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パチンコ店の自己申告・家族申告プログラムは機能するのか

近頃、パチンコ店の内容を調べていると目にすることが多くなったのが、「自己申告・家族申告プログラム参加店」という表示である。

これは「パチンコ・パチスロ産業21世紀会」というパチンコ業界全体で運営している団体が、「パチンコ・パチスロへの依存問題に対する啓発・予防等の取り組みの一環として」設けている制度である。

概要をひとことで言えば、「本人や家族の申告によって、遊戯しすぎないよう手助けを行う制度」である。

今回はこの制度の概要と、効果について書いてみたい。

制度の概要

この制度は以下の6つのプログラムから構成されている。(以下、「パチンコ・パチスロ産業21世紀会 自己申告プログラムおよび家族申告プログラム導入マニュアル」から引用抜粋)

https://jikoshinkoku.jp/_bosys/wp-content/uploads/2020/04/832250c2e470df15dffce4d0c99b1afe.pdf

1 自己申告プログラム(①上限金額)
2 自己申告プログラム(②上限回数)
3 自己申告プログラム(③上限時間)
4 自己申告プログラム(④入店制限)
5 家族申告プログラム(⑤入店制限 同意書あり)
6 家族申告プログラム(⑥入店制限 同意書なし)

プログラム自体を最初から本人と家族に分け、制限項目を「上限金額・上限回数・上限時間・入店制限」の4項目にしてある。

いちいち説明しなくてもご存知と思うが、「使う金額」「行く頻度」「遊戯時間」「そもそもの出禁」についてパチンコ店側が制限を手助けするということである。

ここで早速、「こんな制度なんか、まやかしだろう。あの業界が真剣にそんなことに取り組むわけがない」とおっしゃるあなた。何でもかんでも批判だけして内容を見ないというのも、もったいない話である。

少なくとも、「やらないよりは数段マシ」ではないだろうか? 姑息であれ何であれ、この業界が依存症ギャンブラーのために導入した制度である。一定の評価は必要と思う。

この制度のメリット

まずこの制度を利用するためには、自己申告プログラム申込書というものに住所氏名と顔写真を添え各店舗で申し込む必要がある。ちなみに顔写真については、店舗で店員が撮影してくれるそうである。

「個人情報を晒して顔写真まで撮影されて、誰が申し込むというのか!?」という素朴な疑問も湧くが、仮に申し込んだとするならば本人がその店舗に行きにくくなるのは間違いないだろう。

これは心情的に考えても、ある程度の効果は見込めるかもしれない。ここでまた、「そこまで実行力がある人なら、もっと早くに他の方法でなんとかしているだろう!」という突っ込みがあるだろうけれど、まあ「自己啓発の一歩」と考えるならば、評価できるかもしれない。

この制度のデメリットはない

次にこの制度のデメリットということになるのだろうけれど、実際はデメリットなど存在しない。ということは、「この制度がある事自体で生じるマイナスなどない」ということになる。

だがここで問題になるのは、機能するかどうかと問われたときに、あまりにも多くのバグが存在することである。

例えば、自己申告プログラムの上限金額についてであるが、当初私はどうやって管理できるのか疑念を持っていた。どうやら貯玉カードを使って本人を照合し、閉店後に遊戯金額(摩った額)を特定して次回の来店時に「お客様へのお声がけにて、注意を促す」ということらしい。

こういった方法がうまく機能するかどうかについては、あなた自身で判断されれば良いと思うが、遊戯時間についても来店回数についても同様の「お声がけ」で対応するということである。

また「出禁」については、「次回の来店時に、店員が気づけば「発見時に退店のお声かけ」となる

ここまで見た段階ですでに噴飯ものだが、先程も書いたように「やらないよりはマシ」であり「この制度自体にデメリットなどない」のである。

この制度が依存撲滅にコミットしない理由

まず一番に問題なのが、「この制度自体に強制力が存在しない」ということである。つまり客は注意されようが「お声がけ」されようがそれを無視して打ち続けることが可能である。

これは家族側のプログラムでも同じで、法的な拘束力もない。今でいう飲食店への営業自粛と時短要請と同じである。「注意はしましたが、お客さんが帰りませんので…」でチョンになってしまう。

それと同時に、この制度は「プログラムの導入店」でしか利用できない。しかも私が見る限りにおいて、一番依存症ギャンブラーにとってチクリとくる「家族申告の入店制限」まで導入している店舗は少ない。

家族側からの申請書に本人の顔写真と本人の同意書が必要というのも、限りなくぬるま湯の世界である。

ということで結論としては、「利用するならば利用すれば良い。でも効果については?ですよ」ということである。

そもそもこういった制度を業界内で作らせるよりも、政府が主導してマイナンバーカードを使ったギャンブル遊戯金額の総量規制をすればそれで全てが上手くいく

だがそんなことをすれば、あの業界に流れ込む金が激減するので、こういった付け焼き刃の制度を作ったのだろう。

ギャンブル依存症に関しては、当面は我々依存症ギャンブラーが自ら方法を考え克服を目指すしか方法yがないと思われる。こういった状況が変わることを心から願う。(奥井 隆)


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