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色の消えた景色の向こう側に


「なんかこの2日間すごい生きてるって感じがした」

ライブ後のぼんやりとした余韻に包まれた会話の中で友人が言った。ああなんか今を表すのにぴったりな言葉だな、そう思い静かに頷いた。


5月6日。アリーナツアーが発表されたその日からずっと待ち望んでいた2日間はあっという間に過ぎ去っていった。雨模様の暗い空を忘れさせ、自分たちの色に染めていくような彼らの姿は、眩しいほどに美しく、そして1年前に見た時よりも、より強く逞しかった。


息が詰まるほどに苦しい心を騙し
何一つ言えない自分は素直じゃない
一人で閉じ込められた灰色の弱さを
変えてくれたのは———

彼らに出会ってからもう2年以上の月日が経った。
いつの間にか自分の毎日に11人がいないなんてことは考えられなくなって。365日の間で直接その姿を見られるのは片手で数えられるくらいの回数かもしれないけれど、それでもその存在は特別なんだ。

「闇」はここに置いていこうって。今日という日を忘れず明日からも頑張ろう、俺らも頑張るよって。

11人がくれる真っ直ぐな優しさは、彼らがどんどん大きくなって、どんどん前へ進んでいっている今も、初めて逢えた日から変わらない。デビューしてからずっと、先の見えない暗闇の中にいた彼らだからこそ、その会場にいる一人ひとりの毎日を想って、逢えない日の分の辛いことも、寂しいことも、苦しいことも、埋めようとしてくれる言葉が自然と紡がれるのだろう。

OTDの時配信で見た彼らの姿は時折、触れたら消えてしまうんじゃないか、瞬きしたら次に目を開けた時にはいなくなっているんじゃないか、そう思わざるを得ないくらい儚く感じる時があった。きっと彼らにとってもJAMとこの空間を共にできることはあまりにも非日常で、手を離してしまったらもう戻ってこないかもしれないと思うような時間だったのだと思う。でもね、今は笑顔で「またね」「次も逢おうね」って約束することができるんだ。嬉しいね。

自分の手の中の光が彼らの瞳に映る美しいペンライトの海の一部になっている。その事実を実感できることが11人を応援するわたしの何よりの幸せだよ。


たとえ見える景色が灰色になってしまう時があっても、彼らがその上から鮮やかな色を重ねてくれる。

春の柔らかな陽の光が日増しに強くなりはじめた頃、わたしは自分に打ち付ける雨に気付けないような時期があった。当たり前のように来る翌日のために台所に立ちながら涙を流した時期があった。テレビもつけず音のしない部屋で一人何もできない時期があった。

それでもそんな日を乗り越えたくて、どうにか前を向きたくて、頑張ることができたのは待ち続ける2日間の存在があったから。夏の暑さも降り注ぐ雨もわかるようになって、色のない景色から少しずつ空を見上げた時に感じるその綺麗さを思い出せるようになって。そして、約1年ぶりに逢えた彼らが11の色を自分の見ている世界に塗り重ねてくれた。

夜が明けたら、色の消えた景色の向こう側を見ようと顔を上げたら、会いにきてくれた彼らは「gradation」の歌詞をまるでそのまま写し出したかのようで。


11人が笑顔で公演を終えられるようになった今も、そしてこれからも、わたしはきっと日を増すごとに強く、美しくなる彼らの姿を見て泣いてしまうんだろうな。そんな自分を、ああわたしってこんなに涙脆いんだっけか、なんてこの先も笑えたら良いな。


大切で、大好きな11人へ。
今日はなんだか涼しい風が吹いています。
また逢いにいくね。ありがとう。

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