皆既月食

いつまでも終わらない
ルービックキューブのわたしと
わたしでないひと
を、はじめるように
いけないことをした
苦い薬を飲んだ朝の
もとの場所を覚えられない
双葉の生えるように
頭頂を突き抜けた入口の、あの明るさ
の北向きの部屋のつかのま
ペントバルビタールナトリウムで
ふかく落ちたあと
憩室は隠され
営みの甘いモニターの
波形の横で擦り込まれた
乳液の沿岸部までとどく

赤い太鼓橋を渡ると
お祭りは焼かれて
街の外れの抱擁と
映された空のように
重量のない記憶
夜まで踊っていたひと
きっと穴に落ちて
また、窓のない部屋の
うっすらと外光に触れる

生まれる前から兄弟であった
土地のように
遥かな中心点から
戻るときの
眉も目も口もない誰かに質問され
離脱できない開放が
いま始まろうとする
饒舌になれば背骨は透きとおり
解毒された影の
後退がはじまる

そう癌の病巣など、とか

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