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ロブレスがやってくる

あのビクター・ロブレスがやってくる。ナショナルズから先日DFA→リリースとなったロブレスだが、マリナーズは彼と契約を結ぶつもりらしい。明日(現地6/4)からオークランドで始まるアスレチックス戦から合流するようで、今日同じ外野手であるジョナタン・クラセがマイナー落ちとなったのもその枠をロブレスに充てるからということのようだ。ロブレスといえば、かつては超が付くほどの有望株、それもMLBでもTop10レベルのプロスペクトだったが、さすがは元トッププロスペクト大好きお兄さんのディポトさん。獲得のチャンスを逃さなかったわけだ。

ロブレスは現在27歳、右打ちの外野手だ。近年はパッとしないが、プロスペクト時代のロブレスはそれはもうとてつもなく高い期待を受けていた選手で、特に並外れた身体能力の持ち主であったことが理由として大きい。ゲームチェンジャーとなりうるスピード、センターという簡単には優秀な選手が見つからないポジションで広大な守備範囲を誇り、バッティングに関してはまだまだ荒削りな部分はありつつも、平均以上の打者になれそうな素質は示していたため、将来は走攻守が揃ったオールスターの常連になれるかもしれない。そんな風にも言われていた。実際、その評価の高さを裏付けるかのように、MLB.comの球界全体のプロスペクトランキングにおいて、2017〜2019年と3年連続で球界全体でTop10に入っている。

そんな期待を背負ったロブレスは22歳のシーズンだった2019年に本格的にMLB定着を果たす。この年155試合に出場し、打率.245、17HR、wRC+92とバッティングこそリーグ平均やや下くらいの成績ではあったが、前評判どおりの守備を披露し、センターでDRS+23、UZR+5.3、OAA+21は圧巻の一言。rWAR4.4、fWAR3.7はルーキーとしてだけでなく、MLBのレギュラーとしても素晴らしい成績であり、この年のナショナルズ世界一にも貢献。ここからバッティングが徐々に成長していけば、本当にオールスターの常連にだってなれただろう。

ただ、そうはいかなかった。2020〜2022年のロブレスは毎年wRC+で70にすら届かず。wRC+は常に100がリーグ平均になっているのは皆さんもご存知だろうが、ロブレスのwRC+は2020年からそれぞれ66、69、64である。高校時代に大した成績を残せなかった私がテストでこの点数を叩き出せば狂喜乱舞していただろうが、何度も言うようにwRC+は100が平均である。100が平均の指標でこの成績を残すレギュラーは逆の意味で凄いのは確かにそうなのだが…また、自慢だった守備もルーキーイヤー以降はしばらく平均以上、近年は怪我の影響もあってか特にセンターでは指標上悪化傾向となっては何とも厳しい。ナショナルズファンのフォロワーさん曰く、最近はどえらいエラーをかますようになったとのこと。なんてこった。

怪我で出遅れた今季はここまで25打数3安打、wRC+35。ロブレス不在の間にジェイコブ・ヤングが台頭し、さらにはかつて伝説級の守備で我々マリナーズファンを沸かせたジェシー・ウィンカー、レーン・トーマス、エディ・ロザリオと他にも外野手がいる中で、既にオプションも残っていないロブレスを使う方法などもはやなく、世界一に貢献した選手といえど、ナショナルズが彼を諦めざるをえなかったのも仕方のないことではあるだろう。

そんなこんなでかつて将来を嘱望されながらも、完全にbustとなってしまい、今回マリナーズに流れ着いたロブレス。彼の今季年俸は$2.65MMだが、契約途中にリリースされているため、マリナーズの負担分はリーグ最低年俸の日割り分だけで済み、獲得にあたってのリスクはほぼ無いに等しい。もちろん近年のロブレスの状態からしてリスクが無いとは言ってもリターンもあまり望めないかもしれないが、ただ、個人的には彼に次の2点を期待したい。

1点目は普通に控えの外野手として頑張ることである。レギュラーになれるほどのバッティングではないけれども、守備や足で光るものがある選手が控えの印象としてありそうだが、近年のマリナーズだとユーティリティのサム・ハガティが思い浮かぶ。ただ、ハガティは残念ながら先日守備中のアクシデントでアキレス腱断裂の大怪我を負ってしまい、既に今季残りシーズンの全休が確定している。

だからこそ今日までクラセが控え外野手としてマリナーズに帯同していたわけでもあるが、ただクラセも今季がAAA以上でプレーする初めてのシーズンであり、本来だったらAAAのレギュラーとして十分な打席数を与え、さらに成長してもらいたい立場の選手。MLBの控えとして帯同し続けるのは本人のためにはならず、ロブレス獲得の見込みが立ったからこそマリナーズもこうしてクラセを再びAAAに送り返したわけである。ロブレスにはクラセらを再昇格させない程度には控え外野手として頑張ってほしい。

今はセンターとしては厳しいかもしれないが、両翼で平均以上の守備を見せてくれたら嬉しい。マリナーズファンは今はフリオ、その前はイチローとマイク・キャメロンの宇宙間(右中間)を見てきたので外野守備に対する目は肥えているかと思いきや、大丈夫。彼らに飛ぶ全ての打球をドキドキハラハラの物語に変えてくれたウィンカーやドミンゴ・サンタナ、さらにはLFイバニェス、CFベイ、RFモースのファイヤーフォーメーションも見てきているので、「平均以上」のハードルは意外と高くない。全盛期の守備力はないかもしれないが、両翼のロブレスなら大丈夫と信じたい。

もう1点は左投手と対戦する際にほどほどに打ってもらいたいことである。散々ロブレスの打撃の悪さに触れながら、彼の打撃に期待するのかという話ではあるが、マリナーズは基本的にプラトーンを重んじる方針にある。スイーパー全盛時代でそれはある程度合理的ではあるし、基本的には支持しているが、たださすがに対左でスイッチヒッターという理由だけで今季wRC+18のクラセをスタメンで出したり、サヨナラがかかった場面でヘイダー相手にロハスを下げてMLB通算0安打(打席時点)のブリスを代打起用したのには驚いた。この分だと、おそらくロブレスも左の先発と対戦する際にスタメン起用されることもあるだろう。頼むから打ってほしい。知ってのとおり、マリナーズは現在大変な貧打に見舞われている。もう、とにかく、形は問わないので、誰でも良いから打ってほしいのである。

一応ロブレスはキャリアを通して対右OPS.642、対左OPS.727と左投手の方が相性は良く、108試合でOPS.584と衝撃的な成績を残した2022年でさえも、対左OPS.751とぼちぼちは打っている。昨年は怪我でまともな試合数プレーしていないとはいえ、左相手なら33打数12安打と実は結構打っている。これをぜひマリナーズでも見せてほしいものである。

投手陣の働きもあり、AL西地区首位を快走しているマリナーズは、おそらくこの調子だと夏までに打線の補強を行うことになるだろう。ロブレスは場合によってはそれまでの繋ぎ、成績を残せなければトレードデッドラインどころか数週間もたたずにチームを去る可能性のある立場として入ってくる。ロブレスにとって現状のMLBでのキャリアは思い描いていたものではないだろうが、かつては球界全体でも指折りのプロスペクトとして期待されていたのもまた事実。新天地で心機一転、マリナーズで活躍してくれることを心から祈る。

Thumbnail by All-Pro Reels CC2.0
(https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Victor_Robles_pops_up_from_Nationals_vs._Braves_at_Nationals_Park,_April_6th,_2021_(All-Pro_Reels_Photography)_(51101553616).png)

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