池田さん、うだつがあがらないってよ。2

池田はマンホールを丁寧に閉めていた。

アパートの前である。

マンホールの中には・・・

下水道。マンホールが少し開いていて、池田はそれにけつまづいたのであった。

そして、危ないな~とただそれだけで一生懸命閉めていたのだ。役所に電話すればいいのに。

マンホールが「ゴトン」と音を立てて閉まる。すこし目を上げた池田の目に、「危い」という文字が飛び込んでくる。

車道の「危ない」の標識である。池田は見るたびに「あやうい」と読んでしまう。

車のクラクションが鳴る。

池田は車道の真ん中のマンホールから離れて、脇へどいた。

山本さんが偶然それをみて惚れ直す・・・ということはない。

惚れてもいないか。

池田はコンビニで買った弁当を探すが、勢いよく転んだので、アパートの向かいの生け垣に弁当はぶちまけられていた。

ネコが狙っている。

「あげるか」池田は弁当をネコにゆずって、自室でパスタをゆでようと考えを巡らせた。ミートソースがもう切れていたはず・・・

池田は生麺を食することにする。

山本はそのころ、す〇家の3種のチーズかけ牛丼を食べていたが、池田がそれを知るよしもない。

一時間後、池田は満ちた腹をなでながら、シャワーを浴びていた。

山本はドラッグストアでコスメの補充である。

池田はマンホールで赤い線の入った手をなでながら、浴室を出た。

30分後、池田は郵便受けを見ようとドアを開けた。

ゴンっ

山本直撃。

「あ、いったぁ」

山本さん、コスメ漁りの帰りに池田氏の家の前を通過中であった。

いつもとは違うドアのつっかかりと声に事情を察した池田は「あ!すみません!大丈夫ですか!!?」と声を上げながら、もう一回ドアを押す。

ゴンっ

山本さん吹っ飛ぶ。

「あぁぁ!」

池田と山本の声がハーモニーを奏でる。山本さんはよろけながら、向かいの生け垣までよたよた歩いていき、さっき池田が吹っ飛ばした弁当に突っ込む。

弁当はチーズデミグラスソースたっぷりのハンバーグである。

「あぁぁ!シャネルのコートが!!」

山本絶叫。

池田は開いたドアから目を丸くして見ていることしかできない。

夜9時。

アパートの別室のおばさんが「あんたらうるさいよ!」と鋭く返す。


池田、ドアを閉じる。。

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