誰も悪くない

　遠い昔、ある人が、私が嫌な目にあった時、その被害に対して無視した。その話をしたら、うるさそうな顔をして話を逸らした。その人は私の近い人で、私は慰めてほしかった。

　怒りが湧いてくることもあった。なんで？と何度も思い、人間不信になって自分なんて孤独だと思った。自分を中途半端に雑に扱おうとピアスを病院で開けた。病院という所がなんともビビリであるが。とにかくピアスの穴を開けずにはいられなかった。私の心の穴を象徴する何かが欲しかった。

　たぶんその人はそんなことがあったことすら忘れている。私は歳をとり、そんな被害くらいで悲しんでいた自分は子供だったなと思うようになった。忘れなきゃ人間は生きていけない。

　だけど、どうしても許せない夜もある。

　そして、最近ある術を身につけた。誰も悪くない。自分を責めることもせず、相手を責めることもしない。相手を責めるのは責めるので辛いのだ。

　そう、この世の中は理不尽なことだらけ。人間は完璧じゃないから、みんながんばって生きても、生きているからこそ人を傷つける。

　そうだね、あなたも辛いから無視したんだよね。違かったとしてもそう思いたい。