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私は蜂アレルギー①

私ははちみつ屋をしていますが、実は蜂アレルギーなんです。
養蜂家さんの採蜜作業のお手伝いで、今まで何度もミツバチに刺されましたが、そのなかでも忘れられない大惨事があります。

2006年6月、秋田での出来事です。朝4時からスタートした採蜜で、私ははちみつが貯まった巣板にくっついているミツバチをふるい落とす作業をしていました。
まず1発、肩を刺されました。でも、痛かっただけで何ともありませんでした。
「やっぱり、新しい薬が効いてるんだ!」とルンルンの私。
でもどんどんミツバチをふるっていく間に面布(めんぷ)の中にもう1匹。
さらに調子よく作業を続けていたら、なんとビックリ! 面布の中はハチだらけ。
「やばい・・・」
その日、養蜂家さんの指示で、帽子と面布が一体になった作業上着を着ていたのですが、それに慣れていなかった私は上着の裾をギュッと絞るのを忘れていたのです。
「痛い!」
右目の下を2発刺されたあと、慌ててその場を離れ、作業服を脱ぎましたが、今度は服の中にいたミツバチが頭を攻撃(髪の毛は黒いので天敵)し、合計8発刺されました。耳の後ろを2発、手を4発。何やかんやで計20発の連続攻撃に合い、意識が遠くなりました。
「病院や! 病院や!」と慌てる養蜂家さん。
私は異常に冷や汗が出て、呼吸がしにくくなり、最悪なことに便意をもよおし、蜂場の仮設トイレに直行。そこで意識不明になりました。外からは養蜂家さんが何度も叫んでいます。朦朧とする意識の中でふと声に気づき、何とかトイレを出ましたが歩けません。
そのまま、抱きかかえられ軽トラで病院まで猛ダッシュで運ばれることになりました。
軽トラには私の他に養蜂家さんらが3人乗り、ずっと「がんばれがんばれ!」と励まし続けてくれたそうです。だけど、意識は朦朧、お腹が痛い。養蜂家さんに何度もほっぺを叩かれ、「大丈夫か!」と呼びかけられても、3回に1回くらいしか返事ができなほどの呼吸困難になっていました。

たまたま町に近い蜂場だったのですぐ病院に着きました。救急処置室に着くやいなや私はトイレにダッシュ。看護婦さんが車椅子で迎えに来てくれましたがやはり動けず、簡易トイレに座ったまま血圧や脈を測定。血圧は低く脈は速くなり、冷や汗が出て、床は汗でボトボトになりました。
「あ~私はここで死ぬんだ・・・」って思うぐらい、苦しく辛い時間でした。
結局、簡易トイレに座ったまま点滴を開始し、ベッドに移って眠ること約3時間半でようやく動けるようになり、現場に戻りました。

この日はあんなに大好きだったミツバチが怖くなり、車から降りられませんでした。養蜂家さんにも「休んでおけ」と言われたので、養蜂家さんの家に行き、はちみつの計量や洗濯をして過ごしました。養蜂家さんは「こいつを殺してしまったかも・・・」と生きた心地がしなかったみたいで、本当にご迷惑をかけた一日でした。

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