感染研究所の「新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報 - 速報」から作成した。

20週の新規入院患者は3352人(前週比35%増)で、23年10週以来10週間ぶりに3000人台を超えた。21週は3346人で微減となったが、3000人以上を維持している。平均の入院患者数も増加が続いている。

下のグラフはNIID 国立感染研究所の「新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報 - 速報」から作成した日本の重症者数(棒グラフ)と重症者数の新規陽性数に対する割合(折れ線グラフ)の推移である。


1月から3月までは減少が続いていたが。3~4月は30人前後で推移していた。しかし、5月14日は急増し、以降の増加傾向が続いている。新規陽性数が大きく減少を続けていたので、重症者数が減少するのは当たり前である。問題は、重症者数の新規陽性数に対する割合である。これはは多少上下があるものの、緩やかに上昇を続けている。23年1月は0.3%以下だったが、現在は0.4%以上になった。すなわち、感染すると重症になる確率が高くなったといえる。

日本は5月末の時点で、新規陽性数(推定)、入院者数、重症者数の指標が悪化している。NIID は死者数の公表はしていないが、増えているのではないだろうか。 第9波と言って良いだろう。

2。世界では半分ほどの国領土で接種をやめた

23年1期の世界のワクチン接種回数は1億9647万7083回で、22年4期に比べ約54%減少した。下のグラフは四半期ごとの接種回数の推移である。

接種回数は22年2期から減少が続いている。23年2期は今の所、1期の約5分の1のペースで接種が行われている。ただし、GitHubでは日本、ドイツ、アメリカなどで、接種回数の更新をやめてしまった(6月15日時点)。しかし、日本もアメリカも接種は引き続き行なっているので、実際の接種回数はもっと多いと考えられる。

下のグラフは23年1期(外側)と22年4期(内側)の接種回数の大陸別シェアである。

23年1期の接種回数のシェアはアジア中が30%を占め、最も高かった。22年4期に比べ9ポイント増えた。22年に接種回数のシェアがトップのアジア東は6ポイント下げた。23年1期はアフリカ東とアメリカ南でのシェアが上がった10%以上だった。一方アメリカ北は半分以下となった。

下のグラフは22年1期からの四半期ごとの大陸別接種回数である。

アフリカ東とカリブ海で23年1期の接種回数が22年4期よりも増えた。一方アメリカ北とアジア東は大きく減らしている。そのほかの地域も減らしている。

下のグラフは四半期ごとの接種国領土数の数である。

世界では220国領土で少なくとも一回接種をしたことがあるが、23年1期に接種が行われたのは149国領土のみとなった。22年4期に比べ23国領土減少した。23年2期今の所111国領土でさらに減少している。

23年1期の接種回数が22年4期を上回ったところが、エチオピアやスペインなど40国領土あった。このうち14国がアフリカだった。接種回数が前期よりも減少した国領土は113国あり、このうちブラジルやナイジェリアなど44国領土で、23年1期途中で接種回数の更新が止まり、5月末時点でも接種は再開されたという報告がない。一方、23年1期に接す回数が0回だったバハマとキュラソーでは23年5月にほぼ半年ぶりに接種を行なったとの報告があった。

23年5月26日時点で北朝鮮、バチカン、エリトリア、レユニオン、マヨット、西サハラ、ギアナ、マルティニク、グアドループ、サンマルタン、サンバルテルミー、サンピエールミケロン、マーシャル諸島、ミクロネシアの14国領土は接種を実施したという報告が今までに一回もない。

同じく、パラオ、フォークランド、セントヘレナでは2年以上、ボスニアヘルツェゴビナ、ウクライナ、アイスランド、モナコ、フェロー諸島、グリーンランド、ベネズエラ、蘭領カリブ海では1年以上、セルビアやオランダなど39国領土で半年以上接種が実施されたという報告がない。トルコやメキシコなど31国領土で23年1期に接種をしたという報告がなかった。

下のグラフは23年3月31日時点で接種を続けているところと接種を停止した国領土の数を大陸別に表している。赤が接種を実施した国領土、橙は22年4期以前に接種したことはあるが、23年1期に接種をしなかった国領土である。

下の表は23年1期の接種回数ランキングである。ランキングには国名、地域、23年1期の新規陽性数(New Cases)、同22年4期からの増減(Rate Of Change)、同23年2期の傾向(Pace)、回復者数(Recovered)、同22年4期からの増減(ROC)、同23年2期の傾向(Pace)、接種回数(Total Vac)、人口100万人あたりの1日平均接種回数(PMPD)、同22年4期からの増減(ROC)、同23年2期の傾向(Pace)、同連続週数(strk)、ブースター接種回数(Booster)同22年4期からの増減(ROC)、ブースターの割合(Boo/Vac)を記載し、接種回数(Total Vac)の多い順に並べている。

最も接種回数が多かったのがバングラデシュで、2263万4936回の接種を実施した。22年4期に比べ、38%減少し、23年2期も減少が続いている。以下、パキスタン、ナイジェリア、中国、日本と続き、ここまでが23年1期の接種回数が1000万回以上である。いずれの国も、接種回数は大きく減少を続けている。

3。ブースター離れ

23年1期の世界のブースター接種回数は8709万3326回で、22年4期に比べ約56%減少した。総接種のうち44%がブースターだった。ブースターの割合は22年4期の45.3%よりも若干上がったが、22年2~3期よりは下がっている。23年2期はさらに下がって、今の所23%弱である。

23年1期には、アフガニスタン、チャド、ニカラグアで初めてのブースター接種の報告があった、しかし、それ以前の1日あたりの接種回数の値から、どの国も22年3期にはブースターを開始していたと考えられる。アフガニスタンとニカラグアは23年2期も引き続きブースター回数を公表している。また、23年2期には南スーダンでもブースターが始まった。これで、世界の199国領土で少なくとも一回ブースター接種を行ったことになる。

下のグラフは四半期ごとのブースターの推移である。

下のグラフは四半期ごとの総接種回数におけるブースターの割合の推移である。

ブースターの数自体も減っているが、その割合も減っている。つまり、ブースタではない接種の割合が増えている。ヨーロッパなど接種率の高い国でブースターがあまり進んでいない事が原因である。

下のグラフは23年1期(外側)と22年4期(内側)のブースター回数の大陸別シェアである。

1期のブースターのシェアはアジア東が世界のおよそ3分の1を占め、最も高かった。しかし、22年4期に比べシェアは小さくなった。22年4期に2番目のシェアだったヨーロッパ西はシェアを大きく下げ7%になった。アメリカ北やオセアニアもシェアを半分以下に低下させた。一方、アジア中やアフリカはシェアを拡大し、特に、アフリカ東ではシェアが23年1期の13%と、アジア東、中に次いで3番目に大きくなった。

下のグラフは23年1期のブースター回数(外側)と接種回数(内側)の大陸別シェアである。

下のラフは22年1期からの四半期ごとの大陸別ブースター回数である。

23年1期の接種回数の増えたアフリカ東でブースター回数が大きく増えた。その他の地域では大きく減少している。

下のグラフは四半期ごとのブースターを実施した国領土数の数である。

数である。

世界では199国領土で少なくとも一回ブースターをしたが、23年1期にブースタを実施したのは125国領土にとどまった。2期はさらに減って、ブースターが実施されたのは今の所92国領土にとどまる。同時に総接種回数におけるブースターの割合も23%と23年1期の半分程度となった。

アメリカや韓国など33国領土で23年1期のブースター接種回数が0回になった。アメリカではブースター接種自体は行われているので、単に報告をやめたものと思われる。また、ブースター回数を前期比80%以上減少させたところもイギリスやドイツなどヨーロッパ西を中心に38国領土ある。

次の表は、23年1期の状況をブースター回数順に並べたものである。項目は接種回数ランキンgと同じである。

23年1期に最もブースター回数が多かったのは日本で、1246万0296回だった。22年4期に比べ73%減だった。総接種回数におけるブースター回数の比率は97%で、日本では接種のほとんどがブースターだった。

2番目に多かったのは中国で、1119万5000回のブースターを接種した。こちらは、日本とは逆に22年4期よりも30%増加した。総接種回数の87%がブースターだった。ここまでが1000万回以上だった。3位以下は、バングラデシュ、インド、エジプトと続く。上位20国の中にアジア中から5国がランクインし、他地域に比べて多い。

4。ワクチンは効果があったのか?

東京大学の石井健研究室(https://vaccine-science.ims.u-tokyo.ac.jp/vaccine/)によれば、感染症に対するワクチンの役割は
A. ワクチンを接種していれば、感染しない
B. ワクチンを接種していれば、感染したとしても症状が軽い、
C. ワクチンを接種していれば、(感染していても、)他人に感染させることはない、
である。22年11月に続いて、この3要素を再び考察したいと思う。

4A. ワクチンを接種していても感染する。

22年11月に報告報告したとおり、もはや、ワクチンを接種していたとしても、新型コロナに感染することは明らかである。イギリスや日本の例から、特に、21年3期以降ブースター接種が始まってから、22年1期のオミクロン株感染患者数が爆発的に増えたことも示した。これは、21年中に接種したワクチンがオミクロン株には全く効果がなかったということである。このワクチンは時期的にデルタ株あるいはそれ以前に流行した株で開発された。

日本では22年9月からオミクロン株対応ワクチンの接種を開始した。下のグラフは22年4期から23年1期にかけての週ごとのオミクロン株対応ワクチン接種回数と新規陽性数の推移である。

オミクロン株対応ワクチンの接種回数が増えるにつれて新規陽性数が増えている。その接種回数が減少しめてから2~3週間後に新規陽性数が減少し始めた。この時のオミクロン株対応ワクチンの接種率は30%ほどだった。しかし、新型コロナの感染拡大は10週間ほどで収まることが多い。この時も新規陽性数の増加が始まってから10週間経ってから減少に転じたので、単に拡大の勢いが衰えただけで、オミクロン株対応ワクチンが感染を抑えたとは言えない。

残念ながら、23年1期あるいは2期に感染した患者がワクチンを接種していたというデータは見つけられなかった。国立感染研究所の「新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報 - 速報」でも新規陽性患者がワクチンを接種していたかどうかは報告していない。まあ、ワクチン接種の新規陽性患者が統計的に少なければ、それを大々的に公表するはずだが、今それをしていないところを見ると、接種を受けていてもブースターをやっていても感染するときは感染する、ということであろう。

4B. ワクチンを接種していたとしても感染して発症すれば症状は重くなる。

NIID の公表するデータには重症の他に中程度の症状の入院患者も含まれる。両者ともに23年1期は減少していたが、5月以降増加に転じた。Worldometer においては世界の重症者数は減少が続いている。しかし、100以上の国領土で重症者数を正しく数えていないと考えられるので、本当に減少しているかどうかは疑問である。また、Worldometer は重症患者数のみを載せて、中等症については報告していない。患者の症状が重くなったと言っても、重症ではないケース(例えば、意識不明になったとしても呼吸補助装置を使用しなければ重症ではない)もあるので、重症度だけでは、症状が重くなったかどうかを測ることはできない。

そこで、QRは症状の酷さの指標として95%回復週数を利用する。95%回復週数とは、ある週の治療者のうち95%が回復するのにかかる週の数で、その週の回復率をもとに計算する。週の回復率とは、その週の回復者数の治療者数に対する割合である。

例えば、日本では23年1週(12月31日から1月6日)に約12万人が回復した、この時、878万人の治療者がいたので、この週は患者の1.3%が回復したことになる。この割合で回復が続くと仮定すると、878万人の95%に当たる834万人が回復するまでに、222週、つまり4年以上かかる計算になる。これが95%回復週数である。

95%回復週数が長ければ、回復率が低い、つまり、多くの感染者がいるのに回復する人が少ないことを意味する。回復する人が少ないのは、症状が長く続く人が多いからに他ならない。

次のグラフは、22年1期以降の四半期ごとの平均の95%回復週数である。

22年

1~3期の95%回復週数は11~12週だった。特に1期はオミクロン株で大量の新規陽性患者が出たにもかかわらず、多くの患者が3ヶ月以内で回復した。しかし、22年4期は19週に増え、23年1期は45週と、回復するまでに22年1~3期の4倍の時間がかかるようになった。23年2期は暫定ながら71週とさらに長くなった。したがって、現在の新型コロナの株は、回復するのに非常に時間がかかるようになったといえる。

残念ながら、ワクチンを接種した患者とそうでない患者とで分類した統計はないので、感染したとしても、ワクチンを接種すれば、症状が軽い可動化の検証は不可能である。ただし、23年4期からオミクロン株対応ワクチンが本格的に接種され始めたので、これが、22年4期からの回復週数を増加させた可能性がある。

4C. ワクチンを接種していても、他人に感染させる可能性がある

下のグラフは23年1期の接種回数(外側)と新規陽性数(内側)の大陸別シェアの比較である。

接種回数のシェアが最も大きいアジア中の新規陽性数のシェアは1%未満である。アフリカは3地域合わせると接種回数のシェアが27%になるが、新規陽性数のシェアは1%未満である。

一方、2番目に接種回数のシェアが高いアジア東は世界の新規陽性数の45%を占める。接種回数のシェアが8%のヨーロッパ西の新規陽性数のシェアは19%と高い。接種回数が増加すると新規陽性数が減少すると思われるかもしれないが、接種回数と新規陽性数との間には相関は特にない(R ^2=0.105)。つまり、接種回数を増加したからと言って、その国で新規陽性数が減少するわけではない。

下のグラフは23年1期の接種回数(外側)と回復者数(内側)の大陸別シェアの比較である。


接種回数のシェアが最も大きいアジア中の回復者数のシェアは1%未満である。アフリカの回復者数のシェアは1%未満である。2番目に接種回数のシェアが高いアジア東は世界の回復者数の28%を占める。接種回数のシェアが8%のヨーロッパ西の回復者数のシェアは23%と高い。接種回数が増加すると回復者数が減少すると思われるかもしれないが、接種回数と回復者数との間には相関は特にない(R ^2=0.030)。つまり、接種回数を増加したからと言って、その国で回復者数が増加するわけではない。

下のグラフ行列は大陸別の人口100万人あたりの1日平均のブースター回数(茶色)と新規陽性数(青)の21年1期からの4半期ごとの推移である。新規陽性数はブースター回数の10分の1になるようにスケールを設定した。

ヨーロッパ東西、アジア東西、アメリカ南北、カリブ海、オセアニアは22年の新規陽性数が多い、これらの地域は全て、21年のブースター回数が多く、2期から4期にかけ1日平均3000回以上の摂取を行っていた。逆に、22年の新規陽性数が少ないアフリカは21年中のブースターが少なく1日平均1000回未満である。このことから、21年に接種を多く実施したところで、22年の新規陽性数が多くなっているといえる。

4D. 未接種者の多い国ほど新規陽性数が少ない

Githubでは3ヶ月以上接種回数を更新しない国の数がすっかり増えた。5月末の時点では、日本の接種回数も3週間ほど更新をしていないが、しかし、首相官邸のホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine.html)では引き続き接種回数を公表している。なので、Github も Worldometer 同様あまり正確な数字が期待できなくなってしまった。そういう状況ではあるが、 23年5月末の時点で総接種回数は134億1442万0436回になる。少なくとも一回接種を受けたことのある人は55億8281万4714人になり、世界で70%が少なくとも一回接種を受けたことになる。このうち51億3451万2654人がワクチン接種を完了している。完了率は64.6%だが、接種を受けたことがある患者は92%が完了している。

一方、世界人口の30%に当たる23億6815万1673人は一回も接種を受けたことがない。最も未接種者数が多いのがインドで、3億7922万4274人が一回も接種したことがない。ついで、中国の1億3817万9400人、ナイジェリアの1億3442万1738人と続き、この3国が未接種者1億人以上である。インドの接種率は73%、中国は91%で世界平均よりも大きいが、人口が大きいので、未接種者数も多い。ナイジェリアは接種率が38%でまだまだ接種が普及していない。未接種者数が多いところは、接種率が低いか、人口が多いかのどちらかで、アフリカやアジアに多い。アメリカにも6500万人近くの未接種者がいる(7位)。日本でも2000万人以上が未接種である。

下のグラフは23年1期の未接種者数(外側)と新規陽性数(内側)の大陸別シェアの比較である。

未接種者数のシェアが最も高いアジア中の新規陽性数のシェアは1%未満である。アフリカは3地域合わせると未接種者数のシェアが37%でアジア中よりも高いが、新規陽性数のシェアは1%未満である。

2番目に未接種者数のシェアが高いアジア東は世界の新規陽性数の45%を占める。未接種者数のシェアが3%のヨーロッパ西の新規陽性数のシェアは19%と高い。未接種社数が多いと新規陽性数が少ないと思われるかもしれないが、未接種者数と新規陽性数との間には相関は特にない(R ^2=0.01)。つまり、未接種者数が減少したからと言って、その国で新規陽性数が減少するわけではない。

下のグラフは23年1期の未接種者数(外側)と回復者数(内側)の大陸別シェアの比較である。

未接種者数のシェアが最も大きいアジア中の回復者数のシェアは1%未満である。3地域合わせたアフリカの回復者数のシェアも1%未満である。2番目に数のシェアが高いアジア東は世界の回復者数の28%を占める。接種回数のシェアが8%のヨーロッパ西の回復者数のシェアは23%と高い。接種回数が増加すると回復者数が減少すると思われるかもしれないが、接種回数と回復者数との間には相関は特にない(R ^2=0.01)。つまり、未接種者数が減少したからと言って、その国で回復者数が増加するわけではない。

23年3月31日時点での未接種者数と23年1期の新規陽性数の間にも相関は特にない(R ^2=0.07)。したがって、未接種者が多いからといって新規陽性者数が多いということはない。

5。マスクはまだまだ手放せない

原理的にオミクロン株対応ワクチンはオミクロン株が流行している場合はその役割を果たすだろう。しかし、現在流行している変異株に対して効果を発揮するかどうかは不明である。現状を見ている限り、QR はオミクロン株対応ワクチンは現在流行している株に対して効果が薄いと仮設する。そろそろ実験室での結果が出てくる頃であるが、果たして、QRの仮設は当たっているだろうか?

過去にも同じようなことがあった。21年3期からブースターが始まった。欧米では、WHOの勧告やQRの指摘を無視してブースターを開始した。その結果、21年3~4期の接種回数は急増した。しかし、その結果が22年1期のオミクロン株の大流行である。21年3~4期に接種されたワクチンの多くはデルタ株対応のものであった。流行が終わった後、このワクチンはオミクロン株には効果があまりなかったという実験結果が発表されたが、時すでに遅しであった。このワクチンを接種したものの多くは、自分はもう感染しないと思い込み、マスクをしたり、集近閉を避けたりといった予防活動をあまりしなかった、ゆえに、感染が広まった。この時、二回以上感染した患者も急増した。二回目はオミクロン株、一回目はオミクロン株以外の株に感染したと考えられる。そしてワクチンを接種しない人たちの方は予防をしっかり続けたので、オミクロン株には感染しにくかったといえる。

第9波は始まったばかりである。世間では、フランスでは云々とマスクをはずすよう訴えている輩も多いが、まだまだ、人前ではマスクをつけておく方が賢明であろう。そうすれば、感染しにくくなるだけでなく、万が一、自分が感染していた時に(発症しにくいので感染しているかどうかわからない)他人にうつすことが少なくなる。

データについて

Worldometer の Coronavirus Update にリストされている229国領土と2クルーズ船に、北キプロス、コソボ、ピトケアン、トルクメニスタンを加えた235国領土のデータを集計している。

人口、新規陽性数、死者数、治療者数、重症者数はWorldometer(https://www.worldometers.info/coronavirus/)の Coronavirus Update 、コソボはWHO、北キプロスは自国のウェブページ(https://saglik.gov.ct.tr/COVID-19-GENEL-DURUM)、日本の空港検疫の新規陽性者数は厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/)の発表する「新型コロナウイルス感染症の現在の状況について」の数字を用いている。セルビアとキプロスの数値はWorldometerの発表する数値から、コソボ、北キプロスの値を引いたものを採用している。

回復者数や感染率など上記以外は2次データで、全てこれらのデータから計算している。

接種回数とブースター回数はGithub(https://github.com/owid/covid-19-data/tree/master/public/data/vaccinations/country_data)から、日本のブースターとオミクロン対応については首相官邸のホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine.html)から入手している。その他のデータあるいは記事等の出どころは本文に記す。

6月23日投稿


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