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ギャンブルは 嘘つきの始まりか

この画像は、全身油にまみれた海鵜である。なぜ私が一目でこの鳥を海鵜と断定できるのか? それには理由がある。見覚えがあるのだ。

この写真は湾岸戦争勃発の年、「イラクが海に原油を流して逃亡した」として流布された物であった。しかしながらイラクが原油を流したなど真っ赤な嘘で、この海鵜を汚染したのはタンカーの事故で流出したオイルであることが明らかになっている。私はこれまで頭の片隅で、オイルまみれの海鵜を嘘つきのエビデンスとして記憶していたのである。

新聞の紙面には海鵜の姿と共に、一面に大きな見出しで「嘘つきは、戦争の始まり」と書かれてあった。(以下、2019年1月7日朝日新聞掲載宝島社のコピーより引用)

嘘つきは、戦争の始まり
「イラクが油田の油を海に流した」
その証拠とされ、湾岸戦争本格化のきっかけとなった一枚の写真。しかしその真偽はいまだ定かではない。
ポーランド侵攻もトンキン湾事件も、嘘から始まったと言われている。
陰謀も隠蔽も暗殺も、つまりは、嘘。そして今、多くの指導者たちが平然と嘘をついている。この負の連鎖はきっと私たちをとんでもない場所へ連れてゆく。
今、人類が戦うべき相手は、原発よりウィルスより温暖化より、嘘である。嘘に慣れるな、嘘を止めろ、今年、嘘をやっつけろ。

なるほど。おっしゃるとおりだ。コロナ禍の今、このコピーの重さがズシリと感じられる。スッキリした。

ギャンブルは嘘つきの始まり?

だが、ふと我に返って考えてみると、この私も、れっきとした嘘つきだった。しかも常習的な嘘つきだった。今日はギャンブルとウソについて書いてみたい。

私は何でもかんでもギャンブルを批判して、賭博こそがウソの根源と決めつけるつもりはない。だが少なくとも私にとって、ギャンブルは嘘つきへの道であり始まりだった。しかもギャンブルに依存すると、どうしてもウソをつき続けねばならなくなってしまうのである。

賭けをすればわかるが、ウソをつく理由など山のように存在する。しかも具合の悪いことに、ギャンブラーはとかく見栄を張りたがる。ギャンブルすると、ウソをついてしまいがちなのだ。もしもこの記事をお読みのあなたがギャンブラーなら、少なくとも1度や2度は、そういった経験をされたことがお有りだろう。

問題の無いギャンブラーならば、ウソをついたところでせいぜいジョーク程度だ。負けたのに勝ったと胸を張るのは、ギャンブラーならではの寂しいながらも滑稽なウソである。

だが依存すると、そのウソも冗談で済まなくなってくる。なぜなら、常習的にウソをつかねばならなくなってしまう理由が出現するからだ。

ウソをつかねばならない理由

依存症ギャンブラーが常習的な嘘つきになってしまうのには、もっと大きな理由が存在する。

・遊戯資金を得るため
・負けたことを隠すため
・惨めな気分にならないため
・バクチする口実を探すため
・遊戯する時間を得るため…

先ほど私は、「ギャンブルに依存すると、どうしてもウソをつき続けねばならなくなってしまう」と書いた。これは私も経験してきたことであり事実である。

特に「ギャンブルし続けるために必要な金と時間」を確保するには、ウソをつくことを避けて通れない。だからこそギャンブル依存症とは、ウソをつき続ける心の病気でもあるのだ。

考えてみれば、ウソをつかなくても良い状況を実現するためには、ギャンブルをやめるしかない。逆にいえば、ギャンブルをやらなければウソをつく必要が無くなる。というか、これは極論としても著しくその機会が減るわけだ。

そしてウソをつくことが無くなっていけば、堕落から抜けだし社会復帰できるようになっていくのである。つまりギャンブルするにせよしないにせよ、健全な生活と精神を取り戻すためには、ウソをつかねばならない理由を無くせば良いのではないだろうか?

ギャンブルは、勝ったときと負けたときの精神的ギャップが大きい遊戯である。また、その落差が大きければ大きいほど熱狂してしまう。

自分の生活に満足できず、つい他人と見比べてしまうのは、他人と自分とのギャップに興味が集中している証である。スマホの中を見ればSNSはデコされた画像で溢れているし、メディアはひっきりなしにCMを流し、「あなたは、その程度でいいの?」とあおりかけてくる。

そういった甘い言葉や誘惑や虚像が溢れる現代社会で、自分自身をしっかりと見つめ続けることは、なかなか大変なことだ。なぜなら比較という物が、少々のことでは解けない魔法だからである。これからの時代は、今以上に心のデトックスが必要になっていくだろう。

ここで話を戻すが、比較の呪文から逃れることは、嘘つきを無くす一つの道筋ではないだろうか。勝手に結論づけてしまって申し訳ないが、私は嘘つきの根本的な原因は歪な価値観から生じる比較ではないかと感じるのである。(奥井 隆)


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