元宝物の粗大ごみの回収が、まだ来ない。印をつけて外に置けばいずれ回収されると聞いて早7ヶ月。収集車は事故にあいましたか。それとも人手不足ですか。それともこのごみ、まだ宝物に見えますか。
懐かしい場所に行っても、もう何も無いから。「きみ」と「社会」の二重のいざこざに巻き込まれて、あの土地は死んだ。だけど思い出はよごれるわけがないって、知ってる。誰にも触られないようにって、よごされないようにって、でっかいお守り袋の中に入れておいたから。「お守りの中を覗いたら効果が無くなるよ」って噂はズルい大人の言い訳で、本当はお父さんやお母さんのきたない過去が詰まってるんだよ。きっと。大人になった僕は、そう思う。
急に悲しくなって、涙が出て、よかった。もし涙が出なかったらこのモヤモヤが、悲しみか、切なさか、喜びか、ただの春だったか分からなくなるから。悲しみでした、おめでとう。これは「捨てていい感情」だから、燃えるごみに出せますね。ところで、粗大ごみの回収は、いつ来ますか。人手不足ですか。私が壊すべきですか。
駅前のビジネス書。「好きなことだけして生きよう」なんて言葉に啓発されて、素直になったね、僕。子どもの頃はもう少し大人びていた気がするんだけど。折り畳み傘はいつも持ってたし、ハンカチは毎日洗ってたし、ご飯粒は最後までかき集めてた。8時には、ご飯粒、全員集合。だけど今は「急な雨に濡れるのも好きなんだよね」って無理して笑うし、ハンカチなんて送別会でもらった後は行方不明だし、炊飯ジャーは宇宙。宇宙を吸い込んでむせるのは、あまりに宇宙が綺麗だから。
星座と名付けられたあの星たちは孤独。平面で見たら、あの「1番ひかる星」と「2番目にひかる星」はお隣さんかもしれないけれど、宇宙を横から見たらきっと、あいつとあいつはかなり遠い。この話、秘密だよ。誰かから見たら仲良しな僕たちも、本当は喧嘩してるんだよ、っていう秘密と、似てる。星は遠い。無理やり「星座だね。家族だね。仲間だね。」てまとめ上げるけど、本当は孤独。かわいそうなものを見るのが苦手な優しいフリした人間が、自分たちのエゴでまとめ上げた、星。ごめんね、勝手に「寂しくない」ってことにしちゃって。寂しくなった星は、家族ごっこに耐えきれずに「ほんとは寂しい」ってこぼれ落ちるんだろう。それが流れ星。ごめんね、そんな時にのんきに祈って。
まるで切なくなるために生まれてきたような表情ばかりしちゃって、みんなを困らせてきたね。でも最近はこの切なさにも値段がついて、150円で買ってくれたり、お賽銭みたいにぽーんって応援してくれたり、写真を撮ってくれたり、なんだって続けてれば価値が生まれるのかもしれないねって、思い始めてる。切なくなり続けてよかった。よかったのかな。よかったと思わなきゃやってられないような、悪天候の春。
「雨だから体調が悪い」って言い訳してきたけど、いよいよ違うって、分かった。雨だから悲しくなるんじゃなくて、僕が悲しいから雨が降っている。僕に合わせて天気が変わる世の中になったもんだ。世界の中心を「僕」にするために、天気を自分のものにした。
天気予報はいらない。君が会いにくる明日は絶対に晴れです。他の県のことは知らない。
ただの日記です。
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