2024/03/15


 いつも家を出る一時間前に起きるので今日もその通りの起床時間のつもりだったが、寝る直前、いや仕事じゃなくて遊びなのだし化粧をしっかりしたいので一時間半前に起きようとアラームをセットしたがぱちっと三時間前に目が覚め、結局そのまま起きてストレッチや筋トレや掃除や洗濯や化粧や髪を巻いたりをしていたらなんやかんやと時間が過ぎ、そしていつのまにか時計を見ると家を出る五分前であった。シューズボックスの上に置いてあるアクセサリー類がじゃらじゃらしたボードの中からリングを掠め取って指にはめながら家を出た。何故だか時間がある時に限って時間が無い。世の中ってそういう風に出来ている。
 スマホと財布だけもってればまぁいいだろうの精神ではあるがメイク直し用のポーチもちゃんと持ってきたし、スマホの電池がすぐに無くなるので(私は8が出ているピクセルの、5を使っている。故バッテリーがいかれているのだ)モバイルバッテリーも持ってきた。だと言うのに、今の時期絶対に手放せない目薬を忘れてきてしまっていることに、電車内で気づく。花粉症のせいでここ数日鼻がムズムズして、それ以上に目がかゆい。ごろごろする。それでかきすぎて痛くなったりする。毎日毎日目薬で何とか凌いでいるのに、一日外に出る今日に限って忘れてしまった。メガネはかけてきたけれどこれはオシャレ伊達メガネなのでレンズはぶち抜いてあって、花粉をガードする役割を果たしてくれない。平日のちょっと遅い時間なのに大学生なのか若い女性たちが多く乗車している電車で、花粉の驚異に怯えた。
 スマホを触っていると隣にベビーカーを押した女性が立ち、彼女は私と向かい合う形であったので私の視界にはベイビーが入り、彼女もしくは彼はかえるさんのぼうしをかぶせられていた。かえるの目と彼もしくは彼女自身の目で、四つの目で見つめられ、蕩ける。スマホを見るふりをしてその少し右側にずれたところできょとっとしているベイビーをにこにこと見ていた。人生にはもっとこういう時間が必要だと思う。
 友達と合流しておしゃれカフェに入った。可愛い店内に可愛いケーキやスコーンが置いてある可愛い空間だった。今日は何を食っても飲んでもいい日にしてあるので、いちごのタルトと犬を模したスコーンを注文する。ひよったので飲み物はアメリカーノ。マイキーくんごめん。ひよってるやつ居た。それは私だった。私はとうりべを見たことがない。
 開店から数分で店にたどり着いたのだが店内には既に女性客がわらっと居て、それぞれぱしゃぱしゃ写真を撮っていた。なんか棚に飾ってある置物を自分のテーブルに持っていったりして、ケーキなどの背景に使い、スマホをあぁでもないこうでもないと傾けている。撮りすぎ撮りすぎ笑とか思いながら私も沢山写真を撮った。推しの写真とか並べて撮った。同じことをした。でも彼女らの推しというのはおそらくアイドルで、私のは芸人であった。あの場でデコったトレカケースに入れられたランジャタイの写真を取り出したのは私が初めてだったと思う。
 食べ終え、程よくお喋りに満足したら二十分ほど歩いて今日の一番の目的地へと向かう。この為に昨夜読書をし、爪の色をそれっぽく塗って、服のカラーもなんとなく揃えた。私と友達は中之島美術館へモネ展を見に行った。
 平日だしゆっくり見れそ〜とか呑気にしていたが、その舐め腐った態度に罰を与えられた、つまり、モネ展はめちゃくちゃ人で溢れていた。全然ゆっくりなんて見られなかった。この絵ゆっくりみたいなとか思っても、一分以上立ち止まるとなんかめちゃくちゃ空気を悪くしそうな雰囲気がある。美術館には数回しか来たことがないので、あまりルールやマナーがわからない。絵に対する感性が乏しいので長いこと見たってなにもわからないのだが。
 そもそも私は絵そのものというか、どの時代にどこでどういう経緯でどんな意味があって描かれたものか、みたいな、そういうストーリーの方が知りたくて、一枚よりも四百頁くらいがよくて、だからえっと、この絵はこの年に描かれたってことはモネはあそこにいてこういう状況でそういう理由でこれを描いて、みたいなことを考えるのが好きで、すなわち、要するに、答え合わせのように絵を見ていたって言うか、なんかそんな感じだった。ふふふ。なんだそれは。
 夜明けだとかってタイトルに入っている絵の色合いがとても好みだった。それはピンク色と水色とで淡い雰囲気があって、お洒落だなとか思っていた。でもロンドンを描いた作品がめちゃくちゃもやもやもやもや〜とした表現をされていて、これは霧がめちゃ深いからこういうことなのか、つまりこれは現実なのか、じゃあ夜明けがピンク色と水色なのも現実であり、とても忠実な印象作品なのか、と、パリに行ってモネに描かれた風景を見てみたくなった。行きたい。見たい。私はパリを知らない。それはすごく勿体ないことのように思えた。積みわらを見て、描きたいと思ったモネ。私にはその感性が分からない。積みわらが全く身近なものでは無いから。私に絵の才能がありかつ描くことが好きであっても、題材に積みわらを選ぶことは無いだろう。何を選ぶだろうか。ゲームキューブとかかな。ゲームならサルゲッチュが一番やりこんだから、PS2かな。サルゲッチュ3は主人公の衣装を変えることで効果も変えられてとても楽しかった。大好きなゲーム。もうどんな楽しいゲームをプレイしても、サルゲッチュ3で遊んでいたあの興奮は越えられないのだろう。それはやっぱり、ちょっとさみしい気持ちになる。

 絵を見終えてグッズをちょこっと買って、あちこちぷらついて本を買ったりスタバでだべったりした。本屋さんに行くと欲しい本が増える。でも際限なく片っ端から買っていくとすぐに家計を圧迫してしまうので、文學界だけ購入した。肩が耐えられる重さが、丁度文學界一冊分な気がした。
 そのままふらふらしながらゆっくりと時間を潰して焼肉屋さんに入り、肉を貪り食った。タンとハラミを中心に食べたが、何を食ってもいい日としたものの、やっぱり今までのあれこれが全て無に帰すのが恐ろしかったので、ベジファーストを守ってキャベツを山盛りたべた。あとキムチとか。飲み物も烏龍茶オンリーだった。焼肉屋さんで理性を働かせたのは初めてかもしれない。

 明日仕事がある友達と解散し、私は一駅歩いて駅ビルに向かった。そこには母親と二人の弟がいて、彼らと居酒屋へ。焼肉を食ったばかりだと言うのに、今からご飯を食べに行くという彼らに合流したのだった。あんなに肉を食ったのに、しかもひよって草とか食べたのに、からあげとかチヂミとかを食べた。チヂミがめちゃくちゃ美味しくて、壁にはられたポスターのせいもありビールが飲みたかった。からあげを食べるとレモンサワーが飲みたかった。母と弟らはそのどちらをも飲んでいたが、一口貰うとかはしなかった、止まらなくなりそうだったから。
 帰りにコンビニで各々デザートを買い、私と母と弟一人は実家へ、もう一人の弟は彼女と暮らす家へと帰って行った。
 急遽実家に泊まることにしたので、ほとんど毎週帰っているくらい近い実家ではあるが今日は帰るつもりはなかったので、コンタクトケースとかメガネとかなんか色々、なんにも持っていないことにふと気づく。あー、あー、あー、と思っているうちに電車は私を実家へと連れてゆき、あー、あー、と思いながら実家のでかいテレビでベストワンを見た。ランジャタイが出ているから、キーワードで登録しているので勝手に録画され、勝手にチャンネルが合わさり、テレビは私の意思とは関係なくランジャタイのネタを見せた。ランジャタイのネタを見る時には、いつも「何だこのネタは笑笑」と思っている。なんかこう、クラスでふざけてる仲のいい男子を見ている時の笑いというか、なにやってんねん笑笑みたいな、友達がだるいノリをしてきてツボった時みたいな、そういう笑い、あれがある。変に気取ってないめちゃくちゃなネタなのが、おもしろいな〜と思う。なんも考えずに笑えるというか、深く考えなくていいというか、なんだろうか、私は急に「うんこ!」とか言われたら絶対笑っちゃう人間なので、大人なので、だからなのかランジャタイがめちゃくちゃ好きだ。別にランジャタイは急にうんこって言う人じゃない。
 ダラダラしていたらベストワンは終わり、ネタパレが始まり、それにもランジャタイは出ていて、つまりテレビはそれを私に見せ、そしたらランジャタイの紹介文というか煽りで「カルト的な人気を誇る」とか言われていて、笑った。たしかに。猫が耳に入るネタを「天才だ!」と持ち上げるファン、熱狂的な信者すぎるもんな。私は熱狂的な信者の自覚がある。だって映えカフェでランジャの自作推し活グッズを取り出す大人だし。

 実家で夜本を読むのは中々に困難だ。家族がそばに居るとなんだかんだと話しかけられ、集中出来る環境では無い。だから今日はなにも読まずに寝る。なんか動画とかを見ながら。ディズニーランドへ行くVlogの動画とか。昼間友達と話した、ディズニー行きたいねという話題を思い出したので、YouTubeの検索欄にディズニーと入力した。


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