舞台ダブル感想

いやもう舞台ダブルめちゃめちゃに良かった。

まず脚本演出の話
最初はおっワンシチュエーション?これどうなるんだ?って思ってたらやってみてよ、で回想シーンや劇中劇をやるのになるほどね〜!!となった。
原作ものという点で舞台ダブルは所謂「2.5次元」だと思うんだけど、2.5次元作品を役者の力ではなく演出・脚本の力で「2.9」ぐらいにした感じ。
 そのぐらい原作の、いわゆる舞台化とは違っていた。
和田雅成さんが宝田多家良をやると決まった時に、宝田多家良は多分和田雅成さんの中にない(依存癖、逃げ癖、何もできない)男なので、宝田多家良を理解した上で作り上げていかないといけないだろうなーと思ってたら舞台そのものがそんな感じだった。
ダブルの原作自体がかなりの密度で描かれてる作品なので、舞台化が発表された段階で「監督おらんがどこまでやるんや!?」と思ってたら高密度の部分全部やった。
しかも高密度の連続で胃もたれしそうなところを飯谷さんというほぼオリジナルキャラクターで密度を抜かせてる。
でも与えた情報は抜かない。
無言劇演じる飯谷さんを多家良と友仁は二人で飯谷を見つめていて、あくまでも地続きの物語になってる。
これは本当に構成力がすげ〜と思って、青木さんがすごい。
そして中屋敷さんの今までの作品をwikiったらつかこうへい作品も沢山やってらっしゃって、ハーーーーン。
和田雅成さんの八月の舞台、飛龍伝だったりしねえかな〜???
話を戻しますがマジで青木さん、原作者の次にダブル原作読み込んだんだろうなと思う。
話を分解して要所を抜き出して再構築、並の労力じゃないし思い切りもすごい。
ダブル原作読んでたし今回の舞台化でまた読み直したりしたけど私は全然読んでなかったな…と思った。
これ原作者に見せる時ドキドキしただろうな…。

唯一、二人の着替えで季節感を出してるんだろうけど着替える流れがナチュラルすぎてそこに区切りを感じなかった。
思えば「ちくわに入れるきゅうり切って」も夏野菜の季節を表してたのかな?
なんせ時間経過は分かりにくかった、多家良が外を歩き回ってるシーンも分かりにくかった。
ワンシチュエーションなので仕方ないと言えば仕方ないし、分かりやすくすれば絶対に「区切り」が生まれてしまうので、休憩なし2時間20分でいこうという決断といい致し方ない部分なんだろうなと思うと作り手の苦労が見える。
観客の没入感優先したんかなーと思う。

おおまかなストーリーについて
そも原作ものなので、ネタバレという概念は存在しないと私は思ってますが、にしても「漫画で描かれなかった」もしくは私が読み取れなかった部分を役者の力で埋めてるの本当にすごかった。

原作では友仁さんはもっと粘着質で、ぶっちゃけ多家良とどっこいどっこい感があったけれども、玉置さんの友仁は爽やか!
冒頭のお姫様抱っこイチャイチャしてるシーンが本当にあの素晴らしい愛をもう一度。
お互いにくだらない事で触れて笑ってイチャイチャするのが一番楽しいし幸せだよねえと思うし、鴨島友仁あまりにも宝田多家良に優しく触れすぎて、それでお前好きっていうなになはちょっと無理がありません!?ってなる。
そんな触れられ方したら好きになるだろ!
単純接触効果って知ってるか!?依存させない為に距離を置く!大人の処世術!
「男の誠実に踏みつけられる女の気持ち」かもしれんが、多家良も多分同じ気持ちだぞ……ってあの鍋のシーンの友仁さんの手を大事そうに抱える多家良を見て思う。
それだけだったらこの野郎で済むんですけど、多家良の頭を抱いて空っぽの多家良に己の解釈を詰める鴨島友仁まじでエゴイストの塊すぎて好きなんですよね、困ってます(困ってない)
鴨島友仁にとって可哀想なのは演劇において「数式は合っている」って感じなんだろうなと思う。
なので鴨島友仁の数式に天才宝田多家良を載せれば完璧が産まれる感じなんだろうなと思うと皮肉い。

「多家良の芝居は俺を超える事で完成する」

って言うのが役者鴨島友仁にとって悲劇であり、多家良に出逢えたことが最大の幸福であるみたいなね、そういうよくあるやつね、はーーーー鴨島さん可哀想でかわいいね…。
でも空っぽの多家良に自分の解釈を詰めるの楽しくて手放せなかったしだから優しく触れるしキスもしてやるんだろう…断ることで多家良を傷付けたいわけじゃなくて、宝田多家良が…大好きなんだね……エゴの延長かもしれないけれど…宝田多家良を愛したことに違いはないんだねを噛み締めてた。

無言劇のところはすごかった〜。
皆のやつがみたいなとも思ったし、実際座組でやったんではなかろうか…観たい…。
しかしここの多家良くんの押し潰される感じも苦しくなる。
その後のあきちゃんとの賢者タイムの時に「何がそんなにつらかったんだろう」にまで辿り着くのも、なんか「人生」だった。
宝田多家良は友仁さんに育てられて、そして別のところで暮らし始めて、ようやく一人の人間として生きていけるようになったんだろうな。
だから依存ではなく〜に繋がる。
多家良は秘密を抱えることはできないだろうと思うと伝えれて良かったなと思うし、最大限のアイラブユーが「世界一の役者になる」なのもいじらしいなって思う。
本当に多家良は可愛いね…。なれるといいね。

初級解説の轟オンステージはこの辺りから影を潜めてた轟くんフルスロットルで私の好きな轟くんだ!!になった。前半は本当に影を潜めて私の好きな轟くんが…圧倒的スターが目立たん…だったので…。
中屋敷さんのこと何も知らんけど、割と引き算が得意なんか、役者全員が手慣れてるから自分たちのシーン以外は息を潜めることができるのかバランス感覚がすごい。
大体このぐらいの人数が結局芝居を見るのに一番良いって話なのかもしれないけど。
ヘルメットかぶっていそいそ準備する宝田多家良(5歳)も可愛かったし、友仁さんに本当は最初から服着てて…って説明するのもリアルだったし、それこそペンで書く、飲み物を飲む、全部ちゃんと行うのが、おお!となった。
あの辺元から書いてあるのとか飲んだふりとかが多いので、変な話「ありなんだ」とすら思った。役を生きてる。
役を生きてるで思い出したけど、和田雅成さんが昔「歩む」って言ってたの多分和田雅成さん6年生?7年生?の皆が思ったと思う。
昔から貴方はそうやって…芝居をしてくれましたね…ってしみじみとする。

余談だけどダブル未読の友人の第一声が「宝田多家良って、つまり何もできない北島マヤってこと?役作りすらもできない天才?」って言ってきて
「その空っぽの天才に自分の解釈を植え付けて育ててるのが友仁さんだよ」と伝えてた。
本当に改めてこの二人の関係性?癒着っぷり?とんでもないな…。


各々の役者さん

・飯谷さん
ほぼオリキャラとしての活躍でしたが明るくダメ人間ではあるものの、様々な不具合を帳消しにして愛されるキャラクター、役だなと思った。
可愛かったし緊張感をいい塩梅で抜いてくれた。
バカみたいに笑う客層じゃなければもっと真面目な雰囲気になるのかもしれないけれど、一番客席の影響を受ける役だと思うので良くも悪くも匙加減がその日その日で難しそうだなーと思う。サーカスではピエロが一番偉いみたいな話だ。
私は客席の笑い声がノイズになるタイプなので(笑わん女)この方のシーンが楽しめず残念だ〜でも客席の笑い声は貴方のおかげだよ…。

・あきちゃん
ちょ〜かわいかった。
原作のあきちゃんは言うて多家良のこと好きやん…があるけど、舞台版はそこまでの掘り下げがないのもありふらっとで、だからこそ多家良も身を預けて流されることが出来たんだな〜なんて認識。
原作のあきちゃんはめちゃくちゃ多家良に惹かれてるけど、舞台のあきちゃんはもーしょうがないなぁと対等で、それこそ役者同士でありながら役者同士と言う垣根を性別を持って超えることが出来た、みたいな感じ。
この役割は友仁さんじゃダメなんだよなー!と思う。
私は原作のあきちゃんvs友仁の役者のぶつかり合いも好きだったので、今回は省かれたけれども友仁さんがなれない唯一無二のポジションに、あきちゃんはなれるなが本当に良い!
多家良にとって、役者ではない宝田多家良で居られる存在なんだろうね…。

・冷田さん
冷たくない!優しい!お母さん!慈愛!自立!
多分フィジカルもメンタルも作中一番強い。
原作では「この人どこまで仕事なんだろな」みたいな優しいけれどただ善人なのか、多家良が大事なのか仕事なのか分からんな〜と個人的な印象でしたが、舞台は本当に冷田さん自身が宝田多家良という役者に惹かれて大事に大事にしてる感じがとてもよかった。
性格的な善性によるものではなく、宝田多家良にだから発揮されてる優しさ、ってのを感じたんですね。
多家良にとってお母さんであり、友仁さんの負担を(負担じゃない!)担う存在としてあまりにも良い緩衝材的な役割。冷田さんと多家良の時だけ多家良になりたくなる。

・轟くん
井澤さんと発表された時からいやもう絶対に良い!と確信してたしめっちゃめちゃに良かった。
ただ轟くんらしさが出てくるのが後半のみなので、前半にも!もっと出してええんやで!と思った。
ただ飯谷さんと初対面シーンだし難しいよね…ではあるけど。
友仁さんとのシーンが本当に対等でよくて、でも「10分早く出れば良いだけだろ」が削られたのは悲しい!!!
仕方ないけど!!!私は原作のあのシーンの轟くんが大好きだったから……一番役者を「仕事」にちゃんとできてて本当に好きなんだよね…轟くんの井澤さん本当にドンピシャすぎてたありがとうございました…。

・友仁さん
写真見た時にいや本物!!!って思ったけどずっと本物だった。
ただ随所随所に薄気味悪い支配欲であったり羨望であったりが見えて、どうしても端折られた原作部分を込み込みで見せてくるのですっげ〜!!!(IQ3の感想)だった。
あとこれは個人の解釈ですが、原作では普通に気まずいからトイレ行くだけかなと思ってたら舞台版は「口をすすいでる」ように思えて、ああ本当に「そういう意味で多家良を見てないけれども、多家良のためにしてやったキス」なんだな……って思うと悲しくもあり友仁さんの優しさも感じた。
やっっっさしいんだよな〜〜!!!!by多家良
「お前の周りにはいつも人がいる」の劇中台詞を読み上げたあとの「俺にはお前しかいない」が切々としてて苦しくなる。
空っぽの宝田多家良に自分の解釈と芝居を飲み込ませて理想を作るのはめっちゃ楽しいし言うて手離せないのは友仁さんなんだよな……が良い…。
今回多家良の家というワンシチュエーションなのもあったけど、友仁さんのこの台詞で完全に「多家良と友仁の二人で暮らすワンルーム」が完成したというか「あー世界閉じました。終わりでーす」の気持ちがあり、私は閉塞的で互いしか必要としないのが大好きなのでめっちゃ良かった。

・多家良
いや〜〜和田雅成さんのお芝居浴びたーーー!!、!
裸足!イエス!コミュ障!イエス!血走った目!イエス!
和田雅成さんのお芝居は繊細さが売りだと思ってるので、多家良の日常的なシーンは相変わらずすげえな〜と思いつつ、劇中劇の無言芝居とかの血走ってジッタンバッタンしてるのは追い詰められてる男、酒が美味え!って純粋に思える。純粋とは。
追い詰められてる男の芝居が世界一似合うんですわ…。
和田雅成さんに膝を折り血反吐はき這いつくばりながら立ち上がらせる芝居をやらせたい脚本家が複数名いるのも納得の男。顔も身体も芝居も全てが加虐的に合いすぎる。
これは鈴木拡樹大明神が言ってるので(ちょっぴり不幸が似合う)もう総意だとすら思ってる。
ただちょこちょこまだ多家良として芯が通ってない感じがしたので客席の反応を受けてここから固まってく部分が多そうかなとも思った。仕方ない皆より稽古圧倒的に少なかっただろうし…。
なのに宝田多家良は一番難しいだろうし…千穐楽の配信を楽しみにしてます…。
キスシーンでマチネよりソワレの方が「縋り付く」感じと「キスされ慣れてないけれどももっとして欲しそうにしてる」感じが恋をした男だ……と感じて好きでした。
恋愛もので和田さんの恋の芝居の引き出しって女性寄りだなという印象があり、まぁそりゃ「恋をしてる人」って和田さんから見れば女性を見る方が多いだろうし、この人恋した事ないんだろうな〜ってずっと思ってたけど今回BLを履修した(?)からかちゃんと男性が恋をしてて良かった。個人的には「ねぇ先生」以来の恋してる良さがあった。本当に可愛かった。
色んな芝居をそれこそ6年?ホラーか?みたいな年月観てきて、また新しい姿が見れたのでめちゃくちゃ忙しいだろうに仕事を受けてくれてサンキューな、これからもご活躍を心より楽しみにしてる。









+めちゃ余談+

ダブルをボーイズラブと言っていいのか、私にはよく分からない。
人から勧められれば商業とかなんでも読んだりはするものの、見ての通り(?)自分の世界観が強めな人間なので二次創作に至ってはオールキャラすらも殆ど読まず、むしろ歴史ジャンルを転々としたり若い頃はオリジナルで歴史の話を書いてたらしたので歴史解釈強めの二次創作であれば読む、これは池波やしばりょを読むのと同じ感覚で「歴史の解釈」として読むという感じ。

特に「ブロマンス」という解釈が私はよく分からず、嫁が居ようが男性同士で愛があればボーイズ(男の複数系)かつ愛(恋であり愛である)であればそれはボーイズラブでありBLだろ…と思うんですよね。
結ばれなければ愛としないのは横暴すぎる。
ボーイズラブって多様性の話であり、愛には様々な側面があるので、性行為の有無や嫁の有無はどうでも良い。
なのでこれはブロマンスでありBLじゃない!!!って解釈がのさばった時、2010年前後のシャーロックがこの解釈の火付け役だと思ってるのでその頃あたりからもうぜーんぜんBLがなんなのかなんて分からんのです。

ただ間違いなく言えるのが、鴨島友仁は宝田多家良を傷付けたくないぐらいに、多家良が望むならキスをしてやれるぐらいには愛しているし、宝田多家良も鴨島友仁を独り占めしたい気持ちを世界一の役者になるという方向で振り切るぐらいには愛している。
男同士の愛の話なので受けも逞しくあれと思うタイプなので、友仁さんをお姫様抱っこする多家良を見た瞬間に“なるほどね”の感情になりました。
芝居の話であり、役者の話であり、まさしく“男同士の”“愛”の話だなって天ちゃんおもうわけ。

まぁ私はダブルでBLやるなら友仁と轟なんですけどね(オチ)

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