ヨーロッパで何が起こっているか

初めに

8月27日にパラオで初めての新型コロナ陽性患者が2人でた。パラオは太平洋にある200ほどの島々からなる国である。人口は2万人に満た図、世界で3番目に人口が少ない国である。国旗は日章旗と色違い、一部の週では日本語が公用語として使われるなど、日本との結びつきは強い。パラオでは2020年以来陽性件数は0であった。ワクチンは1月2日にモデルナを接種したが、それ以降は接種をしたという情報はない。接種率は17%ほどである。これで、陽性件数の確認が2020年以来0のままという国は11国となった。


下のグラフは、2021年7月3日から8月27日までの新型コロナ陽性件数の上位50ヵ国の陽性件数である。国名の隣の数字が順位で、↑は順位が先週よりも上がったこと、↓は下がったことを示す。⬆︎⬇︎は3位以上の上下を表す。

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上位50カ国で順位が上昇したのは、日本、イタリア、イスラエル、ドイツ、スリランカ、ベルギー、韓国、コスタリカ、モンゴル、アゼルバイジャン、アイルランドである。先週はインド以東のアジアが多かったが、今週はヨーロッパが5カ国ある。

下のグラフは、上位50ヵ国の2020年からの陽性件数である。青い部分が2021年7月3日以降の陽性件数、赤い部分が2021年7月2日以前の陽性件数である。先週紹介した東アジア各国では、青の部分が大きい、つまり、陽性件数のほとんどを7月3日以降に発生させている。しかし、ヨーロッパではアジアとは逆に青の部分が小さい。ところが、それらの国で感染拡大が起こっている。

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下のグラフは、上位50ヵ国の陽性件数がどのくらい増加あるいは減少しているかを表している。陽性件数1位のアメリカとともにマレーシア、日本、ベトナムなどのアジアで長い間陽性件数が上昇していることがわかる。また、下の方では、ドイツ、ベルギー、アイルランドでも長く陽性件数が上昇し続けている。

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下のグラフは、上位50ヵ国の2021年8月27日のワクチン完了率である。ヨーロッパの国は少なくとも50%以上はあるのに対し、アジアでは一番高い日本でも50%に満たない。アメリカでも50%を少し超えた程度である。ポルトガルでは完了率が70%以上あり、ワクチン接種をしても健康上問題のない国民全員の接種が終わったのではないかと思う。そんな国で、今感染拡大が起きている。

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そこで、現在のヨーロッパでの感染状況を、ワクチン接種と関連づけて数学的に解析する。西ヨーロッパは2021年は感染報告もワクチン接種もないバチカンを除く27カ国、東ヨーロッパは23カ国、計50カ国ある。


陽性件数、死者数、人口のデータについては、コソボは Google、北キプロスは https://saglik.gov.ct.tr/COVID-19-GENEL-DURUM で発表されているものを利用している他は、Worldometer のものを、ワクチン接種回数などは Github のものを利用している。

A.ヨーロッパで陽性件数が悪化していることについて

A1. 西は陽性件数発生の割合が高い

下のグラフはヨーロッパ50カ国の2021年7月3日以降の陽性件数である。

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サンマリノから上が西ヨーロッパ、ロシアからしたが東ヨーロッパ、それぞれ、陽性件数の多い順に並べてある。人口の多い国が必然的に上位に来るので、これでは各国の比較が難しい。そこで、人口100万人あたりの1日平均の陽性件数を用いる。

下のグラフは2021年7月3日以降の人口100万人あたりの1日平均の陽性件数である。

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日本は陽性件数では58万人以上でかなり多いが、100万人あたりに換算すると83.2人となる。これは世界平均と同じである。日本よりこの数字が少ない国はイタリアやドイツなど、西ヨーロッパ27ヵ国中6カ国、東ヨーロッパ23ヵ国中14カ国、計20カ国に過ぎない。半分以上の国で感染状況がひどいと言える。特に西ヨーロッパでは観戦状況が悪い。

下のグラフは陽性件数の増減の連続週数である。

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西ヨーロッパではドイツをはじめとして、陽性件数の多い国、言い換えれば人口の多い国では陽性件数が増加中である。フィンランドやフランスはここ2週間は減少しているが、それ以前は数週連続で増加していた。またイタリアなど数字が1のところは先週減少したところであるが、先々週まではやはり数週間にわたって増加していた。例外的にスペイン、ポルトガル、イギリス、オランダでは7月は減少を続けている。ただし、スペイン以外はここのところ増加している。

東ヨーロッパでは、チェコ以外は全て長期にわたって増加している。チェコも7月以降は上がったり下がったりの繰り返しで、感染状況は全然好転していない。

A2. 東は死者数の割合が高い

下のグラフは2021年7月3日以降の人口100万人あたりの1日平均の死者数である。

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世界ではこの数字が1.1人となる。日本は0.1人でとても少ない。西ヨーロッパでは世界平均以上の国はイギリス、スペイン、ギリシャ、マン島、ジブラルタルの5国地域しかないが、東ヨーロッパでは、ロシア、ジョージア、ベラルーシ、ブルガリア、北マケドニア、アルメニア、モンテネグロの7カ国とちょっと多い。西ヨーロッパの人口100万人あたりの1日平均の死者数は0.6人であるのに対し、東ヨーロッパは2.7人と4倍以上になっている。従って、東ヨーロッパでは致死率が西ヨーロッパに比べかなり高くなる。西の致死率は0.28%であるが、東は2.71%とほぼ10倍である。

下のグラフは2021年7月3日以降の致死率である。

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西は1%を超えるところはないが、東は14カ国と半数以上も1%を超えている。

A3. 西はワクチン接種がほぼ完了した


下のグラフはワクチン接種率である。明らかに西の方が接種率が高い。

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西の接種率は69.9%完了率も61.3%であるが、東はそれぞれ31.3%、27.2%と半分以下になっっている。接種率の世界平均が43%なので、東はそれよりも低い。ここからすると、接種率の高いところの方が、致死率が低くなることが予想される。

先週のアジアの状況を見直してみれば、致死率の高い、ベトナム、台湾、ミャンマー、インドネシアでは接種率が40%未満である。一方、日本、シンガポール、モンゴルなど接種率が50%を超える国の致死率は0.5%以下である。

下のグラフはワクチン接種回数がどのくらいの間増減しているかを表している。

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この数字が1であるというのが今週は増えたが、先週は減っていたという意味なので、これも含めると、ワクチン接種回数を減らしている国が多い。


しかし、接種率が高いからといって、陽性件数が減少するというわけではないようである。むしろ、東西ヨーロッパの比較から、接種率が低い方が、陽性件数が減少する、ということができる。これはヨーロッパと同じワクチンブランドを接種する全ての国、例えば、アメリカ、イスラエル、日本、オーストラリアなどにも当てはまる。


A4. ワクチン接種が増えると陽性件数が増える

下の図は、イギリス、アイルランド、スペイン、ポルトガルの陽性件数(青い折れ線グラフ)とワクチン接種回数(赤の折れ線グラフ)の複合グラフの行列である。

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これらの国では、1月中に陽性件数が減少し始める。この時期はワクチン接種を開始したばかりなので、外出禁止令などの効果が出ていると思われる。ワクチン接種回数はだんだん増えていくにつれて、陽性件数が低く抑えられていることがわかる。しかしイギリスは6月初めから、アイルランド、スペイン、ポルトガルでが6月末から、再び陽性件数が増加する。この時の増加はアイルランドを除いて7月末にピークになる。増加期間は4週間から8週間である。この間の平均増加率はイギリスが40%、ポルトガルが32%、スペインが64%である。6月のピーク時の陽性件数はイギリスで接種が本格化する前のピークの4分の3、スペインで5分の6、ポルトガルで4分の1と全て低くなっている。アイルランドはまだピークを迎えていない。暫定の増加率は21%、ピーク時の陽性件数は接種本格化前のピークの30%程度である。

再び陽性件数が増加している時は、ワクチン接種回数は減少傾向にある。イギリスの陽性件数が再び増加し始めた時の接種率は58%である。アイルランドも58%、スペインで55%、ポルトガルで47%である。ワクチンを接種していない人の方が数が少ないのであるから、これ以降の接種回数は減少し始めるのは当然である。

下の図はその他の西ヨーロッパの主要国の陽性件数(青い折れ線グラフ)とワクチン接種回数(赤の折れ線グラフ)の複合グラフの行列である。

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初期の頃減少したところもあるが、ワクチン接種開始1ヶ月も経つと全ての国で、接種回数の増加具合に比例して、陽性件数が増加していく。陽性件数は3月末から4月初め頃にピークに達し、それ以降減少傾向になるが、6月末から7月初めにかけて、再び陽性件数が上昇し始める。このときの接種率は全ての国で50%以上になっている。イギリスなどから1、2ヶ月遅れて、全く同じ展開をしている。

下の図は東ヨーロッパで、欧米系のワクチンのみを接種している国の陽性件数(青い折れ線グラフ)とワクチン接種回数(赤の折れ線グラフ)の複合グラフの行列である。

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グラフのパターンは西ヨーロッパとほぼ同じである。すなわち、ワクチン接種を開始して最初のうちは陽性件数が減少するが、遅くとも3ヶ月以内に陽性件数は増加に転じ、3月末から4月初め頃にピークに達する。ピーク時の接種率がは5%程度であることも同じである。陽性件数が再増加するのは6月と西よりも少し早い。そして今もなお陽性件数が増加中のところが多い。東の増加期間は西より長いが、平均増加率は西よりも少ない。また、接種本格化前のピークの20%未満であるところが多い。グラフの上ではポーランドやチェコは陽性件数が増加していないように見えるが、ピーク時があまりに大きかったせいである。ポーランドの平均増加率は15%、チェコは9%である。

下の図は東ヨーロッパで、中国ロシア系のワクチンも接種している国の陽性件数(青い折れ線グラフ)とワクチン接種回数(赤の折れ線グラフ)の複合グラフの行列である。

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これらの国々は、スプートニクを生産しているロシアを含めて、接種率が低い。ロシアですら8月27日時点で30%未満である。平均すると30%ほどで、西ヨーロッパの半分程度の水準である。接種をしない週もあり、赤い折れ線グラフの上下が激しいが、大まかには接種回数は毎週増加している。この状態では、西ヨーロッパの接種率3月頃と同じである。つまり、ワクチン接種回数が増えると、陽性件数が増える、という状態になっている。ロシアは接種率が20%を超えた7月から減少に転じたので、その他の国も、今は増加しているが、近いうちに減少に転じる可能性がある。ハンガリーやスロバキアなど接種率の高い国は、西ヨーロッパとほぼ同じ傾向になっている。

A5. 東ヨーロッパは東から西へ、西ヨーロッパは西から東へ感染の波が伝わる。

下のグラフはヨーロッパの6、7月に発生した陽性件数増加時の平均増加率と致死率である。A1節であげた致死率とは期間が少し違う。

euro-陽性数 inc

平均増加率は東ヨーロッパの方がやや低めである。西ヨーロッパでは、フェロー諸島など人口の少ない国地域で増加率が高い。一人二人の差でも率が大きく変わるからであろう。

euro-死者数

致死率は、西ヨーロッパの方が明らかに低い。致死率最大のイタリアでも0.54%にとどまる。また、この波が起こる以前の致死率と比べ、5分の1から15分の1に下がっている。東は、チェコ、アルバニア、エストニア、スロベニア以外は全て0.54以上になっている。また、この4国はこの波が起こる以前の致死率と比べ、5分の1から7分の1に下がっているが、それ以外は下がってはいるもののそう大きくはなく、ロシア、ベラルーシ、ウクライナでは致死率が上がっている。

おそらく、西ヨーロッパで東ヨーロッパで流行しているものは別物であろう。西はイギリスかスペインの変異株のさらに変異したもので、徐々に東へ進んでいる。東ヨーロッパはおそらく、中東か中央アジアでの変異株がロシアを通って、徐々に西へ進んでいくという形をとっているように見える。だから両者のぶつかるドイツやイタリアでは、致死率が西ヨーロッパよりは高く、東ヨーロッパよりは低いのではないだろうか


B. ワクチン接種開始してからの感染状況5段階

ワクチン接種開始後のヨーロッパの感染状況をまとめると、次のような段階を踏んでいる

1。ワクチン接種開始直後の陽性件数は接種開始前の傾向に沿う、つまり、接種開始前に減少傾向ならばそのまま減少する、増加していればそのまま増加する。

2。接種率が低いうちは、たとえ接種開始直後に減少していたとしても、陽性件数は増加傾向になる。一旦増加傾向になると、毎週のワクチン接種回数を増やしても、それに比例するように陽性件数が増える。この時の増加率は接種開始前よりも高くなることが多く、致死率も高くなる。

3。接種率が10から20%になると、陽性件数が減少に転じる。接種率が30から40%になると減少率が下がり、グラフが水平になる。

4。接種率が40から60%では、毎週のワクチン接種回数が増えなくなるかあるいは減少する。この時、陽性件数が再び増加傾向になる。ブースターなどを利用して接種回数を上げても、増える。この時の増加率は接種開始前や第2段階の増加率よりも低いことが多く、致死率も低くなる。増加率、あるいは、致死率が高い場合は、外来株によって引き起こされた陽性件数増加の可能性がある。

5。接種率が60%を超えたあたりで、第4段階での増加が止まる。ここから先はまだ不明だが、陽性件数が下がらないところと下がるところがある。


スペイン、ポルトガル、アイルランド、イギリスが第5段階にいると考えられる。データが少ないのでなんとも言えないが、完了率70%のスペインでは減少、73%のポルトガルは微減、62%のイギリスでは増加、66%のアイルランドでは微増となっているので、完了率が関係している可能性がある。イギリスではジョンソンを接種していないので、完了率が低いのだが、もしかしたら、ジョンソンのワクチン自体に今ヨーロッパで流行している株を抑える効果があるのかもしれない。

上記4国の他にオランダ、スウェーデンは第5段階にいると思われる。ドイツやフランスなど他の西ヨーロッパの国々、ポーランドやチェコなどの欧米系ワクチンしか接種していない東ヨーロッパの国は第4段階にっると考えられる。ハンガリー、スロバキア、セルビアも第4段階にいると思われるが、それ以外の東ヨーロッパは第1段階あるいは第2段階にいると思われる。

この感染状況5段階はヨーロッパのものを解析して得られたものであるが、おそらく、ワクチンを接種開始した国では、このような段階を踏むのではないだろうか。他地域の感染状況についてのさらなる分析が必要である。


日本は第4段階である。7月に過去最大の感染爆発が起こり今も続いている。致死率は低いが、増加率が非常に高いので、外来株である可能性が高い。日本では8月30日にデルタ株の変異したものが見つかったという報道があった(https://www.jiji.com/jc/article?k=2021083000595&g=soc)東京医科歯科大学は、感染者の渡航歴がないことから、この株が国内で変異したもである可能性があるとしていた。この患者がいつ感染したのかは不明であるが、オリンピックで日本は外国人入国者が多かったので、彼らと接触した可能性があり、国内で変異したものであるとの結論は早急すぎる。

韓国の中央日報は、この変種を早速「東京株」と名付けたが、6月に韓国に入国した者の一人がその株に感染していたと報道した(https://s.japanese.joins.com/jarticle/282452?servcode=400&sectcode=400)。この記事からも、デルタ株の変異したものが国内で変異したものである可能性は低い。


C. ワクチンがうまく働かない原理

さて、陽性件数が減少していくにつれ、接種回数が少なくなってくる。これは、多くの人が接種したために、新たに接種する対象が減ってしまったからである。そうなると今度は、陽性件数が増えだす。これは非常に興味深い結果である。ほとんどの人が少なくとも1回ワクチンを接種しているのに、なぜ、陽性患者が増えるのか。これは、ワクチンが効果を発揮していないことに他ならない。


第1の理由は、過去の投稿で繰り返し指摘しているが、接種率の上昇に伴う規制緩和、特に、ワクチン接種を完了した者は、マスクをする必要なく自由に行動できる、としたことが大きい。ワクチンをすればもう新型コロナに感染をしないと思っている人も多いと思うが、実は、ワクチン接種したものが感染しているケースがかなりある。アメリカでは新規陽性患者のうち70%がワクチン接種者であったという報道もあった。

厄介なのは、ワクチン接種をした者はそうでないものに比べ症状が軽いという点である。ワクチンを打ったから自分はかからないと勘違いしている人たちは、たとえ、ウイルスに感染したとしても、症状も軽いので、自ら検査をすることはしない。またワクチンパスポートなるものをチラつかせ、マスクをしたり、集近閉を避けるなどの予防行動をとることもしない。従って、新型コロナウイルスを抱えたまま、自由行動をする。そして、他人に感染させるという形になっている。だから、ワクチン接種率が増えると陽性件数が増えるのである。

第2の理由は1つのワクチンが全ての変異株にはき効かないということである。既存のワクチンは全て、開発された国で流行している株をもとに開発されている。例えば、アストラゼネカならイギリス由来のアルファ株あるいはその元となった株を使って開発されている。従って、原理的にアストラゼネカのワクチンはアルファ株にはとても効果がある。しかし、それ以外の株には効果があるかどうかは原理的にはわからない。

野球に例えてみると、ある速球投手の球がなかなか打てず、ほぼ完全抑えられていたとする。これがウイルスである。打者がいろいろな研究をして、練習をして、攻略方法を見つけて、なんとか打てるようになったとする。この攻略方法がワクチンである。投手の方は打たれ始めたので、さらに速い球を投げたり、変化球を開発したりと投球スタイルを変える。これが変異株である。そうなると、今までの攻略方法では打てなくなってしまう。これが、ワクチンは変異株には効果がなくなることの意味である。しかし、速い球を投げてたとしても、基本同じパターンなら、ある程度は打てるようにり、手も足も出ないということはなくなる。これが、ワクチンは変異株から起こるダメージを軽減することができるということである。

投球スタイルを変えた投手を打つには、より多くの練習が必要になってくる。この考え方がワクチンブースターである。彼が単に球速を速くしただけなら、その速さに対応すれば良いので、同じ練習をより多く行えば済むだろう。しかし、時には変化球の開発や投球の組み立て方を変更することもする。こうなれば、同じ練習を繰り返すだけでは、やはり打てないままので、速球とは異なった、変化球に対する新たな研究が必要になってくる。なので、ブースターは同じワクチンを3回以上打つよりも、別のワクチンを打った方が効果が上がると考えられる。


D. ワクチン接種率が上がると致死率が下がる

8月21日から27日の間に世界で2億7176万5968回のワクチン接種が行われ、総接種回数は51億8541万5707回となった。7月3日以降では20億2070万1832回と2ヶ月もたたないうちに20億回を超えた。今週のワクチン接種回数は先週よりも1785万3662回増えた。3週間ぶりに上昇した。

次のグラフは7月3日からのワクチン接種回数の上位50カ国である。

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D1. ワクチン接種率が上がると陽性件数は上がるが致死率は下がる

世界全体では8月21日から27日の間に少なくとも1回ワクチンを接種した人がおよそ1億人増えて、合計34億人となった。いくつかの国は接種人数を発表していないので、過去の数字をもとに類推した。接種率は43%を超えた。次のグラフは7月3日からのワクチン接種率上位50カ国である。ヨーロッパが27ヵ国と非常に多い。

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次のグラフは7月3日からのワクチン接種率上位50カ国の人口100万人あたりの1日平均の陽性件数である。23国で100人超えとなっている。逆に10人未満は9国しかなく、中国以外は過去に陽性患者を一人も出していないところばかりである。

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次のグラフは7月3日からのワクチン接種率上位50カ国の致死率である。致死率の世界平均は1.55%であるが、ウルグアイとチリ以外は全て平均より大幅に下回っている。ウルグアイとチリも、以前よりは致死率を下げている。

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このことから、ワクチンの摂取率を上げると、陽性件数は減ったり増えたりするが、確実に致死率は下がる、ということが期待できる。

次のグラフは7月3日からのワクチン接種率下位50カ国である。

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16国でワクチン未接種である。アフリカとカリブ海諸島の国地域が圧倒的に多い。

次のグラフは7月3日からのワクチン接種率下位50カ国の人口100万人あたりの1日平均の陽性件数である。仏領ギアナ、グアダルーペ、マルティニク、レユニオン、サンマルタン、サンバルテルミーのフランス海外領土が350人から1300人と高い数字を出している。同じフランス海外領土のマヨットやサンピエールミケロン、アフリカ南部のザンビア、レソト、マラウィ、モザンビークで20人以上と比較的多くなっている。それ以外はほぼ0である。接種率上位50カ国と対照的である。

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次のグラフは7月3日からのワクチン接種率下位50カ国の致死率である。陽性件数が0以外のところは軒並み世界平均の1.55%よりも高くなっている。こちらも接種率上位50カ国と対照的である。

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このことは、ワクチンの摂取率を上げると、陽性件数は減ったり増えたりするが、確実に致死率は下がる、ということを強化している。

D2. ワクチン接種が滞る国は陽性件数の少ない国が多い。

今週ワクチン接種が新たにに始まった国はなかった。ワクチン接種が実施されていない国は16のままである。そのうち2021年に入って陽性件数がいまだに0の国は北朝鮮、バチカン、西サハラ、マーシャル諸島の4国である。残りの12国では少なくとも1人の陽性件数があり、レウユニオン、マルティニク、グアドループでは7月3日から8月27日までで1万8000件から2万8000件の陽性数の報告があった。いずれもフランスの海外領土である。

先週2週間以上ワクチン接種が滞っている可能性があると指摘した23ヵ国のうち、アイスランド(221.9)、レソト(1.7)、ミャンマー(45.4)、ソマリア(4.2)、トンガ(0)の5カ国では接種が再開された。( )内の数字は最新の人口100万人あたりの1日平均の陽性件数である。しかし、次の15の国と地域ではワクチン接種が再開されなかった。

オランダ領カリブ海諸島(97.0)、フォークランド諸島(0)、ガーナ(18.5)、マダガスカル(0.1)、セントヘレナ(0)、シエラレオネ(0.3)、南スーダン(1.5)、クック諸島(0)、パラオ(15.7)、トルクメニスタン(0)、ツバル(0)、イエメン(1.2)、ナウル(0)、アルジェリア(11.3)、モナコ(205.8)

また次の7国でワクチン接種が止まったようだ。

ニウエ(0)、キリバス(0)、モンセラート(28.6)、マリ(0.5)、アフガニスタン(1.8)、ピトケアン(0)、ナイジェリア(3.2)

アフガニスタンで接種が止まったのはタリバーンのテロのせいであることは明らかである。情勢が落ち着けばすぐにワクチン接種が再開されるであろう、いつになるかは不明だが。また、当分の間は、陽性件数や死者数も正しく報告されなくなるであろう。

これらのワクチン接種が止まっている22ヵ国のうち、クック諸島など8の国地域で、2021年7月3日以降の陽性件数が0である。また、マダガスカルなど11国では人口100万人あたりの陽性件数が30人未満である。こういってはなんだが、急いでクチンを接種する必要がなのではないか。モナコはヨーロッパを襲う感染の波の飲まれて、人口100万人あたりの陽性件数が2105人と高くなっているが、ワクチン接種率は61%とかなり高く、人口も少ないので接種希望者がいなかったのではないかと考えられる。

オランダ領カリブ海諸島では7月に始まった感染の波が収束に向かっている。百人以上の陽性患者を出したが、死者数は0である。ワクチン接種率は推定20%とそれほど高くはないが、ワクチン接種よりも、陽性患者を死なせない治療を選んだ結果ではないか。

D3. 二つの新しいワクチンが投入された

最新のワクチンブランド別勢力は次の通りである。黒い数字が先週までの使用国数、赤い数字が今週使用を開始(したことが判明)した国の数である。

ワクチン jk-ブランド別

今週は15国でワクチンの追加があった。日本ではアストラゼネカの接種が始まった。今週の人気はファイザーで、新たに6ヵ国で供給開始された。また、イランでは「コブイラン」、台湾では「メディガン」というそれぞれ自国製のワクチンの接種を開始した。これで現在接種されているワクチンの種類は19種類になった。欧米系のワクチンは4種類(ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソン)しか供給されていないので、5種類以上を接種している国は必ず中国系或いはロシア系を接種している事になる。

次のグラフは接種ワクチンの種類数の分布である。

ワクチン jk-種類別

7種類接種している国は3国でそのままであるが、6種類接種している国が6国に、5種類が12カ国に、4種類も50カ国に増えた。平均すると1つの国は2.26種類のワクチンを接種している。

次のグラフはワクチンを4種類以上接種する国の接種率である。4種類接種の国は多いので、4種類目を接種した日の早い国のみを掲載した。

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ワクチンの種類が多いからといって、接種率が必ずしも高くなるわけではない。ここから先は私見であるが、ワクチンの種類を多くするのは、1つまたは2つのワクチンでは供給がすぐに止まってしまうからではないかと思う。ワクチン接種が止まったと思われる国はほとんどが2種類以下のワクチンしか接種していない。このようなリスクを避けるために、第3、第4のワクチンを導入するのではないか。

終わりに

ワクチンは国レベルで致死率を下げる可能性がある。個人レベルにすれば、症状が軽減されることが期待できる。しかし、ワクチン接種をしたからといって、新型コロナにかからないわけではない。むしろ、ワクチンを接種したから自分はもう大丈夫と勘違いしている人たちが多く、このような人たちは、マスクもせず、集近閉も避けることもしない。また周りの人たちにも、同じことを強制する。症状が軽くなっているので、かかっていても気づかない、ワクチン接種しているので、検査もしないとなれば、ここから感染拡大する可能性が高い。まるで、ワクチン暴力団である。アメリカでは、6月末に、ワクチン完了者は公共の場でマスクをしなくても良いという規制緩和をしたが、すぐに撤回して、積極的にマスクをするように進めている。

ニューヨークではワクチンパスポートを作って、それを所持していないものはレストランでの食事やジムの利用を拒否されている。そんなことをしても陽性件数は一向に減らない。アメリカでは多い時には1日20万人の陽性患者が出ており、日に日に増えている(アメリカでは週末の陽性件数は時に2万人台に落ちる。これは、無料の検査施設が平日3日(だいたい火水木)しか開いていないから、その時に検査が集中するからである)。また、ワクチンパスポートは健康上の理由でワクチンが接種できない人たちに対しての差別にもあたる。日本でも導入を考えているらしいが、ワクチン暴力団をのさばらせるだけである。やめたほうがいい。




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