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「サッカーは常に表裏一体」J1第8節 FC東京vsサガン鳥栖

前回ホームの浦和戦は外せない仕事で現地には行けなかったので、今回ようやく味の素スタジアムに足を運ぶことができた。現行の5,000人以下のキャパシティでは、SOCIO(シーズンチケット保持者)→クラブサポートメンバー(後援会)→一般販売の順番でチケットを販売している。今回は2番目に降りてくるCSM枠で購入をしたのだけれど、ゴール裏やバックスタンドがすぐ埋まるのに比べて、メインスタンドは販売開始後すぐになくなるということはなかったようだ。こういった状況下でスタジアムに足を運ばなくなる層の想像ができる。

「次に味スタに行くときに行こう」と決めていたつつじヶ丘のラーメン屋から歩いて味スタに向かっていたら、京王線沿いに住んでいるHKTヲタクの知人が自転車で向かってきてくれた。味スタ前のロイヤルホスト(通常は混むので試合前に初めて入った)で軽くダベってからスタンドに入る。


試合のハイライトはこんな感じ。せっかくのなのでTACTICAListaの練習も兼ねてスターティングポジションの図を置いてみる。レアンドロの背番号を間違えているのはご愛嬌。

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スコアとハイライトを観る通り、今シーズンこれまで勝ちきれていなかった鳥栖に対して、東京は弱点をまんま突かれてやられてしまった試合になる。

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鳥栖のボール保持時の攻め方のイメージ。東京の守備ブロックの間と外をうまく使って攻めていた。サイドハーフが相手サイドバックの中と外を行ったりきたりしつつ、絞るときにはサイドバックが高い位置で仕掛ける。そこへ後ろのCBやGKの高丘からいいフィードが来るし、ボランチの2人もしっかりサポートしている。ここまで今シーズン勝ててないとは思えない、狙いが枠組みとして成立している好チーム。東京は狙い通りに間で受けられた1.5列目の選手やうま仕掛けられたサイドバックにゴールを決められている。

東京のやられたポイントを端的に言うと、レアンドロとその周辺のバランスをどうするか。守備でも攻撃でも"フラフラ"していることが彼の特徴だ。守備では戻ってアプローチに行っているし、彼が頑張っていないとは言わないのだけれど、彼の得意とするところは、他の中盤の4人やサイドバックと連携していい守備ブロックを埋めることではない。1失点目のあと、今度は攻撃時にフラフラしながらボールを受けてフリーキックを取ってそれを沈めてツケを返すあたりに、サッカーの面白さが詰まっているように思う。

昨シーズンまでは11人全員が引いても守れるし、前にも出れるしという全員にハードワークを求めて戦うチームだった。その意味では平等なチームだったと思う。それで躍進はしてもタイトルが獲れていない中で、今シーズンは思い切ってハードワークが得意でない選手も入れて戦うことを決めた。守備面でこぼれ落ちるところがあったとしても、その代わりに得点を取ってお釣りが出ればいいというリスクの取り方にシフトをし始めたのが今シーズンの開幕当時だった。

そこから中断期間を挟んで、ハードワークが得意な選手のケガや移籍での離脱を経た中で真夏に突入。フォーメーションを開幕の4-3-3から昨季の4-4-2に戻したりしているものの、リスクを取りに行って取り切れる試合にはなれていない。

長谷川監督は、ボール保持/非保持/切り替えでの立ち位置のサイクルを構造化して解決することはあまりしていないように見える。守備時に戻らなければいけないポジションと、縦へ攻め込んで使うスペースの意識以外はお任せに見える部分もある。戻る要求は厳格なぶん、そこが得意でない選手を使うことをどう構造として解決するのか、あるいはパッチワークとして解決するのかは見えない。たとえば、レアンドロが前線でフラフラしているときに代わりにそのポジションで守備に走るのはディエゴなわけだけれども、彼の攻撃の特徴が一番活きるのはまた前線なのだ。そのバランスでいいのだろうか。

……と、ここで監督のマネジメント批判に終わってもいいのだけれど、これがやっぱりサッカーだなと思うところでもある。トップレベルになればなるほど、どこのポジションの選手でも連動した守備のタスクを求められるし、そういうクラブがプレミアリーグで優勝する。一方で、未だに世界一のメッシは守備を免除されるし、攻撃でも彼がいることで成り立つバランスは非常に難しいものになるが、メッシのいるチームは強い。

サッカーは、攻守がシームレスなスポーツだ。攻撃しているときも守備のことを頭の片隅に入れておかないといけないし、守備のときも攻撃のチャンスをうかがわないといけない。攻守それぞれで得意な範囲がそれぞれにあって、それをどう組み合わせてどうバランスを取りながら、最終的に相手よりスコアを上回るか。こうした複雑系と呼ばれるようなゲームであるところが僕はとても好きだなと、改めて感じている。

Jリーグが再開して5,000人以下の観客になって観に行くのは2回目(初回)になる。こういう状況下で以前のように歌えないことはさみしいことではあるのだけれど、こうしてよりピッチ上の現象にフォーカスして観戦できることは僕はポジティブに思うようになった。選手のコーチングも聞こえてくると、「ターン!」とか「来てれるよ!」とか言いたくなるものだなあと。これは、JリーグをJリーグ足らしめている"サポーター"的な要素とはまた違う、ピッチで起きている現象をより感じているわけだ。DAZNでも声は聴こえてくるが、映像だけじゃこういう気持ちにはならない。

選手にも感染者が出て中止になる試合も出てきているところだけれども、この日感じた気持ちで言うと、続けられる範囲で続けてほしい。こういった各自の願望と全体のマネジメントの舵取りを、行政と政治家のみなさんはどう意識されているだろうか。モヤモヤしながら試合を観続けることだけは勘弁いただきたいところである。

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