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COVID-19 QR 2/4 ブースターは効いているのか?

やっと世界全体での陽性件数上昇が止まった。22年5週(1/29-2/4)の陽性件数は2141万1957件で、先週と比べ8.3%の減少となった。1週間の陽性件数が前週よりも減少したのは21年41週(10/9-15)以来16週間ぶりのことである。21年51週(12/18-24)から始まった急増が6週間で止まった。この急増は6週間で止まったので、世間で言われている通りオミクロン株が原因であろう。もしそうなら、今後は感染減少が続くと考えられるが、二つの懸念がある。

A. 死者数はまだしばらくは増え続ける

まず第一は死者数の増加のペースが大きくなっていることである。22年第5週の死者数は7万5772人であった。前週比で17.6%増えた。これで4週連続の増加となった。これで22年の死者数は28万8129人となった。22年1期の死者数のペースは、21年4期比で1.1倍となって、昨年4期のペースを上回った。このままのペースで死者数が増え続ければ、22年1期は21年4期の死者数だけでなく、3期の死者数も上回る可能性がある。

次のグラフは、21年40週(10/2-8)からの世界の感染図である。

青の折れ線グラフが毎週の陽性件数を、緑の棒グラフが毎週の死者数を表している。死者数のスケールは陽性件数の0.5%にした。これは折れ線グラフが棒グラフの下にいる間は、致死率が0.5%以上であることを意味している。

陽性件数は21年4期の間、緩やかに上昇していき、50週で少し傾きが険しくなったかなと思っていたら、51週から急上昇を始める。50週目までの平均増加率は約5%であるが、50週以降は約25%に上がる。最も大きい時は52週で67%の伸び率があった。死者数は21年4期の最初の頃はほぼ横ばいで、陽性件数の伸び率が上がる直前の49週から減少し始める。ところが年が明けて、22年1週からグラフの傾きが険しくなる。22年の死者数に伸び率は16%になる。ちょうど、50週で陽性件数の急増が始まって、3週間後の22年1週から死者数の急増が始まった。

過去の統計から、新型コロナではローカルにもグローバルにも、

1)陽性件数のグラフの傾きがちょっと険しくなってから2~4週間後に死者数のグラフの傾きも険しくし始める、そして、

2)陽性件数がピークになってから2~4週間後くらいに死者数もピークになる、

ことがわかっている。今回も同様のケースになった。したがって、今回の死者数も2〜3週間後にはピークを迎えると考えられる。陽性件数の伸び率が高いので、死者数の伸び率も高くなる。結構な数の死者が出ると思われる。22年の致死率は今のところ0.3%弱であるが、1%近くまで上昇すると思われる。

南アフリカでは、陽性件数がピークになってから4週間後に死者数もピークを一旦迎えたが、死者数はなかなか減らず、今週の死者数はピークの時よりも多くなった。その結果、陽性件数の急上昇中は0.5%未満であった致死率が、陽性件数の減少に伴い致死率は上昇し、南アフリカでは2.6%にまで上昇している。今のところ、この兆候を示しているのは南アフリカのみなので、結論を出すにはまだ早いが、オミクロン株は感染してから1~2ヶ月たって死に至るケースが多いと思われるが、オミクロン株が再び変異した可能性も考えられる。したがって、オミクロン株の死者数は報道されているよりも高くなる可能性がある。

下の地図は今週死者数が増加した国の、伸び率の変化を表している。


イギリスやチェコなど茶色に塗られているところは、先週まで死者数が減少していたにもかかわらず、今週急激に増加した国地域である。イランやインドなどの赤く塗られたところは死者数が増え、かつ、そのペースが大きくなっている国地域、アメリカや日本など橙は死者数は増加しているがそのペースが落ちてきている国地域である。先週掲載した22年1月の陽性件数のトレンド地図で、感染拡大の可能性が高いと予想したところと重なっており、橙は、感染がそろそろピークを迎えると予想したところと重なる。それゆえ、茶色と赤に塗られたところは来週以降も死者数が大きく増加し、それが少なくとも3週間は続くと予想される。橙は早ければ来週から、遅くとも3週間後には減少に転じると予測される。

ロシアなどヨーロッパ東も先週感染拡大可能性が高いと予想したが、今週の死者数は減少している。しかし、チェコやリトアニアなどで今週から急増が始まったことから、これらの国地域でも来週以降死者数が急増する可能性がある。特に、この地域はもともと致死率が高いので、死者数の伸びも今まで以上に大きなものになる可能性もある。

B. ヨーロッパ東、イラン付近、東南アジア、オセアニアで今後拡大

もう一つの懸念は、感染が収束している地域がある一方、急速に拡大している地域があるということである。そして感染が拡大している地域は移動をする。移動する先は感染がおさまった地域である。今回はヨーロッパ西から東へ移動してきた。これからイランの方へ移動しようとしている。先週、オランダからドイツ、ロシアを経てイランへ抜けるルート沿いと東南アジア、オセアニアで陽性件数が大きく伸びるだろうと予想した。下の地図は22年5週の陽性件数のトレンドである。


1週間たって、そのルートの西端にあたるドイツやポーランドでは、まだ陽性件数は増加しているものの伸び率が下がっている状態(橙色)になった。スイスやデンマークでは今週は陽性件数が減少した。一方、東端のイランは今週の陽性件数が増加前と比べ20倍以上なったので、急上昇中の茶色に変えた。ロシア、ジョージア、トルコなどでは伸び率が大きくなっており(赤色)で、感染の中心が東へ移動したことがわかる。22年の陽性件数の順位でロシアは15位から12位に、トルコは11位から10位へ、イランは60位から39位へと順位を上げた。

東南アジアでは、インドネシアの陽性件数が増加前と比べ10倍以上なったので、これも茶色に変えた。また、タイやミャンマーなど北の方で。陽性件数が増加傾向となった。

オセアニア全体では陽性件数が大きく減少している。これはオーストラリアで大きく減少が続いているからである。しかし、パプアニューギニア、ニューカレドニア、ソロモン諸島、パラオで陽性件数が急増してている。今週はトンガでも12週間ぶりに陽性件数の確認があった。また、先週初めての新型コロナによる死者を出したソロモン諸島で、死者数が4倍増となった。いまだに感染者の報告のない島々でも、今後感染者及び死者の報告が出るかもしれない。

一方アメリカ南北では、伸び率の下がっているところ(橙色)で増加が止まり(黄色)、増加の止まったところは減少傾向(緑)になり、減少傾向のところは減少率が大きくなった(薄青)。ヨーロッパ西でも同じような傾向が見られる。

アメリカやフランスなど陽性件数の大きなところで減少が始まったので、今技は世界の陽性件数は一気に減少する。しかし、ロシアやイランなどで大きく増えているので、すぐに増加傾向にもどる可能性もある。

また、アフリカでは薄青から青に変わった国も多い。これは減少率が小さくなってきた、つまり、陽性件数の減りが鈍くなってきたことを意味する。過去のパターンからすると、陽性件数が減少する時、減少開始直後は減少率が大きくなっていく(薄青)が、あるところまで行くと、減少率が小さくなり(青)、やがて減少が止まって、増加傾向となるのが常である。ヨーロッパ東ではすでに減少傾向から増加傾向へ変わった。アフリカもそうなる可能性がある。

C. 2週間ほどで日本の陽性件数は減少が始まる

日本の22年の陽性件数は127万万4151件で16位と先週から順位を7つ上げた。22年5週の陽性件数は58万6033件で、トルコについで世界10位である。先週比伸び率は45%である。先週先々週に引き続き3度目の過去最高を更新し、連続増加も9週に伸びた。しかし、伸び率は3週連続で減少している。諸外国の増減パターンと、空港検疫での陽性件数が減少傾向に入ったことから、1~2週間のうちに、陽性件数は減少に転じると予想される。感染急増中の韓国からの移動を回避できれば、大きな減少になると考えられる。

また、22年5週に新型コロナ感染が原因で397人が亡くなった。死者数は4週連続で増加となった。今週の伸び率は130%と相変わらず高い。これで、22年は646人が亡くなった。順位は69位から44位に大幅アップとなった。死者数が大きく増えたので、致死率は0.1%と先週の2倍に増えた。しかし、陽性件数の増加ペースが下がったので、死者数の増加ペースも下がった。したがって、陽性件数に少し遅れるが、2月中にはも減少傾向になると思われる。

D. 世界の感染状況

D1. 22年の陽性件数は1億件越え

22年5週の陽性件数は久々に減少したが、22年の陽性件数が1億266万7955件と、先週の予想通り、1億件を超えた。21年に陽性件数が1億件を超えたのは、半年たった27週目であった。このままのペースでいけば、22年1期は過去最悪だった21年2期(インドを中心としたデルタ株)よりも陽性件数は多くなるであろう。20年からの累計では約3億9000万件を超え、こちらは来週中には4億件を超えるのは間違いない(註:2月8日の Worldometer では4億件を超えた)。

今週はフォークランド諸島で4週間ぶり、トンガで11週間ぶりに感染者が確認された。一方、デンマークでは18週間、フランスとポルトガルでは16週間、スウェーデンでは11週間続いた陽性件数の増加が止まった。

77の国地域で22年4週より陽性件数が増加した。カメルーン、ガンビア、フォークランド、トンガで伸び率が無限大となった。無限大を除いて伸び率が100%以上の国は14国あった。伸び率最大は東ティモールで969%増であった。ドイツやロシアなど38国で陽性件数が過去最高を記録したが、先週の68国からは大幅に下がった。

マカオ、ミクロネシア、セントヘレナ、バヌアツ、ウォリスフツナの5国地域では22年の陽性件数0、西サハラは21年からの陽性件数0を、北朝鮮など8国地域で20年からの陽性件数0を続けている。

22年の陽性件数トップ20は下の表の通りである

22年の陽性件数前期比倍率トップ20は下の表の通りである

前期比倍率は今季のペースが21年4期のペースと比べてどのくらい大きくなったを表している。昨期の陽性件数が0のところは倍率が無限大となる。サモア、マーシャル諸島、バチカンの3国あるが、いずれも陽性件数は小さい。無限大を除く最大は、ソロモン諸島では1770倍となった。日本は113.9倍である。無限大を除くと世界で5番目に大きい。また、倍率の高い国はオセアニアとアジアに多い。

22年5週の陽性件数トップ20は下の表の通りである


D2. 死者数はさらに増加

22年5週は世界全体で6万4414人が亡くなった。前週比15.9%の増加である。3週連続増加であるが、伸び率は先週よりも上がった。これで、22年に入ってからの死者数は28万8129人となった。21年4期に比べると10%程ペースがはやい。2020年からの累計の死者数は約575万人となった。

今週はサンピエールミクロンで20年に統計を取り始めて以来初の死者が出た。サンピエールミクロンは2つの島を主な領土とするフランスの海外県で、カナダのニューファウンドランド島の近くにある。20~21年は2、3週間に1人ほどのペースで陽性患者が出ていた。11月末に小規模な感染の波が終わった後、1月7日から急増が起こっていた。フランスの海外県なのでワクチン接種は実施されていない。

今までほぼ感染0だった地域に急に大規模な感染が起こり、死者が出たのは、先週のソロモン諸島と同じである。ソロモン諸島では陽性件数の急増が起こってから1週間後に、サンピエールミクロンでは4週間後に死者が出た。同じような状態のキリバスやパラオでも死者が出る可能性がある。

また、アルメニア、ウクライナでは死者数の連続減少が11週で、チェコでも8週で止まった。ウクライナ、ハンガリーなど今週は死者数を増やした国も多い。これから、ヨーロッパ東で、死者数が増えてくる可能性が高い

102の国地域で22年4週より死者数が増加した。10国地域で伸び率が無限大となった。無限大を除いて伸び率が100%以上の国は14国あった。伸び率最大はスーダンで432%増であった。

ブータンや台湾など22国地域で今週の死者が0だった。そのほかに、ブルンジや中国など13国地域では22年に入って死者数が0を続けている。西サハラは21年から引き続き死者数0を続けている。北朝鮮など18国地域で統計開始以来死者数0を続けている。

世界の22年の致死率は0.28%である。21年4期は致死率が小さくなっていたが、ここ2週間は致死率が大きくなっている。陽性件数が減少している最中は一般的に致死率は上がる。今後しばらくの間、陽性件数は減少すると考えられるので、致死率は上がると思われる。20年からの致死率は1.47%である。

22年の死者数トップ20下の表の通りである

陽性件数のトップ20はヨーロッパ西が多いが、死者数トップ20にはヨーロッパ東も多い。

22年の死者数前期比トップ20下の表の通りである

ブータンで倍率が無限大となったが死者数は1人である。無限大を除く最大は、中央アフリカで前期の23倍のペースで死者が出ている。しかし死者数が減少傾向である。死者数の倍率の高い国はアフリカが多い。

22年5週の死者数トップ20は下の表の通りである

22年5週の致死率トップ20は下の表の通りである

D3. 大陸別の感染状況

大陸別の22年の陽性件数、人口100万人あたりの1日平均の陽性件数は以下のとおりである。

22年陽性件数
22年陽性件数 人口100万人あたり1日平均

オセアニアは人口100万人あたりの1日平均の陽性件数でアメリカ北を越えて、ヨーロッパ西に次ぐ2位になった。陽性件数自体はそう多くないが、人口がそれほど多いところではないので、この数字が高くなる

同じく大陸別の22年の死者数、人口100万人あたりの1日平均の死者数は以下のとおりである

22年死者数

ヨーロッパ西は陽性件数では世界の4分の1を占めダントツの1位であるが、死者数では、アメリカ北の約半分、ヨーロッパ東よりも20%ほど少ない。大陸別の22年の人口100万人あたりの1日平均の死者数は以下のとおりである

22年死者数 人口100万人あたり1日平均

人口100万人あたりではヨーロッパ東がアメリカ北よりも多くなる。

次の円グラフは22年の陽性件数と死者数の大陸別割合を示したものである。

ヨーロッパ西とアメリカ北とで陽性件数の世界の半分を占める。アフリカは全部合わせても5%に満たない。アメリカ南とヨーロッパ東は死者数の占める割合が、陽性件数の占める割合よりも大きい。アメリカ南の医療水準はヨーロッパより低いと言われているので、死者数が増えるのは仕方のないことかもしれないが、ヨーロッパ東の医療水準はヨーロッパ西よりも良いと言われているので、ヨーロッパ東の死者数の多さは、新しいウイルスの可能性も考えられる。

E. ワクチン過完了率は12.6%

22年5週は世界全体で1億4176万回あまりワクチンが接種された。前週比で25%近く減少した。それでも22年の接種回数は約10億を超えた。これは21年4期より1割ほどペースが落ちた。22年の1日平均の接種回数は3660回ほどである。

タンザニアでは22年になって初めての接種が行われた。しかし、昨年の接種能力とほぼ同じなので、接種は継続して実施していたが、今回まとめて発表したものと考えられる。

リベリアは12月31日の記録が1月7日の記録に変更され、接種回数はそのままで、接種人数、完了者数が少し増えた。モーリシャスとレソトでは22年の接種記録が全て消された。22年に接種された(と思われていた)分は全て12月末の記録となった。その結果、両国の22年の接種回数は0になった。

22年にいまだに接種が実施されていない国地域は29国地域になる。このうち北朝鮮など13国地域で過去に一回も接種がない。また、29国地域中7国地域がオセアニア、7国地域がアフリカである。2週以上連続で接種が実施されていない国が上記の29国以外にガーナやラオスなど22国ある。このうち14国がアフリカ、7国が地域がオセアニアである。また、今週は接種を実施しなかったところもバングラデシュやベネズエラなど21国地域にのぼる。13国がアフリカである。

54国地域で接種回数が先週より増えた。先週接種回数が0だったために伸び率無限大となったところが前述のタンザニアを含めて8国ある(うち5国がアフリカである)。無限大を除く伸び率最大はタイの920%増である。

世界の完了率は52.2%となった。WHOの目標としている完了率40%以上のところは142国地域になった。アフリカでは58国地域中、セーシェル、モーリシャス、ルワンダ、ボツワナ、モロッコ、セントヘレナ、チュニジア、カボベルデの8国しか完了率40%以上を達成していない。また、ヨーロッパ東でも23国中、ウクライナなど8国で完了率が40%未満である。

コソボでもブースタを1月7日から実施していたことがわかった。これで、世界の約半数に当たる110国地域でブースターが実施されたことになる。ブースターを実施していない主な国には、メキシコ、ルーマニア、ウクライナ、ベトナムなどがある。また、パレスチナ、オマーン、クウェート、ウズベキスタン、モルドバ、ジョージア、アルジェリア、中国では数回実施しただけでここ数週間ブースターを実施したという報告はない。ちなみにこの8国全てで中国製ワクチンとアストラゼネカ(中国を除く)が提供されている。

22年5週は4000万回ほどのブースターが行われた。前週比で17%減少した。22年のブースター回数は3億回あまりとなった。そう接種回数のうちのブースターの割合は30%になった。

三回以上接種した者の割合である過完了率は12.6%となった。過完了率40%以上の国はヨーロッパ西を中心に38国地域にのぼる。

22年接種回数トップ20

22年5週接種回数トップ20

完了率トップ20

過完了率トップ20

F. ワクチン接種率が増えると陽性件数が増加する数学的モデル

ワクチンは接種を完了しても時間が経つにつれ、感染しにくさが減る。ファイザーの研究(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34619098/)によると、完了直後はワクチンを完了していないものに比べ約10倍感染しにくい。しかし、半年経つと約2倍に落ちてしまう。多くの研究で、三回目の接種を受けると、感染しにくさが再び増えるということがわかった。ワクチンは接種完了してから3週間後くらいから効力を発揮すると言われているが、イスラエル(https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)02249-2/fulltext)やイギリス(https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1050236/technical-briefing-34-14-january-2022.pdf)の研究から、ブースター接種後1週間ほどで、感染しにくさが接種完了時のレベルに戻るようである。


F1. ブースターと陽性件数の関係

次の地図はブースターを実施したことのある国を過完了率で色分けしたものである。色が濃くなるほどブースター接種をしたものの割合が高い。

ブースターをより多く実施しているところは、陽性件数の高い。次のグラフは、ブースターを実施している110国地域と実施していない112国地域での22年の陽性件数を比較したものである。


陽性件数の95%はブースターを実施したことのある国地域で確認されている。次のグラフはブースターを実施したことのある国地域とそうでない国地域での22年の陽性件数の分布図である。

22年の陽性件数が1000万件を超えるのはアメリカとフランスの2国だけであるが、いずれもブースター実施国である。陽性件数が100万件以上1000万件未満のところは19国地域があるが、メキシコ以外の18国地域はブースターを実施している。陽性件数が10万件以上100万件未満のところ43国地域でブースターが実施され、12国地域で実施されていない。このように、陽性件数のより多いところでブースターが実施されている。逆に陽性件数が1万件未満ではブースターを実施していない国地域の方が多い。

次のグラフは、過完了率による人口100万人あたりの1日あたりの陽性件数である。

過完了率が高くなるほど、人口100万人あたりの1日あたりの陽性件数が多くなる。過完了率が30%を超えたところで急激に増加するが、50%以上だとあまり変わらない。これはワクチン接種率と陽性件数の関係とほぼ同じである。

以上のことから、ブースターがより多く実施されているところは感染のよりひどい地域であることがわかる。ただし、感染拡大したからブースターの数が増えたのか、ブースターをより多く実施したから感染拡大が進んだのかどうかはわからない。

F2. ワクチン接種率が増えると陽性件数が増加する数学的モデル

ワクチンの効果を表すのにコックスモデルというのが使われる。大雑把にいうと、ワクチン接種者の中で陽性患者の割合とそうでない者の中での陽性患者の割合の比を使う。実際には、患者の年齢や調査時期などで、ワクチンの効果は異なるが、それを補正するための手段もあり、R などを使えば割と簡単に計算できる。ワクチンの効果は0から1までの数で表され、1に近いほどワクチンの効果は高く、0に近いほど効果は薄い。

例えば、ワクチン接種者のうち1%が陽性、ワクチン非接種者のうち10%が陽性だったとすると、両者の比が1/10となる。これを1から引いた、1ー1/10=0.9がワクチンの効果となる。イギリスの研究結果では、半年ほど経つとこの数字が0.5になるそうだ。つまり、ワクチン接種者のうち5%が陽性、ワクチン非接種者のうち10%が陽性という感じになる。ところがこれを数字に直すととんでもないことがわかる。

次のような実験を考える。被験者を400人用意する。これを200人づつ2つにグループに分ける。グループ1はワクチンを接種し、グループ2は接種しない。各グループをさらに100人づつ2つのサブグループA、Bに分ける。グループ1A とグループ2A は接種完了の3週間後に検査を受ける。陽性の割合は先の例と同じだとすると、グループ1A には1人、グループ2A には10人の陽性患者が出る。

残りのグループ1B とグループ2B は接種完了26週間後に検査を受ける。今度はグループ1B には5人、グループ2B には10人の陽性患者が出る。確かにワクチンの効果は薄れた。

しかし、接種グループは約5ヶ月で陽性件数が5倍に増える。一方、非接種グループでは変わらない。つまりワクチンを接種してから時間が経つと感染率が高くなってしまうが、接種しなければ感染率は変わらない。この例では接種率が50%だけれども、80%になると、グループ1ABはそれぞれ160人づつ、グループ2ABはそれぞれ40人づつになり、感染率が同じだとすると、陽性患者数は次のようになる。


つまり、ワクチン接種者の方がより多くの感染者を出すことになる。ワクチンの効力の低下は、逆に、ワクチン接種が進んだ今、感染者数を多くすることになりかねない。今は世界はまさにこの状態なのではないだろうか。

人口、陽性件数、死者数はWorldometer のものを、ワクチン接種回数などは Github のデータを利用している。Worldometer や Github で扱っていない国地域の統計は Google のデータを用いる。北キプロスの陽性件数と死者数は、政府の発表するデータを用いる(https://saglik.gov.ct.tr/COVID-19-GENEL-DURUM)。面積、GDP、地図、その他の情報はウィキペディアと外務省(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/index.html)を利用している。それ以外のもの、例えばニュースや論文に関しては出典を本文に記す。数値はアメリカ中部時間の2月8日22時時点で得られた最新の値を利用している。2月8日以降に修正あるいは追加されたデータは含めない。従って、他の新型コロナ統計サイトの数値とは異なることもある。2月8日以前に修正あるいは追加されたデータは過去の号の統計にも反映させている。今号の統計とは異なるものもある。データの違いが大きくなる修正は本文で言及している。テーマ地図は mapchart.net のサービスを利用して作成している。


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