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都心が無くなる日

「COVID-19は、我々日本人の生き方を大きく変えた」

そう断言しても異論を唱える人など、既にいないだろう。そこまで、今回の新型コロナウイルスは、我々日本人の生活様式を変えたのである。いや! 生活その物さえ大きく変えたといっても、決して過言では無いだろう。

今日は、「都心の消滅」という、一部の人たちにとってかなりセンセーショナルなことについて書いてみたいと思う。

これまで都心が必要だった理由

これまで日本で都心というか都会は、どういった役割を担ってきたのだろうか? まず一番に思い浮かぶのは、都心にひしめき合っているオフイスの存在である。

上場企業ともなれば、都心、それも東京の一等地にオフイスを構えるというのが、これまでの習わしだった。そういったブランド化が企業のイメージアップにつながっていたというのは、紛れもない事実だろう。

次に考えられるのは、都心に集中する繁華街や文化施設の存在である。行政の中核も、その殆どは都心に存在する。

だが仮に、今後繁華街やオフイス・文化施設など、いずれかの要素が地方に分散し始めたらどうなるだろうか? いや、別の言い方をすれば、地方に分散させざるを得ない事態に直面したらどうなるか? それが、まさに今回のコロナ禍である。

なぜ、都心までが淘汰されるのか

これまで日本では都心が学術文化、そして行政の中心的な存在として存在していた。しかしながら、どうやら今回のコロナ禍で、都心の存在自体が脅かされそうな雰囲気である。

その理由についてだが、都心その物につきまとう脆弱性がある。例えばそれは、家賃の高さだったり通勤ラッシュだったり、密を避けられない生活事情だったりする。タワマンが一つ出来ただけで、駅がパニック状態になり改札を抜けるのに一苦労といった話もちょくちょく聞く。

今現在、40年以上生きて居られる方なら痛感しておられると思うが、現代社会は非情である。いかに都心であろうと、その存在理由が無くなれば淘汰されるのが、今の社会だと言えよう。

都心はノスタルジーの彼方に消えるのか

それでは今後、都心は消滅し新たなサテライト都市が生まれていくのだろうか? そう考えたとき、私はいくつかの仮説を立てることができた。それは、新たな生活空間の創造と産業別人口の構成比が変わっていくということである。

こんなことなど小学生でも知っていると思うが、都心における主要産業は第3次産業である。産業を分類すると、「第1次産業 第2次産業 第3次産業」となるわけだが、サービスのみ提供して物を生産しないのは第3次産業だけである。

つまり都心とは、「物を生産せず、サービスを提供する目的で成り立っている地域」ともいえる。ハッキリと言うが、今後一番に淘汰されていく可能性が高い産業はサービス業である。

自分自身が都心に行く理由を考えてみた。仕事のことはさておき、都会の繁華街・飲食店街の存在やデパートなど購買施設の多さや豊富な品揃えなど、主に嗜好にまつわる目的が多かった。それらのことを簡単にひとことで言うと、「充実したサービス」といえる。

だがそういったサービスが、都心に行かなくても受けられるようになったとしたら? おそらくだが、都心が持つ価値は半減するだろう。そして今、まさにそういった現象が起きつつあるのだ。

このままいくと、「都会・都心」は我々の過去の産物となって消え失せてしまうかも知れないのである。

ウイルスのセカンドミッションは「散れ!」かもしれない

今後、都心に代わっていくつかの機能を担う都市が出てくるのは間違いないことだろう。生産性と流通を考えた場合、都市への運搬は大きな負担となり縮小していくことも考えられる。

今、何らかの方法で淘汰され、自らの生き方を変えることが、人類が地球に生存し続けるための唯一の方法といえるのかも知れない。

COVID-19が我々に、「減れ!」と同様に、「散れ!」と呼びかけているようにも聞こえる。

都心の存在感が薄れつつあると考えるのは、私だけだろうか。(奥井 隆)

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