余命10分 / 2023年1月9日 — 今年の牡蠣。

2022年12月30日 晦日

ぼくがしゃぶしゃぶを用意しているあいだ、東京から山形まで4時間とちょっとの運転で疲れた父はテレビを見ながら静かに晩酌をはじめる。妹と姪は、弟が家電量販店で務めていて、ニンテンドー DS を大画面でプレイできるモニターをこのあいだ設置したらしく、ゲームに夢中だ。

ここ数年の加藤家の年末の恒例といえば「岩牡蠣」だったらしい。ぼくも帰省の際に1度か2度、食べた記憶がある。恒例とまでは知らなかった。

聞けば「岩牡蠣」は毎回、母が予約をして取り寄せていた。今年はどうしようか、と、家族の LINE で相談してみると、父から、

「すでに私たちふたりの名前で予約していたそう」

とのこと。夫婦の連名で予約をしてくれていたらしい。いったいいつどのタイミングで予約をしたのだろうかと思いを馳せる。去年のいまごろ、お礼を兼ねてか、自身の病気がわかってからか、それとも死の覚悟をしてからか。

この年末も一緒に大好きな牡蠣を食べるつもりだったのかもしれない。

ちなみにそんな牡蠣は、不在で届いていなかった。妹が不在通知に気づき、慌てて再配達を申し込む。大晦日へ持ち越し。

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