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教祖が来る/第九十二回お題「来る」

 接続信仰の教祖が来る。報せを届けたのは奇妙な仮装の男女だった。
 小西あきらにとって十代最後の冬。バイト上がり、愛車のベスパにまたがる直前。居酒屋裏の駐輪場という、あまりにも不釣り合いな場所。男は溶けた時計の飾りを全身にくっつけ、女のほうは顔面を白黒のストライプにペイントしていた。狂ったおとぎの国の王さまとお妃のようだ、と小西は思った。
 小西が通報するまえに、ふたりはジクウカンテンイがどうこう言い合い、人違いを丁重に詫びて立ち去った。
 以来、小西の端末はParallel Methodなるネットワークに「接続」されっぱなしだ。小西はこれを神回線と呼び、謎の二人組を接続おばけと名付けた。

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