ある人間に興味を持った侵略者2

 私はその人間を観察した。
 人間の発明した器具で言うところの防犯カメラに近いだろう。もっともそれよりも目は多いし高性能であるし、ありとあらゆる機能を備えているので、私がその人間のそばにおり私がその人間の一部であり、家であり、世界であるところが近い。
 人間は労働をしていた。週五日、月曜日から金曜日まで日が出てすぐのころに家を出て電車とかいう面倒極まりない横長の乗り物に詰められながら会社に向かい。帰りは夜遅くになってから帰っていた。
 時折帰りの電車で男は社内で吐かれたゲロを踏んだり、アルコールに支配された脳味噌をもつ人間に絡まれたりしていた。
 土曜日と日曜日は会社へ行かず家でじっとしていることが多く、たまに出かけて友達という別の人間と会話することや一人で買い物に行くことがあった。
 人間の家には調理機材はほとんどなく、いつも同じコンビニや閉店間際のスーパーにかけこんでは弁当を買って無心で食べていた。人間というのは健康が大切だという知識があるのではあるがこの人間の健康はかなり悪いと言える。
 人間は三日に一回オナニーをしていた。同じような女が出ている動画で男は射精をしていた。そこに快楽は一瞬しか存在せずほとんどが虚しいものであった。
 人間には、パートナーとなる人間が存在していなかった。どうやら人間は会社に勤めるようになってからパートナーは一度も存在しなかったようである。
 人間の精神は良いとは言えなかった。
 多いと言えない賃金でこのままあと30年ほど働くのかと考えると人間が生命を終える可能性があった。いや、私の計算によると死んでいた。
 それは困るなと私は思った。人間には生きてもらおう。私はその人間を生かすことにした。
 人間の名前は湯沢浩平というらしい。

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