マリア・テレジア一家の12月
今回は、トップ画像にも使用したこちらの絵画の話をします。
(荒い画像で申し訳ありません)
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こちらは 最近まで「女帝マリア・テレジア一家が"聖ニコラウスの日"を祝う様子を描いた絵」と言われていました。
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ざっと解説すると
中央・青いドレスのお母さんがマリア・テレジア。
その右隣、暖炉の前でくつろいでいるのが女帝の夫フランツ1世。
そして女帝の左隣、お人形を手にニッコリしているのが後のフランス王妃マリー・アントワネットちゃん。
(嫁入り前の呼び名はマリア・アントーニアですが、ここでは分かりやすくフランス語読みのマリー・アントワネットで話を進めます)
テーブルの下でお菓子を食べている(!)のは、アントワネットちゃんの弟マクシミリアンくん。
左端、ピンクのドレスを着て謎の束を手にしているのが、アントワネットちゃんの姉、マリア・クリスティーナさん。
その前で涙を拭っているように見えるのは、アントワネットちゃんのすぐ上の兄、フェルディナントくん。
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と言うか、そもそも"聖ニコラウスの日"って何ぞやって話なんですが…
これはドイツやオーストリア、その他ハプスブルク家の影響を受けていた各国で行われる祝祭のこと。
12月6日の朝、良い子には靴の中に聖ニコラウスからの贈り物が入っていて、
悪い子はクランプスと言う化け物に鞭で叩かれる…というのが大まかな内容らしいです。
(その土地によって少しずつ異なるようです。皆さまご存知のお祝い方法を教えて頂けると嬉しいです)
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絵画の方に話を戻すと、
良い子だったアントワネットちゃんと弟マクシミリアンくんには聖ニコラウスからの贈り物が届き、
悪い子だったと推定されるフェルディナントくんの靴の中には、クランプスが悪い子を叩くのに使う白樺の枝(マリア・クリスティーナが持っている束)が入っていたので 涙している…という訳ですね。
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これを知って、初め
「へえ〜マリア・テレジアも庶民と同じように聖ニコラウスの日を祝っていたんだ」
と意外に思いました。
ところが、その後驚きの説が発覚。
オーストリアの歴史遺産等を管理する団体が運営するWebサイト'Die Welt der Habsburger '(英: The World of the Habsburgs )によると…
これは元ネタがオランダの風俗画(=庶民の日常を描いた絵)で、女帝ファミリーの実生活とは何の関係も無いということが、最近の研究で判明したそうです。
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実はこの絵を描いたのは、マリア・テレジア長男の最初の妻、マリア・イザベラ。
父方・母方の祖父が共に国王という、要するにやんごとなきお生まれの女性です。
そんな高貴なご身分の彼女が、当時流行っていた啓蒙主義に乗っかり「庶民ごっこ」みたいなノリで生み出した作品と言われています。
確かに、いくら倹約家が多いハプスブルク家と言えど 家具とか食器とかがあまりにも簡素な気が…↓
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実際のところ、政務で忙しかったと思われる女帝マリア・テレジア。この時期の家族サービスはどうしていたのでしょうかね?
ぼんやり疑問が浮かんできた所で、今回はお終いです。
ご覧下さり、ありがとうございました。
参考
・The World of Habsburgs
《 The Feast of St Nicholas 》
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