新型コロナ クォーターリー リポート


初めに

下の図は新型コロナ累計陽性数の上位20ヵ国の2021年7月1日から8月31日までの陽性件数のグラフである。1位アメリカ、2位インド、3位ブラジルは不動であるが、4位ロシアの陽性件数が5位イギリス、9位イラン、13位インドネシアよりも少なくなっている。また、イタリア、ドイツ、ポーランド、ウクライナ、ペルーは陽性件数が非常に減少している。

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このようにある期間で区切ると、全体とは大きく異なっている部分が現れる。また、その前の期間と比べてどうなっているのかが気に掛かる。経済の世界では、OECDのクォータリーリポートなどのように、1年をを4期に区切って、その間の各国の財政などを前期と比べた、次期の予想に役立てている。ここでは、同じように新型コロナの統計的情報を2020年から四半期ごとにまとめてみた。

ここで扱っている統計について


Worldometer の Population のページでは世界には235の国地域があるが、アメリカ領サモアと北マリアナ連邦の新型コロナの統計はアメリカに含まれるので、233の国と地域について、20陽性件数、死者数、ワクチン接種回数について、その値とそのの伸び率、人口100万人あたり、面積1000㎢あたりの1日平均の値、および、致死率、ワクチン接種率、同完了率とぞの伸び、及びワクチンの種類数を各四半期ごとに計算した。

人口、陽性件数、死者数はWorldometer のものを利用し、修正があった場合には修正された数値を利用した。ワクチン接種回数などは Github のデータを利用している。面積はウィキペディアのものを使っている。

Github では、国がいくつかの地域に分かれている場合、別々に統計を取っているケースがある。例えば、 コソボとセルビアのワクチン接種回数を別々に数えているが、Worldometer はコソボの統計はをセルビアに含んでいると思われる。しかし、コソボとセルビアでは接種しているワクチンが異なり(コソボはアストラゼネカのみ、セルビアはアストラゼネカに加えてファイザー、シノファーム、スプートニクを接種している)、また接種率にも大きな差(コソボが29%、セルビアが43%)があるので、感染状況が異なると考え、コソボとセルビアの統計を別々に計算する。ただし個別に計算したものはランキングの対象にはしないが表やグラフなどには載せる。また両国を合わせたものもの背、こちらをランキングの対象にする。コソボの陽性件数と死者数は Google のものを利用する。北キプロスとキプロスもコソボとセルビアと同様に扱う。北キプロスのの陽性件数と死者数は、政府の発表するデータを用いる(https://saglik.gov.ct.tr/COVID-19-GENEL-DURUM)。

GNPはGLOBAL Note(https://www.globalnote.jp/post-1339.html)を、各国の情報は、Wikipediaと外務省の各国紹介ページ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/index.html)を参照した。


次に各項目の説明と、その上位20カ国をリストして大まかな傾向を記す。また、各項目のベストとワーストの国または地域について、簡単にその状況を説明する(多数ある時は省略する)


A1. 陽性件数 ワースト:アメリカ ベスト:19カ国

2021年7月1日から8月31日までの陽性件数は世界全体では3558万963件である。次のグラフは陽性件数の上位20カ国である。

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第1位はアメリカである。2位インド、3位ブラジルの2倍以上陽性件数がこの時期確認された。アメリカはD章で解説する。マレーシアやタイなど累計陽性件数上位20カ国にはない名前も見受けられる。

次のグラフは陽性件数の下位20カ国である。

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陽性件数の最下位は0件で19の国地域がある。バチカン、西サハラ、マーシャル諸島は今年の陽性件数が0である。また、クック諸島、トルクメニスタン、キリバツ、ツバル、ナウル、トケラウ、ニウエ、ピトケアン、北朝鮮今までに陽性患者が出たことがない。パラオは8月26日まで要瀬患者を出したことがなかった。

この中の国の多くは太平洋の島々である。早くから入国禁止などの措置を敷いていたことが陽性件数0に繋がっている。


A2. 陽性件数の伸び率 ワースト:タンザニア、パラオ;マン島 ベスト:ソロモン諸島、バヌアツ、ウォリスフツナ

伸び率は2021年7月1日から8月31日までの陽性件数が4月1日から6月30日までの陽性件数に対して何%増加したかを表す。数字の前にマイナス記号(ー)のついたものは減少を表す。世界全体では伸び率はマイナス33.8%で減少している。

割合なので、4月1日から6月30日までの陽性件数が少ないか、7月1日から8月31日までの陽性件数が多いか、あるいは両方で、伸び率は大きくなる。次のグラフは伸び率上位20カ国地域である。

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左端のタンザニアとパラオには棒グラフがないが、それは、両国の伸び率が無限大であった、つまり、4月1日から6月30日までの陽性件数が0であったが、7月1日以降に陽性件数が確認されたということである。

タンザニアは、アフリカ東部に位置する国で、インド洋に面している。北西部にアフリカの最高峰キリマンジャロ、最大の湖ビクトリア湖、西部にアフリカ最深の湖タンガニーカ湖がある。面積は94万5000㎢で、日本の約2.5倍の広さである。人口は5973万人である。主要な産業は農業、鉱業、観光で、コーヒーや金の輸出が有名である。2020年の一人当たりのGDPは1,090ドルで、裕福とは言えないが、経済成長率は2011年から7%前後で成長している。

タンザニアの2020年の陽性件数は508人、死者は21人であったが、2020年の第3期以降陽性件数も死者もが0のままであった。しかし、2021年7月29日に1年以上ぶりに408人の陽性件数が確認された。8月10日には29人の死者も確認された。8月13日までに計858件の陽性があったが14日以降は再び0に戻った。死者数も11日以降は0のままである。

タンザニアがワクチン接種を開始したのは2021年8月8日と遅く、接種率も0.35%と低い。ジョンソンを接種している。

伸び率が無限大のもう一つの国、パラオは太平洋の島国で、面積は459㎢で群馬県高崎市と同じくらいである。人口は18,094人である。親日国として有名で、国旗が日章旗と色違いである。また日本語が公用語になっている州もある。主要産業は水産業と観光である。2020年の一人当たりのGDPは14,412ドルで世界54位である。

パラオでは2020年以来陽性件数は0であったが、8月26日に2人の陽性患者を初めて出した。今のところ死者数は0のままである。ワクチンは2月1日にモデルナを接種したきりである。接種人数は発表されていないが、全員が一回ずつ接種を受けたとすれば17%になる。

第2期の陽性件数が0でないところで、最大の伸び率を持つところはマン島で11407%増である。マン島はイギリスとアイルラどの間に浮かぶ島で、独立国ではなく、連合王国やイギリス連邦の構成国ではないが、イギリス王室属領であるので、イギリスと密接な関係を持つ。人口は8万5000人で面責は淡路島よりもちょっと狭いくらいである。主要な産業は農業と観光であり、世界で最も危険なレースと言われる、マン島TTレースを開いており、観客動員数は島の人口よりも多い。新型コロナ感染のせいで、レースは2020年、2021年と連続で中止となってしまった。2022年は5月末に開催予定である。

マン島の第2期の陽性件数は44件であったが、第3期はイギリスにあわせるように感染拡大し、5000以上の養成件数が確認された。第二期の死者数は0人であったが、第3期では9人になった。致死率は0.2%と低い。ワクチン接種率は高く76%になる。現在は陽性件数は5週連続減少中、死者数も3週連続減少中である。

グレナダ、仏領ポリネシア、など小さい国地域や、ベトナム、イスラエルのように第3期で陽性件数が急増した国が伸び率の上位を占める。ベトナムは陽性件数順位で22位、イスラエルは29位と数自体も多いので感染拡大は深刻である。

次のグラフは陽性件数伸び率の下位20国地域である。つまり減少率の大きい国地域ベスト20である。

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100%減というのは、第2期の陽性件数は0ではなかったが、第3期は今までのところ0ということで、ソロモン諸島、バヌアツ、ウォリスフツナの3つの国と地域がある。いずれも太平洋上に浮かぶ小さな島々から成り立っている。ソロモン諸島等とバヌアツは独立国であるが、ウォリスフツナはフランスの海外県である。面積はそれぞれ、28,450㎢(四国に和歌山と奈良と淡路島を加えたくらい)、12,200㎢(新潟県と同じくらい)、264㎢(西表島より少し小さい)で、人口はそれぞれ、538,148人、240,000人、13,484人主要産業はいずれも農業と漁業で、バヌアツは近年観光業に力を入れている。一人当たりGDPはソロモン諸島が2,392ドル、バヌアツが2,876ドルと裕福とは言えない。

ソロモン諸島とバヌアツは両国とも第2期は1人の陽性患者がいた。それ以前はソロモン諸島で19人、バヌアツで3人の陽性が確認されていた。死者数はソロモン諸島は0人、バヌアツは第2期に1人いた。従って、バヌアツの第2期の致死率は100%になる。ウォリスフツナは第2期に41件の陽性、3人の死者を出した。それ以前は403件のの陽性と4人の死者を出している。

7月1日から8月31日までにソロモン諸島では41,578回(91.2%増)、バヌアツでは23,580回(216%増)、ウォリスフツナでは743回(87.1%減)のワクチン接種が行われた( )内の数字は第2期比)。いずれもアストラゼネカである。接種率はそれぞれ、6.92%、9.29%、44.50%である。


A3. 人口100万人あたりの1日平均の陽性件数 ワースト:グアダルーペ ベスト:19カ国

次のグラフは、第3期の人口100万人あたりの1日平均の陽性件数上位20カ国である。

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一般に人口の少ない国では陽性件数は少なくなる。例えば、この項目の第1位のグアダルーペで国民全員が新型コロナに感染したとしても、陽性件数は40万件で、日本よりも少ない。しかし全員陽性となれば自治体としての機能が破綻することは間違いない。そこで、感染状況を把握するために、世界各国の人口がもし全て100万人であったらと仮定するとどのくらいの陽性件数があったらと計算したものである。世界全体では、72.8人になる。Worldometer の Tot Cases/1M pop は、今までの全ての陽性件数をを人口で割ったものなので、1日平均ではない。従って、ここの数字よりもはるかに大きい。


人口100万人あたりの1日平均の陽性件数トップはグアダルーペで1304人になる。グアダルーペはカリブ海に浮かぶフランスの海外県である。人口は40万人、面積は浜松市くらいの大きさである。農業と観光が主な産業であるが、フランスの援助が1番の収入源である。数少ないワクチン接種を開始していない国地域の一つである。グアダルーペの陽性件数は32,353件で、ワクチン接種を始めていない国地域の中では最大である。死者数は309人で、致死率は1%である。グアダルーペでは7月末から感染が拡大している。平均増加率は220%である。次の火の陽性件数が前日の3倍以上になっている計算である。8月27日からは一旦減少に転じた。


人口100万人あたりの1日平均の陽性件数は、人口が少ないか、要請件数が多いか、あるいは、その両方で大きくなる。従って、太平洋やカリブ海の小さな島国や地域が上位に来ることが多い。そして7月から感染拡大した国や地域が多い。

A4. 面積1000㎢あたりの1日平均の陽性件数 ワースト:モナコ ベスト:19カ国

次のグラフは、第3期の面積1000㎢あたりの1日平均の陽性件数上位20カ国である。

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世界全体では4.2人である。この統計は陽性患者の密度を表している。新型コロナの統計サイトでこの統計を算出しているところは見たことはない。この統計は面積は狭いが陽性件数が多いところで大きくなる。一般的には陽性件数の多いところは人口も多いので、狭くて人口の多い国でこの統計は大きくなる。言い換えれば、この統計は大きい国地域は、その中の至る所に陽性患者がいる状態であると言える。また、この統計の小さいところは、その中に陽性件数の極端に少ない広大な地域を含んでいるのであって、陽性患者がいないわけではない。行くところへ行けば、むしろ多めにいる可能性がある。

例えば、ロシアの面積1000㎢あたり1日平均の陽性件数は1.3件で、平均の3分の1にすぎない。これは、ロシアではモスクワなど大都市で多数の陽性患者が出ているが、シベリアの町などでは少ない。しかしシベリアの面積は広大なので、面積1000㎢あたりの数字は極端に小さくなる。同じく、ロシアの人口100万人あたりの1日平均の陽性件数は155件とこちらは平均の2倍以上になっている。それは、シベリアでは人口も少ないので、人口100万人あたりの数字は結構大きくなるからである。

面積1000㎢あたりの1日平均の陽性件数の1位はモナコで5032人になる。モナコは周囲をイタリアに囲まれたいわゆるミニ国家である。人口は3万6000人あまり、面積は世界で2番目に狭く、日本で面積の一番狭い市である埼玉県蕨市の半分以下、ディズニーランドパリと同じくらいの広さである。しかし人口密度は世界最大である。モナコは世界で最も裕福な国の一つである。主要産業は観光で、かつてはカジノであったが、今は世界の富裕層の別荘地である。または化粧品産業に力を入れている。所得税はないが消費税が20%と高い。世界一物価の高い国としても有名で、国の収入の50%以上が消費税で賄われている(https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201810/201810f.html)。医療は充実しており、人口あたりのベッド数などは世界一位である。モナコの第3期の陽性件数は624人で、人口100万人あたりの1日平均の陽性件数は254.4人になり、平均よりは多いが、アメリカやイギリスよりは少ない。第3期の死者数は今のところ0である。ワクチン接種率は65%となっている。

面積1000㎢あたりの1日平均の陽性件数の上位20カ国ではイスラエルとイギリスを除いて面積が2500㎢以下の国や地域ばかりである。主な産業は観光であるが、フランスの海外領土以外は、タックヘイブンとして有名である。このように人が集まり、狭いので近より、秘密保持のために閉め切るので、一度感染が起こると大きなものになりやすい。イスラエルとイギリスは結構広いのに、同じようなことが起こっている。どれだけ陽性患者が多いのかと思う。

この統計の極端な例が、昨年話題になったクルーズ船、ダイアモンドプリンセス号である。同船では1月30日から3月15日までの間に、712人の陽性患者が確認され、3月30日までに14人の死者が出した。船には乗員乗客3713人が載っており、人口100万人あたりの1日平均陽性件数は4169人となる。しかし世界ーではない。一方、船の延床面積は0.3平方キロメートルなので、面積1000㎢に換算すると、約51万5942人になる。東京の面積は2200㎢なので、東京で毎日100万人の陽性患者が確認されたのと同じくらいの規模である。クルーズ船は集近閉の3条件を満たしている。そういうところで感染が発生すると被害が非常に大きくなる例である。だからこそ集近閉を避けよと言われているのである。

B1. 死者数 ワースト:インドネシア ベスト18カ国

2021年7月1日から8月31日までの死者数の第1位はアメリカでもインドでもブラジルでもなく、インドネシアである。期間中の死者数は74,532人である。ただし、2020年からの全ての死者数ではインドネシアは7位になる。1位はもちろんアメリカである。インドネシアもD章で解説する。

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一方死者数が0の国は29カ国存在する。このうち第2期は0でなかったものが10カ国ある。これとは他に10カ国が2020年からずっと死者数が0である。


世界全体では560,745人で死者があった。


B2. 死者数の伸び率 ワースト:英領バージン諸島 ベスト:10カ国

伸び率は2021年7月1日から8月31日までの死者数が4月1日から6月30日までの死者数に対して何%増加したかを表す。数字の前にマイナス記号(ー)のついたものは減少を表す。世界全体では伸び率はマイナス45.3%で減少している。減少の割合は陽性件数よりも大きい。

下のグラフは死者数の伸び率の上位20国地域である。

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左端のバージン諸島から14番目のコモロまでは棒グラフがない。それは、伸び率が無限大、つまり第2期の死者数が0であったからである。また、第2期以前でも死者数は少なかった。

伸び率無限大の14の国と地域のうち、最も死者数の多いのがバージン諸島である。バージン諸島はカリブ海の島々で、アメリカ領とイギリス領がある。ここでいうバージン諸島はイギリス領のことである。人口は31,912人で、総面積は153㎢で、伊豆諸島中程の三宅村、御蔵島村、八丈町、青ヶ島村を合わせたくらいの大きさである。主要産業は観光であるが、タックスヘイブンとしても有名である。

バージン諸島の第3期の陽性件数は2255件で第2期から1309%増である。第2期以前はわずかに313人であった。第3期だけで全陽性件数の88%を占める。死者数も2020年4月19日に最初の1人を出して以来、今年の7月まで死者数0を継続していた。バージン諸島では今年の6月末から感染爆発が起こっていた。平均増加率は283%、陽性件数は毎週ほぼ4倍になっていた。現在は感染爆発も終了したようで、陽性件数も死者数も0に戻っている。
バージン諸島は5月21日から接種を開始した。当初はアストラゼネカを接種していたが、感染爆発後の8月6日からジョンソンを追加した。第3期の接種日数は第2期のそれよりも長いニモカかわらぜう、第3期の接種回数は、第2期よりも少ない。しかし接種率は56%になる。


下のグラフは死者数の伸び率の下位20国地域である。つまり第2期の減少率が高かったところである。10カ国で死者数100%減少、すなわち、第2期では死者が出たが、第3期の死者数0を維持している。この10カ国の第2期の死者数は高々10人と非常に少ない。

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11位にランクされるハンガリーは、第2期の死者数が9255人であったが、今のところ第3期では66人と実に99%以上減少させた。ハンガリーは旧東側諸国の一員であったが、今ではEUの構成国の一つである。人口は約1000万人、面積は93,030㎢で、東北地方と東京と神奈川を除く関東地方を合わせたくらいの広さである。主要産業は工業でワインと硝酸が有名である。2020年の一人当たりのGDPは15,820ドルで裕福な方ではある。

ハンガリーの第3期の陽性件数は4209件で、第2期に比べ97.3%減少した。2020年からの累計陽性数では37位にランクされるが、こちらでは141位となる。第2期も第1期から52.8%減少させている。しかし陽性件数は7月半ばから、死者数は8月から増加傾向にある。陽性件数の平均増加率は毎週21%であるが、8月半ば以上は上昇している。ハンガリーの第3期の致死率は1.6%で、第2期に比べ4.4ポイントも減少させている。

ハンガリーは昨年12月28日からワクチンの接種を始めた。EUに加盟国なので、ファイザー(43%)、モデルナ(7%)、アストラゼネカ(12%)、ジョンソン(1%)を接種しているが、シノファーム(20%)、スプートニク(17%)も接種している。( )の数字はその割合である。接種率はほぼ60%である。従って、第3期の接種回数は第2期よりも80%減少させている。

また、スロバキア、ポーランド、チェコなどの旧東欧諸国で死者数の減少率が高いことがわかる。


B3. 致死率 ワースト:台湾 ベスト:18カ国

致死率はその期間の死者数の陽性件数に対する割合である。世界全体では1.6%で第2期に比べ0.3ポイント下がった。下の図は、世界全体の四半期ごとの陽性件数(青の棒グラフ)と致死率(緑の折れ線グラフ)の複合グラフである。致死率は昨年前半が高く、今年の第1期で上書したが、概ね減少傾向である。致死率は医療体制に左右されることが多い。昨年前半は未知の感染症なので、医療従事者もどう扱って良いかわからない面が多々あった思う。しかし、徐々に取扱方法がわかってきたことが、致死率の減少につながっていると考えられる。また、ワクチンの効果も考えられる。

下のグラフは致死率の上位20カ国である。

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致死率の第1位は台湾で15.7%である。第2期から11.1ポイント上昇させた。台湾の感染状況は2週前の投稿で説明し絵ちるので、そちらを参照してください。

また、 死者数が0ならば致死率は0.0%になるがそういう国地域は18ある。中央アフリカは0.048%で四捨五入で0.0%になった。

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C1. ワクチン接種回数 ベスト:中国 ワースト:マダガスカルなど6カ国

世界ではこの間に22億5000万回近くの接種が行われた。総接種回数は53億4942万回になる。下のグラフは2021年7月1日から8月31日までのワクチン接種回数上位20カ国である。

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世界で最も多くのワクチン接種を実施している国は中国で、8億2291万回になる。2位のインドの2.5倍の接種回数であり、世界のワクチン接種回数の3分の1以上になる。中国も早くからワクチンを接種していた国の一つで、シノファーム、シノバック、カンシノなど中国製ワクチンのみを長らく接種してきたが、8月末からファイザーも接種し始めた。ファイザーはアメリカとドイツが開発したワクチンであるが、実は開発過程で中国の復星(フサン)ファーマという製薬会社が関わっているもで、中国製であるとは言えるかもしれない。

中国は世界で最初の新型コロナの感染爆発が起こった国である。2020年前半に大量の陽性件数と死者数を出したが、以降の陽性件数は平均すると一四半期あたり2000人ほどである。1日に換算すると約20人にすぎない。今年の1月に2人の死者が出た以外は、昨年4月18日以降死者数0を続けている。2021年第3期の致死率は0であるが、2021年からの累計にすれば、致死率は4.9%になり、実は世界で11番目に高い。

中国では2021年に感染の波が二回訪れている。一回目は1月1日を起点に、1月22日にピークを迎えている。2回目は7月23日を起点に、8月13日にピークを迎えている。最初の波はワクチン接種を始めてから2週間後に始まった、二回目の波は、接種率が43%を超えたところで始まっている。先週議論した、ワクチン接種国の感染状況5段階を確実に踏んでいると言える。

下のグラフは2021年7月1日から8月31日までのワクチン接種回数の下位20カ国地域である

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マダガスカル、カリブ海諸島、フォークランド諸島、セントヘレナ、トルクメニスタン、パラオの6の国と地域には棒グラフがないが、ここでは無限大ではなく、0である。ワクチン接種を開始したにもかかわらず、2ヶ月以上もワクチン接種を実施していない国である。世界には全くワクチン接種を開始していない国が15カ国あるが、それらとは別である。率にすればどこも100%減になるが、その中で、最も接種回数を減らした国がマダガスカルである。

マダガスカルはアフリカの東にある島国である。人口約2700万人、面積は58万7000㎢で、日本の1.4倍の広さである。マダガスカル島は島として世界で4番目に大きい。また、アフリカ大陸からかなり離れており、ここにしか存在しない生物(固有種)が多いことで知られている。2020年の一人当たりのGDPは502ドルで、世界で7番目に低い。

マダガスカルの7月1日から8月31日までの陽性件数は653件で第2期に比べ96.3%の減少した。人口100万人あたりの1日平均の陽性件数は0.4件、面積1000㎢あたりの1日平均の陽性件数は0.0件である。死者数は43人で、これも第2期から91.3%の減少である。人口あたり面積あたりの死者数は0.0である。マダガスカルの減少が始まったのは4月末からである。ピーク時には1週間で4000人以上の陽性件数があったが、今では60人ほどになっている。かなり減少したが、8月はへったり増えたりが続いている。この辺りは、感染再発前のイギリスやイスラエルと状況が似ている。

マダガスカルがワクチン接種を始めたのは5月12日で、6月30日までの40日間におよそ20万回の接種をした。接種ワクチンはアストラゼネカである。最後に接種したのは6月28日である。接種率は0.7%である。註:マダガスカルでは9月6日に接種を再開した。順位は34位になる。

ワクチン接種回数が少ない国地域はマダガスカルとタンザニアを除いて、人口の少ないところばかりである。従って、接種率が高いか陽性件数が少ないかのどちらかになる。この中では、セントヘレナ、フォークランド諸島、ピトケアン、ジブラルラル、トケラウ、クック諸島、サンマリノ、ニウエ、アンギラ、バミューダ、セーシェルでは接種率が60%以上になっている。ジブラルタル、さドミニカ、セーシェル以外は陽性件数が1000件未満である。

C2. ワクチン接種回数の伸び率 ワースト:マダガスカルなど5カ国、ベスト:ハイチなど5カ国

世界ではこの間に22億5000万回近くの接種が行われたが、第2期からは約10%減少させている。下のグラフは2021年7月1日から8月31日までのワクチン接種回数の伸び率上位20カ国である。

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ここで棒グラフがないのは伸び率無限大、つまり、第2期にワクチン接種0回であったところである。いずれも第3期にワクチン接種が始まったばかりである。トケラウ、にうえ、キリバツでは2020年から陽性件数が0である。また、タンザニアも長く陽性件数は0せあった。ハイチは陽性件数が0でないにもかかわらず、長らくワクチン接種が始まらなかった。

ハイチはカリブ海で2番目に大きなイスパニョーラ島をドミニカ共和国と分割している。人口は1140万人でカリブ海では最も人口が多い。面積は27,750㎢で、カリブ海では3番目に広い国である。イスパニョーラ島は北海道とほぼ同じ広さで、ハイチは檜山、渡島、胆振、日高、後志、
石狩、空知の各振興局を合わせたぐらいの広さである。Wikipedia にはハイチ国民の70%近くが農業に従事しているとあるが、農業は主要産業ではないらしい。では、何が主要産業かというと、何も書かれていない。かつて世界一だったコーヒーも生産量が激減した。それでもコーヒーは外貨獲得の唯一の手段であるらしい。ハリーケーンや地震などの自然災害で、経済は壊滅状態らしい。2020年の一人当たりのGDPは1253ドルで、貧しい国の一つである。

ハイチの2021年7月1日から8月31日までの陽性件数は2258件で、第2期に比べて、61.7%の減少である。死者数は150人でこちらは18.9%の減少である。死者数の減少率が陽性件数のそれよりも低いので、致死率は6.6%と高い。これも第2期から3.5ポイントも増えている。人口100万人あたりの1日平均の陽性件数3.1件、面積1000㎢あたりの1日平均の陽性件数は1.3件、でそう多くはない。ハイチでは5月14日から感染の波が発生した。ピークは6月4日で、現在は減少傾向である。

ハイチは7月16日からワクチン接種を開始した。8月31日までに約3万2000件回の接種を行ったが、接種率は0.24%と非常に低い。人口100万人あたりの1日平均のワクチン接種回数は58.3回で,ワクチン接種回数0の国を含めても下から15位である。比較のために書いておくと、日本は10423.9人で9位である。


下のグラフは2021年7月1日から8月31日までのワクチン接種回数の伸び率の下位20カ国地域である。

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接種回数0の国のうち、パラオ以外の5カ国が伸び率−100%になる。ワクチン接種回数が低い国と同じで、摂取率が高いか陽性件数の少ない国が多いが、ガーナ、ルーマニア、モンゴルはどちらにも当てはまらない。

C3. 人口100万人あたりの1日平均のワクチン接種回数 ワースト:マダガスカルなど6カ国 ベスト:ニウエ、トケラウ;エクアドル


ワクチン接種回数は陽性件数同様、その国の人口に左右される。人口が多ければ、その分ワクチンが必要になる。従って、単に回数だけで比較するのは適切ではない。そこで、人口100万人あたりの1日平均のワクチン接種回数を計算した。世界では人口100万人あたり1日平均4604.9回の接種が行われている。下のグラフは上位20カ国である。

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最もこの数字が高い2国は、ニウエとトケラウで両方とも2万3000回を超えている。しかし、ニウエは人口が1600人、トケラウが1400人と非常に少なく、実際の接種回数もそれぞれ、2406回、968回と少ない。また、両国とも2020年からの陽性件数は0である。

陽性件数が0でない国で、人口100万人あたり1日平均ワクチン接種回数が多い国は、エクアドルの13735.3回である。エクアドルは南米大陸の北西部にあり、ミュー株のコロンビアとラムダ株のペルーに挟まれている。赤道直下にあり、国名も赤道に由来する。人口は1360万人ほどで、面積は約28万㎢で、日本の4分の3くらいの広さである。エクアドルは進化論の元になったガラパゴス諸島を領有している。エクアドルの2020年の人リアタイのGDPは5520ドルである。エクアドルの主要産業は農業、漁業、鉱業、観光である。特に石油は輸出額1位の重要産品である。物価が安く、気候も穏やかなので、アメリカの雑誌『International Living』は企画した定年後に住みたい国2021年版で、第6位にランクしている(https://internationalliving.com/the-best-places-to-retire/)。

エクアドルの2021年7月1日から8月31日までの陽性件数は約4万3000件で、第2期よりも67%減少した。人口100万人あたりの1日平均の陽性件数は38.4で、世界平均の約半分である。死者数は1273人で72%の減少である。致死率は3.0%とやや高めではあるが、第2期よりは0.5ポイント減らしている。エクアドルは他の南米同様3月に感染の波が訪れた。この時期の陽性件数の約40%がラムダ株である。ピークは4月末で以降は概ね減少中である。しかし8月27日は268%の大幅増となった。減少中もちょくちょく陽性件数は増加していたが、ここまで大きなものはなかったので、注意が必要である。

エクアドルでは1月21日からワクチン接種お開始した。接種ワクチンはファイザー、アストラぜねか、シノバックである。7月1日から8月31日までのワクチン接種回数は1500万回強で、第二期から284%増加した。接種率は60%弱である。

下のグラフは下位20カ国である。

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ワクチン接種回数が0回の6カ国を除くと、一人当たりGDPが下位の国ばかりである。また、チャド、ハイチ、ブルキナファソ以外は接種回数も第2期に比べて35%から97%減少させている。


C4. 面積1000㎢あたりの1日平均のワクチン接種回数 ワースト:マダガスカルなど6カ国 ベスト:マカオ


ワクチン接種回数は陽性件数同様、その国の広さにも左右される。国土が広ければ、その分ワクチンを運んだりする手間が増える。そこで、面積1000㎢あたりの1日平均のワクチン接種回数を計算した。世界では人口100万人あたり1日平均266,2回の接種が行われている。下のグラフは上位20カ国である。

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最もこの数字が高いところは、マカオで132,799.6回となっている。マカオは中国の南東部に位置する。半島といくつかの島から成り立っている。珠江を挟んで対岸には香港がある。元々はポルトガル領であったが、1987年に返還された。人口は約65万人、面積は31㎢である。東京の府中市と同じくらいの面積である。一人当たりGDPは発表はないが世界一であるらしい。主な産業が観光であるが、ギャンブルがその中心である。

マカオの陽性件数は9件であった。2020年からの累計でも63件である。死者数は今までに一人もいない。香港と違って民主運動の話は聞かないので、中国に統制されているせいであろうか。ワクチン接種は2月8日から始まっており、シノファームとファイザーが接種されている。第3期の接種回数は25万7711回であった。第2期よりは11%ほど減少している。

上位20カ国は、人口密度の高い国が占める。1箇所に何百何千と人を集め一気に接種するという方法が取れるので、効率が良い、なので、ワクチン接種がさらに進む。

下のグラフは下位20カ国である。

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人口100万人あたりの1日平均のワクチン接種回数とほぼ同じである。ワクチン接種回数0の国を除けば、一番低いところはグリーンランドである。

グリーンランドは世界最大の島で、デンマーク領である。人口は約5万6千人、面積は21万㎢で日本より10%ほど広い。島の大半が北極圏に属するので、地表は80%以上が1500から3000メートルの厚さの氷で覆われている。主要産業は漁業である。

グリーンランドの第3期の陽性件数は284件で、第2期に比べ1400%近い増加になっている。グリーンランドでは7月半ばから感染拡大が始まった。平均増加率は237%になる。ピークは8月13日に迎えたようであり、現在は減少中である。人口100万人あたりの1日平均の陽性件数は80.5件と世界平均より少し多い、面積1000㎢あたりでは0件である。当然のことながら、感染拡大は人のいる都市部でのみ起こったわけである。死者数は2020年以来0人である。

ワクチン接種回数は33,319回で第2期に比べ2.4%の減少である。1月27日から接種を開始した。当初はファイザーであったが、6月7日からモデルナに切り替えた。切り替えた時点での接種率は約30%である。8月31日の摂取率は70%である。人口100万人あたりでは1万回近いが、 面積1000㎢あたりではわずかに0.2人である。グリーンランドでは氷に覆われていない沿岸部に町が点在している。人口も少ないところばかりである。数十人の住民のために、関係者が遠くの町へ向かったり、あるいは接種場所へ来てもらったりとの苦労が偲ばれる。この時の移動費用はおそらく政府負担であろう。

グリーンランド以外の接種回数の0でない上位国はパプアニューギニア以外は全てアフリカである。また、ベナン、ギニアビザウ以外は面積が20万㎢より広い。また、接種率も、一人当たりGDPの低い国が多い。ただ単に接種回数が少ないだけではなく、地方へ接種しに行こうにも交通費などの問題で行けず、なかなか接種率が上がらないのかもしれない。

C5. ワクチン接種率 ワースト:マダガスカルなど6カ国 ベスト:ジブラルタル

ワクチン接種率は累計の接種人数を人口で割ったものである。この統計だけは累計値を使う。接種人数を発表していない国は過去の数値から予測して計算している。世界のワクチン接種率は39.73%である。これは第2期から16ポイントの増加である。下のグラフはワクチン接種率の上位20カ国である。

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グラフは下位との比較のために80%で区切った。ジブラルタルからチャネル諸島までの8カ国地域で80%以上になっている。またグラフの赤い部分は第3期だけの接種率である。ジブラルタルは第2期で既に接種率80%以上を達成していたが、ニウエは第3期だけで接種率80%以上を達成した。


接種率のトップはジブラルタルである。ジブラルタルはスペインの南端にありイギリス領である。人口は3万3千人あまり、面積は日本で一番狭い蕨市と同じくらいの広さ(6㎢)である。イギリス軍が駐留するので、経済基盤は軍需産業である。観光にも力を入れている。また、タックスヘイブンとしても有名である。
ジブラルタルの陽性件数は1006件で、第2期に比べ1260%の増加である。7月9日から感染拡大があった。この間の平均増加率は218%である。7月末からは減少中である。死者数は3人で、第2期では0人であった。

ワクチン接種は1月10日から始まった。ファイザーを接種している。第3期の接種回数は765回で、第2期に比べ96%の減少である。摂取率は117%と100%を超える。また完了率も116%と100%を超える。毎日二人程度の接種を続けている。ブースターという話kではなさそうなので、いったい誰に接種して居るのか気にかかる。

下のグラフはワクチン接種率の下位20カ国である。

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接種率上位と比較するとほとんど接種していないように思える。

接種率は累計値で計算しているので、接種率が0と言うことはまだ接種が始まっていない事になる。そういう国は15カ国ある。接種が始まった中でもっと低い国はコンゴ民主共和国である。

コンゴ民主共和国はアフリカの中部に位置する。コンゴ共和国はコンゴ民主共和国の西隣にある別の国である。我々の世代ではザイールといった方がピンとくる。一見すると内陸国のように見えるが、最西端のコンゴ中央州は大西洋に30km程の海岸線を持っている。人口はおよそ9000万人、面積は約234万㎢で、世界で11番目に広い国土を持つ。主要な産業は鉱業で、マンガンとプラチナは世界1位の産出量である。他にも、ダイアモンド、金、銀、銅、コバルト、スズ、ウランなど豊富な鉱山資源を持ち、重要な輸出品目である。2020年の一人当たりのGDPは541ドルで、下から9番目に低い。最貧国の一つである。

コンゴ民主共和国の陽性件数は13,622件で第2期に比べ4%の増加である。人口100万人あたりの陽性件数では2.4件と非常に少ない。死者数は131人で第2期と比べ約30%の減少である。
6月7月は毎週2000件ほどの陽性件数と30人ほどの死者数があったが、8月の後半からはそれぞれ1,000件以下、10人以下になっている。

ワクチンは4月18日から始まった。アストラゼネカを接種している。第3期の接種回数は4万回に満たない。そして第2期よりも35%接種回数が減少した。接種率は0.09%と非常に低い。


D. 終わりに

暫定2020年第3四半期のランキングを載せ、アメリカやインドネシアなど上位10カ国の感染状況を記す予定であったが文字数がだいぶ嵩み、時間も経ってしまったので、この部分は来週投稿したいと思う。

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