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『メディア/イアソン』 観劇感想


今年の観劇目標は「興味あるものをふらっと色々みていこう!」なので芳雄さんが出演されている本作品みてきました。脳内に居座っている思考を取り外したいので細かい感想というよりかはざっと書いていきます。

≪attention≫
・しっかりネタバレあります。ご注意ください。
・取り留めない文章です。読みにくい。

最近はミュージカル作品ばかりみていたので久しぶりにTHEお芝居という印象を受けました。歌は例の子守唄のみ。全体的にいい意味で芝居がかっていて”沈黙と感情の波”をただただ受け止めていくみたいな感じかもしれない。

ギリシャ神話といったら私のなかで月の女神の物語が強烈。一目惚れしたエンディミオンと一緒にいるために一方的に永遠の眠りにつかせて夜の時間だけを共にする。昔は好きなギリシャ神話だったけど今思うと自己中な女神だな。これでいうとメディアは恋した男とずっと一緒にいたかったけど、結局失敗した。

『メディア/イアソン』の演出面での感想は美しい影絵。あとギリシャの壁画に描かれた物語をみているような。そんな感じ。わたしが受け取った物語の真意を一言で表すならそれは「利己的な欲望が招いた破滅」かも。人間本来の自分勝手な性質が浮き彫りにされていくイメージ。

本作はかなり考察しがいがあるなぁと思っていて一から書くとほんとに終わらない。細かいパズルが幾つもの存在していてきっと回数重ねるごとに深みを増していくタイプだなぁ。ただ、わたしが今回書きたいのは彼らの間に起こった悲劇って結局なんだったのかってことで。それはたくさんのことが重なって最終的な結末になるわけですけど。

まず最初に衝撃を受けたのはメディアが実弟の命を犠牲にしたこと。これはね。ほんとに凄くて。三浦くん弟が気弱で優しくてかわいらしくて純真無垢な存在だったから余計にメディアのサイコパス具合が発揮されているなと感じた。

時系列を遡るけども。メディアはイアソンに手を貸すと決断したときも自分への被害が最小限になるように弟と会話をしていて(結局国を追われているが)、そして弟にも何かあったら私が手助けしてあげると約束しているのに裏切る(弟はお姉ちゃんと一緒に外の世界をみてみたかっただけ)、そしてイアソンもほんとに最低野郎なんですが、メディアだけ船からおろせば自分たちは助かるって思って彼女にそれを伝える(最低)そしてメディアは自分自身が生き残るために、弟の身体をバラバラにして海に投げるようにイアソンに指示をする。そうすれば亡骸を海から拾うために父親は我々を追跡するのをやめるだろうって。いや、頭が良すぎでほんとに怖い。

何が言いたいかというとこの時点でメディア/イアソンはもう自分のことしか考えてない人たちなんです。彼女が何かイアソンにお願いをするときは「命を救ってあげたのに」って恩を押し付ける。これは別に悪いことじゃないけどだんだんと度が過ぎているのが問題。で、イアソンは自分の目的のためにメディアを利用した(恋に落ちたのはそうなんだろうけども)そして、面倒なことになったと思うと置き去りにしようとする(これは最後までそうだった)

最終的な悲劇の前に、すでに悲劇は始まっていて、メディアは肉親(弟)をこの時点で手にかけているという事実。自分のために、保身のために。そして復讐のために自分の子供たちも。


イアソンは最初は良い人なのかな?と思っていたけど段々とそうでもないってわかる。そういえば三浦くん虎の被り物アキレウス?も道中で置き去りにするし、結構こちらも保身のために他者を犠牲にしがちかも。ちょっと嘆いてたけど。

終盤では金羊毛を片時も離さず、態度もでかいし、なんというか金羊毛があれば俺は最強って思っているタイプなのかな。黒焦げになりかけのそれもずっと持っていたし。あれは忘れられない過去の栄光、権力への固執とかのイメージかも。かつて素朴で権力に興味なさそうな若者がそういった欲望に傾倒していく様を見せられたようだった。

あとメディアは子供を3人授かるけどあの感じだとほぼ放置してそうで、三浦くんお兄ちゃんが小さい妹の面倒みてた感じなのかな。ずっと可愛い二人だった。末妹ちゃんが本当にかわいくて天使。特に3人の子供たち演者さんは演じ分けが多く、舞台セット移動や蛇そのほかすべてを回していて超絶ハードそうだった。アスリートだよまじで。あと三浦くん召使いの一人芝居ほんとに鳥肌。みんな凄いよ。

そして、もう一人の娘ちゃんだけが生き延びたのはメディアに残っていた最後の良心がそうさせたのかもと思いつつも血塗られた白い衣装が強烈でカテコでもそのまま登場したから依然としてわたしは気持ちが重苦しいままだった。

メディアのサイコパス加減とイアソンの自分勝手な行動。これは現代においても人間が抱えているもので、世の中の犯罪やそのほか諸々事象だって同じこと。わたし自身が彼らのように破滅しないように生きていきたいなって思ったり。


「眠りなさい。世界がまだ混沌としているから。」暗闇の中で昔から変わらずに輝く満月、人間の性質っていうのは今もはるか昔もそう変わることなく混沌としている。


終わり。

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