皆既月食
いつまでも終わらない
ルービックキューブのわたしと
わたしでないひと
を、はじめるように
いけないことをした
苦い薬を飲んだ朝の
もとの場所を覚えられない
双葉の生えるように
頭頂を突き抜けた入口の、あの明るさ
の北向きの部屋のつかのま
ペントバルビタールナトリウムで
ふかく落ちたあと
憩室は隠され
営みの甘いモニターの
波形の横で擦り込まれた
乳液の沿岸部までとどく
*
赤い太鼓橋を渡ると
お祭りは焼かれて
街の外れの抱擁と
映された空のように
重量のない記憶
夜まで踊っていたひと
きっと穴に落ちて
また、窓のない部屋の
うっすらと外光に触れる
*
生まれる前から兄弟であった
土地のように
遥かな中心点から
戻るときの
眉も目も口もない誰かに質問され
離脱できない開放が
いま始まろうとする
饒舌になれば背骨は透きとおり
解毒された影の
後退がはじまる
そう癌の病巣など、とか
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