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初めてプロ野球のオールスターゲームを観戦してきた

友人に誘われ、今年のプロ野球オールスターゲーム第1戦を観戦してきました。

自分自身、一般的な野球ファンと名乗れる程度には毎年球場まで足を運んでプロ野球の試合を観戦していますが、オールスターを観戦するのはこれが初めてです。

なぜか。率直に言ってしまえばこれまでオールスターを避けてきた節は否めません。

1つにペナントレースやクライマックスシリーズ、日本シリーズで見られるような真剣勝負の要素が薄い点が挙げられます。プロ野球をプロ野球たらしめるのは、この国で最も野球の上手い人たちがリーグ優勝、日本一という目標に向かって本気でぶつかり合うところであり、私自身もそれを自分の目で見ることに至上の喜びを感じるため、その対価としてお金を払っているわけです(そして多くの野球ファンもそうでしょう)。

オールスターは公式戦ではない以上、そういった真剣勝負の要素が薄くなってしまうことはある種必然でしょう。公式戦だから生で観戦するのが面白いのであって、真剣勝負ではないオールスターを観戦しても公式戦ほどの面白さは得られないだろう。テレビ観戦することはあっても、お金を払ってまで見ようとは思わない。自分にとってのオールスターはこれまではそのような立ち位置でした。

しかし今回、有難いことに友人から誘ってもらい、せっかくなら一度くらいは生でオールスターの空気を体感してみようと思い、東京ドームへと向かいました。

開場とほぼ同時くらいのタイミングで入場。まず驚いたのは12球団のファンが勢揃いしている点でしょうか。普段であれば対戦チーム同士のファン(少なくともユニフォーム姿で確認できる範囲では)しかまず見ないため、この光景は新鮮でした。また、今日という日がいかに特別なものなのかも感じさせました。

そしてグラウンドで行われている打撃練習も、セ・リーグでは筒香嘉智(横浜DeNA)や鈴木誠也(広島東洋)、山田哲人(東京ヤクルト)といったスラッガーたちがスタンドへ軽々とボールを運べば、パ・リーグも山川穂高(埼玉西武)、吉田正尚(オリックス)、浅村栄斗(東北楽天)といった面々が負けじと最上段まで叩き込んだりと、これだけでも一見の価値がありました。「オールスター」という名に相応しい、各球団のスターたちが参加しているんだという気持ちにさせられる、そんな練習風景でした。

18時。恒例のホームランダービーが始まりました。
圧巻だったのは吉田正尚と村上宗隆(東京ヤクルト)でした。吉田は終始バットを振れば全てスタンドを越えていくような勢いで、一人だけメジャーリーガーが混ざっているようなホームランダービーでした。準決勝の4スイング4HRはもはや笑うしかなかったです。スタンドも一際大きな歓声をあげながら彼が描く放物線を眺めていました。

村上も力感のないスイングから、こちらも大飛球を飛ばし、まだ19歳の高卒2年目とはにわかには信じ難いような打撃でした。正直彼のホームランダービーをもっと見たいと思いましたし、いきなり吉田との対戦で敗退してしまったことだけが悔やまれます。

ホームランダービーの興奮も冷めやらぬ中、いよいよ両リーグのスターティングメンバーが発表され、試合が始まりました。

セ・リーグ先発の大瀬良大地(広島東洋)、パ・リーグ先発の千賀滉大(福岡ソフトバンク)、共に普段は所属球団で先発を務める両投手ですが、今日は短いイニングしか担当しないため、初回からエンジン全開で150km/h以上の速球を連発。1球1球のスピード表示に場内が沸きました。

打者も負けじと力勝負に応戦。セの山田が千賀の156km/hの速球を捉えて、センターの頭上を越える見事な三塁打を放てば、パの森友哉(埼玉西武)も大瀬良の150km/h近い速球をフルスイングでライトスタンド上段まで飛ばし、全力投球の投手たちを相手に一歩も引けを取りませんでした。

このあたりでこれまで自分が持ってきた「オールスターは真剣勝負ではなく、公式戦ほど面白くはないだろうからお金を払ってまで見ようとは思わない」という考えが消えていました。確かに公式戦のような緊張感を伴う真剣勝負とは少し違うものの、オールスターはプロ野球という厳しい世界において、さらにそこで結果を残すことができている本当に一流の選手たちが己の持てる力を存分に発揮し、対峙する場であることをようやく認識しましたし、これはこれで公式戦とはまた違った意味での真剣勝負なのではないかと感じました。

また、純粋に野球の試合として楽しむことができました。特定の球団を応援している野球ファンである以上、公式戦ではどうしても応援しているチームの勝敗が気になってしまい、特に負けた日にはどれだけ試合として面白い展開であったとしても心の底から楽しめたとは言えない自分がいました。

しかしオールスターは違いました。自分は横浜DeNAのファンであるため、どちらかと言えばセ・リーグ寄りの人間ではありますが、それでも浅村、山川の二者連続ホームランはどちらの打席も素直に凄いと感じましたし、セ・リーグ屈指の好打者である坂本勇人(巨人)を三振に斬った千賀のフォークボールはまさにプロが投げる一級品の変化球で、見ているだけでも思わず興奮してしまうような一球でした。一流のプロたちが一流の技で競い合う光景はこんなにも面白いものなのか、という自分がプロ野球を見始めたばかりのころに抱いた感情が再び呼び起されました。

球場の雰囲気を見た限り、他の多くの方も純粋にオールスターゲームを楽しんでいるようでした。その極め付けはやはり最終回の原口文仁(阪神)の代打ホームランでしょうか。大腸がんを克服し、パ・リーグを代表する右腕に成長しつつある山本由伸(オリックス)から放った一打は、東京ドーム中が熱気の渦に包まれました。東京ドームで今後あれ以上の歓声を聞くことができる日は来るのだろうか...と思う程度には12球団どこのファンも分け隔てなく彼の復活の一打を喜んでいました。私も原口のホームランの瞬間には大声を上げてしまいました。

そんなこんなでこれまで斜に構えていた自分が嘘のように楽しむことができた今年のオールスターゲーム。今後もそうそう行く機会ができるかはわかりませんが、機会があればまた観戦に行ってみたいと思える一戦でした。


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