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2022年シアトル・マリナーズ全選手感想文【投手編】

2022年のシアトル・マリナーズは21年ぶりにプレーオフ進出を果たし、「北米4大スポーツで最もプレーオフから遠ざかっているチーム」という不名誉な称号をついに捨てることができた。今回はそんなシアトルの歴史に残るであろうチームでプレーした全選手の感想を書いていくだけの記事である。

打者編↓

Brennan Bernardino ブレナン・バーナーディーノ

メキシカンリーグからMLB昇格まで駆け上がった2022年。AAAで好投も、MLBデビュー戦が敵地でのアストロズ戦同点で迎えたタイブレークだったのはさすがに不憫だった。

Ryan Borucki ライアン・ボラッキ

まともな左のリリーフがいなかったため、ブルージェイズからDFA後にトレードで獲得。ボールがさらに速いミセビッチという印象で、物凄く安定感があったわけでもないが一時期のブルペンで活躍の場面は多かった。8月のヤンキース戦で負傷降板し、そのまま特にアップデートもなくシーズンが終わった。

Matthew Boyd マシュー・ボイド

シアトル出身、子供の頃はマリナーズファンの少年がTDLでジャイアンツからトレードでやってきた。昨年からの怪我の影響で今季初登板はロースター拡大後の9月だったが、複数イニング投げられる左のリリーフとして役割を果たしてくれた。チームが21年ぶりにPS進出を決めた際のシャンパンファイトでのインタビューは、マリナーズファンの気持ちを代弁したような内容で泣ける。

Matt Brash マット・ブラッシュ

2020年にタイ・フランスらとは別のトレードでしれっとパドレスから強奪貰ってきた右腕。変化球がピンポン球のように曲がる、いやほんとに冗談抜きで。

今季はSTで好投し、開幕先発5番手でスタート。しかしなかなかボールを制御できず、カービーと入れ替わりでマイナーへ。先発調整を続けるかと思いきや、カービーが想像以上に良かったことも影響してか、降格後にチームはブラッシュのブルペン起用を決断。この判断は結果的にチームを救う結果となり、ブルペン転向後は34試合で防御率2.35。短いイニングでは敵無しで、絶対に三振が欲しいピンチを中心に主にピボットロールで活躍した。将来的には先発に戻したいらしいが、来季もブルペンで開幕予定。

Diego Castillo ディエゴ・カスティーヨ


昨年レイズからやってきたスライダーモンスター。今季は5月に3試合で3アウト取る間に9失点の大乱調があったが、以降は復調。大乱調の直後のメッツ戦9回サヨナラの大ピンチで投入して、調子を取り戻させたサービス采配は度胸が座り過ぎている。

ただ、例年以上にコントロールが荒れ気味で、投げてみないと調子がわからない怖さが1年を通してあった。僅差のゲームで使うには少し不安。幸いチームには他に勝ち試合を任せられる存在が数多くいるため、ビハインドなどの場面でもディエゴクラスのピッチャーを使えるのは贅沢な話ではあるのだが。

Luis Castillo ルイス・カスティーヨ

トレードデッドラインでレッズから加入したエース。116 Winsがオフの欲しい選手リストに入れていたのがついに実現した格好に。マーテやアローヨといったトッププロスペクトを手放す豪華なパッケージは球界を騒然とさせたが、それだけマリナーズとしても今季プレーオフに絶対に行きたい強い意思があったと思われる。プレーオフを逃し続けた20年分の想いを背負うことになったが、見事に高い期待に応えてくれた。

最速100mphの速球を高めに投げ込んで空振りを量産したと思えば、これまた一級品のスライダーやチェンジアップで打者を翻弄させる姿は芸術そのもの。King Felix以来の刺激的な投手かもしれない。プレーオフでもWC第1戦は8回途中無失点、DS第1戦もアストロズ相手にQSと大舞台でも結果を残した点は今後に向けても心強い。来季オフにFA予定だったが、5年総額$108MMの契約延長も結び、しばらくはマリナーズのエースとして活躍してくれるだろう。

Roenis Elias ロエニス・エリアス

なぜかマリナーズでしか活躍できない左腕が久々に帰ってきた。レイがワクチン未接種のため、カナダに入国できなかった際に代替選手として昇格。タコマではそれなりの活躍を見せていたので、左のリリーフ枠として期待したが、残念ながらそもそもチャンス自体も少なかった。

Matthew Festa マシュー・フェスタ

トミージョン手術とDFAから這い上がってきたリリーフ。今季開幕から特例で28人ロースターに登録できたため、そこでチャンスを掴み取った。

19年以前のフェスタは90mph前半のボールを投げる平凡なリリーフという印象だったが、今季は改良したスライダーが大きな武器に。序盤は奪三振も被HRも多い何とも評価に困るピッチングだったが、中盤以降は被HRも減らして次第に安定してきた。試合中盤を中心に、チームが必要としたあらゆる場面でマウンドに上がる使い勝手の良い投手という側面もあり、ブルペンでは結構大事な存在だったと思う。オプションが切れていることから来季の立ち位置はやや怪しく、場合によってはトレードに含まれる可能性もありそう。

Chris Flexen クリス・フレクセン

韓国から逆輸入し、昨年は成績面でチームのエース級の活躍。Tモバイルパーク最強投手の異名を勝手に個人的に付けている。

今季は昨年ほどのコマンドがなかったせいかランナーを抱える場面が目立ち、また抑えたとしても味方の援護に恵まれない何とも不運な印象が強い。シーズンの防御率3.73は決して悪くはないのだが、カスティーヨの加入と同時にローテーションから外されてしまったのも不憫極まりない。ただそれでも不満を漏らさず、ブルペンでも自らの役割を全うし、8/30のタイガース戦では2年間の合計イニング数が300を超え、来季$8MMのオプションが発動した。この時チームメイト全員からベンチで祝福されるなど、その貢献もみんなから認められているよう。トレードデッドラインでフレクセン獲得を目論むチームがいくつかあったらしく、来季のローテーションも既に埋まっていることからトレードの可能性あり。

Logan Gilbert ローガン・ギルバート

2018年ドラフト1巡目指名のエース候補。昨年MLBデビューも変化球の精度がまだイマイチなせいか速球と変化球が見極められやすく、打ち込まれる試合が目立った。

昨年の反省を踏まえ、今季はオフに変化球のスピードアップに成功。これが功を奏し、4月は防御率0.40と驚異的な成績を残し、AL月間最優秀投手にも選ばれる順調な滑り出し。8月に少し疲れを感じる時期もあったが、この月を除けば毎月防御率3点台以下とシーズンを通して最も安定していた先発といえるだろう。また、これまでは試合中に感情を出すことが少なかったが、今季は彼の投球時の第二人格「ウォルター」が時折見せる気迫溢れるピッチングにも痺れた。来季以降もローテを支える存在になってほしい。

Ken Giles ケン・ジャイルズ

2020年オフに2年契約。この時点でトミージョン手術からのリハビリで2021年の全休は決まっていたため、実質今年活躍してもらうために獲得した右腕だが、開幕直前に指の怪我で離脱。6月に復帰もわずか5試合の登板で今度は肩を痛め、またも離脱。復帰目前に結局ブルペンに入れる枠がなく、DFAとなった。ケン、お前と戦いたかったよ…

Marco Gonzales マルコ・ゴンザレス

ハニガーと並んでチームの再建開始前から在籍する技巧派左腕。

先発陣が強化されたため、今季は4-5番手的な立ち位置。183回を投げて防御率4.13なら、イニングイーターとして悪くないと感じつつも、FIPや打球関連の指標は軒並みMLBワーストレベルで、かつてほど見ていて安心できる先発ではなかった印象。プレーオフでもタクシースクワッドでの待機となり、登板することもなかった。ただ、先発のイニング数がどんどん減りつつある現代野球において、マルコのようにイニングを食いつつ、チームに勝つチャンスを与えるピッチャーはシーズンでは不可欠。来季は防御率3点台で1年間を回したい。

George Kirby ジョージ・カービー

2019年ドラフト1巡目指名の右腕。大学時代からコマンドの良さが高い評価を受けていたが、プロ入り後に球速も大幅に伸ばしたことで将来のエース候補と呼ばれるほどに。

不調のブラッシュと入れ替わりで5月にローテ入り。デビュー戦はチームが6連敗中で、しかも昨年100勝を挙げたレイズが相手だったが、全く動じずに6回無失点7K無四球と前評判に違わぬ投球を披露。その後少しMLBの壁に当たるような登板が続いたが、レイから教えてもらったツーシームを早々にマスターしたことで投球の幅が広がり、一段上の選手への成長も見せる。1年目から防御率3.39は立派すぎるのよ。プレーオフではWC2戦目で最大7点差をひっくり返した直後に1点リードを守り切る好リリーフでセーブを挙げたり、負けたら終わりのDS第3戦ではアストロズ相手に7回無失点の快投を見せたりと、大舞台で力を発揮できることも証明した。

Matt Koch マット・クック

元ヤクルト。ロモが開幕早々故障離脱した際にMLBへ。シーウォルドのコロナ感染などもあってブルペンが苦しかったので、タイブレークで登板してゼロに抑えることもあった。意外と良いボールも投げていたが、4月下旬のレイズ戦リリーフで4失点してお役御免。

Wyatt Mills ワイアット・ミルズ

変則型の右腕。意外とボールも速いので、かつてのブランドン・リーグみたいなピッチャーになれたら良かったのだが、特にそのフォームに打者が惑わされることもなく。サンタナを獲得する際にロイヤルズへトレードとなった。

Tommy Milone トミー・ミローン

現在のチームの再建初年度である2019年にバルクとしてそれなりの試合数投げた左腕。コンテンダーとなってもミローンにお世話になるとは思わなかった。リーグの平均球速が94mphに迫ろうかという時代に平均86mph台で生き残っているのはお見事。ダブルヘッダーのバルクやロングリリーフで奮闘したが、7/29のアストロズ戦1回4失点でついに見切りを付けられてしまった。

Anthony Misiewicz アンソニー・ミセビッチ

左投げであること以外の強みがあまり多くはないリリーフ。それでもブルペン唯一の左腕であったため、サービス監督から重宝はされるが、5月打たれまくったことでついにマイナー降格、7月末のDFA後にロイヤルズへトレードとなる。

Andres Munoz アンドレス・ムニョス

2020年途中にパドレスからフランスらと一緒に移籍。当時はトミージョン手術からのリハビリ中であったため、ようやく今年がマリナーズで送る初めてのフルシーズンとなった。

ムニョスといえば最速103mphの速球が特に目立つが、マリナーズの分析スタッフは彼のスライダーの良さを見出し、今季はスライダーを軸とした投球スタイルに。シーズン途中に緩いスライダーを速いスライダーに変えてからはほぼ敵無しの状態だった。対戦した4割近くのバッターを三振に斬るのはそれもうやってることエドウィン・ディアスなんよ。開幕前に超格安契約延長に応じてくれたが、もしかしたらこの契約は大バーゲンになるかもしれない。

Penn Murfee ペン・マーフィー

ギルバートとローリーのドラフト同期も、こちらは33巡目指名からの大出世。プレミア12のアメリカ代表としてプレーしていたのを覚えている方もいるかもしれない。

今季64試合で防御率2.99と様々な場面で重宝したマーフィーだが、意外にも今季初昇格はシーウォルドがコロナに感染した際の代替選手としてであり、この時は登板機会もないままマイナー落ち。ただ、降格から1日も経たずに再度呼び戻され、以降ブルペンに欠かせない存在にまで登り詰めたのだから凄い。あまりに急な再昇格だったため、荷物だけAAAの遠征先であるラスベガスに送られてしまい、手ぶらで戻ってきたらしい。

Riley O'Brien ライリー・オブライエン

完全なるデプス要員としてシーズン序盤にレッズから獲得。実はシアトル近郊出身の地元っ子だとか。MLBではほぼ出番はなかった。AAAで32試合で防御率7.12なのでさすがに、ね?

Yohan Ramirez ヨハン・ラミレス

投げているボールはロマンの塊。昨年終盤制球難にも改善が見られ、ついに計算できるブルペンアームになるかと思いきや、完全に経験値リセット。ガーディアンズを経由した後、パイレーツではまずまずの投球を見せた。お化けスライダーを投げるだけに惜しい才能。

Robbie Ray ロビー・レイ

「コントロールさえ良くなれば」の代表格が昨年その希望をついに実現させ、CY賞まで登り詰めた左腕。当時ディポトさん史上最高額の5年$115MMもの契約を与え、獲得した。

序盤は球速が出ず、5月頃は特定のイニングにまとめて大量失点する何とも頼りないピッチングを見せ、去年の活躍はフロックだったのでは?とファンに疑念を抱かせるも、ツーシームの導入で復活。Tモバイルパークとの相性も良く、なんだかんだ怪我せずそれなりの内容で1年間投げ切ってくれたので大きな不満はない。ただ、アストロズ戦にとにかく弱く、DSではリリーフ起用せざるを得なかった(しかもDS1戦目に登板して即逆転サヨナラ弾献上)のは$100MM級の契約を貰っている選手としてどうなんだと思わなくもないが…

Sergio Romo セルジオ・ロモ

サドラーが開幕前に今季全休が決まったため、急遽獲得したベテラン右腕。試合中盤のピボットロールでの活躍に期待がかかるも、年齢による衰えが顕著だった。17試合で防御率8.16ではどうにもならず、6月にリリース。その後ブルージェイズに移籍し、マリナーズ相手の登板でジーノにサヨナラ3ランも浴びた。

Paul Sewald ポール・シーウォルド

マリナーズでキャリアを変えた遅咲き右腕。ステッケンライダーやミセビッチなど昨年のブルペンを支えたメンバーが苦しむ中で唯一昨年と同等、あるいはそれ以上のピッチングで今季もハイレバレッジシチュエーションを任された。

昨年はリリーフながらシーズン100Kを達成したその圧倒的な奪三振能力が光ったが、今季はより安定感のある投球を重視。被安打、与四球を減らしたことで無駄なランナーが出なくなり、致命的な一打を浴びることはほとんど無かった印象。基本試合で一番大事な場面を任せるべきピッチャーではあった。ただ今年も昨年に続いてシーズン終盤に息切れし、特にDS第1戦では最後の最後でサービス監督がシーウォルドを信頼し切れない状況を生み出してしまったのは残念。ムニョス、スワンソンらと来年は上手く負荷を分散したいところかもしれない。(そもそも打線がブルペンに負荷をかけ過ぎなところもある)

Justus Sheffield ジャスタス・シェフィールド

パクストントレードの目玉だったはずの元トッププロスペクト。今季の大部分をタコマのローテで過ごし、24先発で防御率6.99と衝撃的な数字を叩き出す。来年でオプションが切れるため、マリナーズで投げることはもうないかもしれない。

Drew Steckenrider ドリュー・ステッケンライダー

昨年のブルペンを支えた右腕。今季もシーウォルドと共に試合終盤を任されるはずだったが、昨年決め球として威力を発揮していたチェンジアップの良さが消えてしまい、1年かけてもとうとう見つけることができず。マイナー降格後もパッとしない投球で、MLBに帰ってくることはなかった。たった1年で良くも悪くもこれだけ変わってしまう、リリーフ投手の未来を占うのは難しい。

Erik Swanson エリック・スワンソン

リリーフ転向後に開花した右腕。もはや2018年オフのパクストンのトレードはこの人を獲得するためにあったようなもの。

今季は怪我で長期離脱することもなく、ほぼ1年間ブルペンを支える活躍を見せたスワンソン。生命線のストライクゾーン高めへの速球がビタビタで、その結果は57試合で防御率1.68という結果にも表れているだろう。勝ち試合も頻繁に任され、スワンソンが登板すればまずゼロを並べてくれるだろうと期待もできるほど。来季も頼むぞ。

Luis Torrens ルイス・トレンズ

マリナーズが誇る二刀流(?)。PS直前ということもあってか10/4 DH第1戦では同点の延長10回から登板し、80mph台のボールでタイガース打線を翻弄し、「マンフレッドランナー」の1失点のみに抑えると、その裏に味方が逆転サヨナラ勝ちしたため、勝利投手に。マリナーズ史上初の野手の勝利投手となった。

Danny Young ダニー・ヤング

マリナーズが左投げリリーフ探しの旅に出ていた際に昇格してきた選手。ミセビッチ以上に強みがなく、MLBではまだ厳しそうという印象だけ残していった。

Photo: https://flic.kr/p/2nQigBc

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