詩的実験(1)

銀貨と背高泡立草が不協和音をかなでるような昼
耳朶をもぎ取られたような睡眠が繁茂しているふるさとである
空っ風の吹く浜松のじゅうぶんな引力に付着する寒さは
静謐な脳髄のような月をかかげては鏡面にすべりおちる
鳥の意思をもって空を構築する神の眼のふたつの義眼
有機物が無機物に変わるたとえば名字のかわるようにかなしく
鳥をうちおとしてしまう日差しへと濃硫酸を流した風景
不器用な月のひかりの背部へと蒼く傷つく詩的喩をかく
星の犬と比較のできない落とし物の隙間をむりやり切断しては
憩室の内側にある粘膜のあかるさのなかで溺死し得ない

#詩的実験

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