余命10分 / 2023年1月4日 — 台所。

改めて説明すると、これは10分で書きあげる、天国にいる(はずじゃなかったけど)母のための日記です。

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この年末年始の帰省では、台所担当は妹でも弟でもなくぼくがやった。それは料理の腕に多少自信があるから⋯と言いたいところだけれど、自分の食べたいものをしっかりと確保するためだったと思う。

年末の恒例のすき焼きにしゃぶしゃぶ。できあいの惣菜で済ませていた葬式の前後よりも工夫して、ちょっとした付け合わせは作った。

かつて「かまど」があってもおかしくないくらい古い台所は広くて、でも母も祖母も、たぶん曽祖母も、さほど広くはつかっていなかったと思う。そもそも牛舎の横。

そんな台所は、かつてのぼくが、自分のビールを取りに忍び込む場所。親戚の話が退屈だなと思ったら逃げ込んでおばさんたちに笑顔を振る舞いつまみ食いをするような場所だった。

100年以上、何度も何度も、何人も何人もいろんな人が手をかけ積み重ねてきた「使い勝手」の現場。効率や便利よりもそれぞれの「勝手」が大事にされている場所。それはとても使いづらい台所で、完璧な台所のようにも思えた。

40年も生きてきて、この台所のすみずみまでを、自分が感じとる日がくるなんて思いもよらなかった。

明日からはこの台所で感じた大事なこと、不思議なことを少しずつ記録で残そうと思う。


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