夏の旅

ことなるそらの
所有する部屋に居ながら
かつてない感覚に均され
不規則にはじける
泡に触れ
ひとつの木から
語られた末娘を
後ろ手にひきながら
睫毛のような雨を避け
ゆめは夜明けまえ
浅く逃げ惑うさかなの
透きとおるまえ
甘い水に
所有格を外しても
みずからでいる

他人の土を
踏み続ける
動線の途中の
利用されない歩道の
傾斜地の明るく
尖った周囲に続く
あのイケてない
ほそばの生垣
が母の家だった
しまい湯に浮かべた
夏みかんと
夜道ですれ違った
タンパク質の腐臭へ
いつか白露をそそぐ
までの旅がある

* ほそば=まきのき

露わな土のあかるく
固い部分のつづく
誰も見ようとしない
草の生うる
見ることの
できる限りの
範囲が好きだ
早く、高いところへ登り
もう一度
そこを眺めてみたい
夏の旅の途中で

(夏の旅)#pw連詩組

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