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エンジニアと本と人生

#エンジニアと人生 #1 Advent Calendar 2022の7日目を担当します、mattyこと猪股です。

普段はGovTech関連のサービスを開発している株式会社グラファーという会社でWebエンジニアをやっております。

エンジニアと人生コミュニティには2022年3月に入りました。
当時から一人暮らしをしているので、コロナ禍で他者とのつながりが薄くなり、「何か社外のエンジニアとも繋がれるコミュニティって無いのだろうか」と思っているときに読んだのが以下の記事でした。

ここでエンジニアと人生コミュニティというものを初めて知り、「まあ嫌だったら抜ければいいか」と軽い気持ちで入会ボタンを押したのを覚えています。

そんな私も記事が上がる頃には入会して9ヶ月。
オフ会にも何回か参加させてもらって、当初目的としていた「社外のエンジニアとの繋がりの獲得」は早々に達成し、メンバーとの交流や知らなかった情報に触れることができたりと、色々楽しくやらせて頂いております。

エンジニアと人生コミュニティの特徴の1つは、有志メンバー主催のイベントが活発であることです。
自分の共有したいナレッジがあればLT会が開催され、メンバーの交流の場としてオンライン交流会やコミュニティ内Podcastが企画され、メンバーと一緒に読みたい本があれば輪読会が行われたりします。

私はそのコミュニティ内イベントの1つである「ゆる読書会」によく参加しています。
「ゆる読書会」とは、毎週水曜日 21時から(記事執筆時)、Gatherというオンライン会議ツールに有志メンバーで集まって、前半30分で好きな本を読み、後半30分でその本の内容を共有するというもの。

私はこのイベントが好きで、極力毎週水曜日の夜は空けるように意識をしています。

このイベントが好きな理由はいくつかありますが、その中で一番大きい理由は「読書会」ではなく「ゆる読書会」と名付けられるほど、ゆるい会であるという点です。
この「ゆる」という形容詞とそれによって醸成されたイベントの雰囲気が、まさしくこのコミュニティ全体の雰囲気を反映しているようで、私はすごく好きです。

どれほど緩いかというと

  • もちろん技術に関係ない本でもOK

  • 内容がまとまらなかったり、発表しなくなかったら、発表しなくてOK

  • なんなら本読まずに、他人の発表だけ聞きに来てもOK

というもの。
とにかく、メンバーが読書の習慣をつけたり、普段本を読まない人が1歩でも本に近寄ってくれることを目的にしているので、イベントに出るだけでみんな偉いのです。

本とコミュニティ

今回は、そのゆる読書会で私が読んだ本や、メンバーの発表を聞いて面白かったものを上げていこうと思います。

しかし、私は先程「『ゆる』という形容詞とそれによって醸成されたイベントの雰囲気が、まさしくこのコミュニティ全体の雰囲気を反映しているよう」と書きましたが、実際に「コミュニティの雰囲気がどんな感じなのか」という点を説明していませんでした。
なので、本について筆を進める前に、「本とコミュニティ」という観点から、私が思うこのコミュニティの良さについて説明をさせてください。

この部分は主にコミュニティへの入会を悩んでいる方、まさに9ヶ月前の自分のような状況にある人に読んでもらえれば幸いです。

本を読む理由の1つとしてよく言われているのが、「著者の体験を追体験できる」というものです。

「著者の体験を、著者自身の一人称で記載された本を読むことで、自分が似たような境遇に陥ったときに活かすことができる」という言葉は様々な場所で、読書を勧める常套句として使われています。

このコミュニティでは、まさしくその読書で得られる追体験がメンバー間で得られるのではないかと思うのです。

コミュニティの名前の通り、「エンジニアと人生」コミュニティでは、様々なメンバーが「エンジニアリング」と「人生」について話しています。

「人生」というと大層なものに聞こえますが、「転職先選びに悩んでいること」も「昨日のランチがメチャクチャ美味かったこと」も「自分の子供が可愛すぎること」も、全てが人生です。(執筆現在では、メンバーそれぞれオススメのプロテインを紹介し合っています。これも人生。)

そして、この「人生」の部分の多くは、それぞれのメンバーの分報で、リアルタイムに更新されています。

それ故、1人のメンバーの大きな成功や喜びに対しても、コミュニティのメンバーはその過程を分報により追体験しているような感覚があります。
よく「成功の裏には涙ぐましい努力があった」という美談がありますが、まさにその「涙ぐましい努力」の部分を、リアルタイムで見ることができるのです。

また、「大きな成功や喜び」は、仕事の内容だけではなく、「試行錯誤の結果、家庭内のコミュニケーションがうまくいくようになった」「自分の趣味の技能が上達した」なども含まれます。
まさしく「人生」というべき、仕事以外の事柄に対しても、その過程から楽しんだり、助けを求められるというのはこのコミュニティの強みかなと思います。

昨今キャリアの多様化やアンラーニングが騒がれていますが、特にエンジニアはパソコンがあれば仕事ができてしまうという特性上、仕事により発生する時間的・場所的な成約が少なく、労働時間や住居などに対する選択肢が肥大化しがちです。
そんななかで、多様なキャリアや人生を歩まれるメンバーの姿を見られることが、今後の自分の意思決定の糧になっている実感があります。そんなコミュニティです。

話を戻しまして、本の紹介に移っていこうかと思いますが、そんなコミュニティですから、「自分が今悩んでいること」に対しての本が読まれることがよくあります。
冒頭で説明したように「技術に関係ない本でもOK」なので、読んでいる本から、その読者のお悩み相談になったりします。
なので今回は、「技術系の本以外」を説明していこうと思います。タイトルや説明の内容から、コミュニティの雰囲気が少しでも伝われば幸いです。

DIE WITH ZERO

コミュニティのメンバーでこの記事を読んでいる人からすれば、納得の選書かなと思います。

あるメンバーがこの本をゆる読書会で読んだのをきっかけに、コミュニティ内に伝搬し、コミュニティ内で一時的にムーブメントが起こりました。
コミュニティのSlackでは:die_with_zero:というスタンプがありますし、ワークスペース全体で検索するだけでも243件ヒットします。

DIE WITH ZEROはその帯にもあるように、自分が死ぬ瞬間にお金を使い切ることこそ、人生を豊かにすることに繋がるという考えの本です。

「老後が不安だから」と、老後に使い切れないほどの大金を溜め込み、実際に亡くなるときに沢山の遺産を残していかれる方が多い中、本書の大きな主張の1つである「老後に使い切れなかったお金は、その金額だけではなく、その金額を稼ぐのに使った労働時間も無駄にしている」という主張には驚愕しました。

また、「使いきれなかったお金は、遺産として家族に分配されるから問題ない」という主張に対しても、「あなたの死後に、50代の子供に遺産を渡すより、あなたが生きている間に、30代の子供に同じ額を渡したほうが有効に使える」という切れ味バツグンの反論を展開しており、読んでいて終始驚かされる本でした。

自分が今持っているお金や、将来稼ぐであろうお金をどう使えば、自分や自分の周囲が幸せになるのか。そんな命題にヒントを与えてくれる本であり、まさしく「人生」全体に対しての重要な問題に向き合っている感情になり、このコミュニティにピッタリな本だなと思いました。

(この本を読んだあとに、コミュニティ内で「DIE WITH ZEROだしな〜〜」とタイトルを免罪符にして、散財をする人がいたとかいないとか)

子どもが体験するべき50の危険なこと

こちらは、私が2021年11月まで開催されていたルール展の物販コーナーにて見つけた本です。

私は現在独身なので、特に子育てについてのナレッジが欲しいというわけではないのですが、本書の中で「子供のときにこんな事やってみたかったなぁ」という体験がいくつも紹介されていたので、気に入って買っていました。

時は流れ、コミュニティ内でお子さんがいらっしゃるメンバーと雑談をしているときに、子供の育て方の話になりました。
そこで本書を紹介したところ、気に入ってくれて、そのメンバーもこの本の感想をゆる読書会で共有してくれました。
こんな感じでメンバー同士でオススメの本を紹介しあうこともよくあります。

この本はタイトルの通り、子供のうちにやっておきたいちょっと危険なことが掲載されています。
「危険」といっても様々で

  • No.2 あられの中で遊ぼう

  • No.18 一人で歩いて帰ろう

  • No.42 レシピ本に逆らおう

といった比較的易しいものや

  • No.6 釘を打とう

  • No.7 私有地で大人と一緒に車を運転してみよう

  • No.45 火遊びをしよう

など、大人の監督が必要なものなど、様々です。

読んでいる私も「これいままでやったことないなぁ」と気付かされる体験も多くありました。

特に、社会人になると、「No.26 かっこいい殺陣を学ぼう」「No.33 ゴミ箱に飛び込もう」などは、やるにもなかなか勇気と準備がいるので、子供のときにしかできない体験かもなと感じます。

お子さんの年齢や、性格によって挑戦できることはそれぞれ違いますが、上記のような「危険なこと」が50個載っている本書であれば、きっとお子さんの挑戦心を刺激しながら親子で体験できることが見つかることでしょう。

この部屋から東京タワーは永遠に見えない

ゆる読書会は「もちろん技術に関係ない本でもOK」なので、小説でもOKです。

本書は東京の荒波に揉まれ、葛藤・奮闘して最後には散っていくという、社会の厳しさだけを抜きだしたような話が20話詰まった短編集です。

読んでいて、決して幸せな気持ちにはならないですが、闇金ウシジマくんを読んだあとのような読後感があって、私はすごく好きな作品です。

この作品の著者の麻布競馬場さんは、Twitterのリプを繋げることでこのような短編小説を書いており、その技法から「Twitter文学」とも呼ばれるようです。

誰にでもオススメできるような作品ではないですが、ちょっとダークな世界観が好きな方には是非手に取っていただきたい一冊です。

ちなみに、同じくTwitter文学を書かれている窓際三等兵さんも、2023年1月に「息が詰まるようなこの場所で」という作品を出版予定されているそうなので、Twitter文学にハマった方は是非こちらもどうぞ。

体験の哲学

有り難いことに私の9月の誕生日に、コミュニティのメンバーの方から色々本を買っていただきまして、その中の1冊になります。

著者の飲茶さんは哲学について博識な方で、これまででも哲学の入門書や、「哲学 × 〇〇」というスタイルの本を数多く出版されています。

哲学と聞くと難しそうなイメージがありますが、飲茶さんの本での哲学の説明は大変面白く、分かりやすいものが多いです。

たとえば私の好きな本の1つである、「史上最強の哲学入門」では、ヤムチャさんが刃牙・範馬刃牙などの刃牙シリーズの大ファンであることから、哲学者を刃牙の登場人物のように描写し、それぞれの哲学者の考える哲学の始まりから終わりまでをコミカルに描いています。

今回紹介する本書は「哲学 × 体験」をテーマに書かれた本です。
「人生とは体験の連続である」という主張から始まる本書は、どうすれば自分自身の体験を最大化して、日々を楽しめるのかという、示唆に富んだ本です。

人間は人生の中で様々な体験をします。散歩をする、コーヒーを飲む、本を読む、文章を書くなどすべてが体験です。
しかし、そんな体験も日々を繰り返すうちに、徐々に習慣化され、作業になっていきます。そうすると最初にコーヒーを飲んだあの苦味も、繰り返される中で徐々に薄れていくのでは無いでしょうか。

そんな「体験が薄れた状態」または「体験を感じなくなった状態」というのは、体は動いているものの、何も思考しておらずインプットも無い、いわゆる「哲学的ゾンビ」状態である、という本書の主張に耳が痛くなるような人もいるでしょう。わたしもうちの1人です。

本書では、そんな「哲学的ゾンビ」にならずに人生を豊かに過ごす工夫が紹介されています。

特に私がすごいと思ったのは、本書の最後についている「体験のチェックリスト」です。
このチェックリストでは、「パン」「飲食店」「遊び」など、様々な角度から体験をカテゴライズし、そのカテゴリに飲茶さんが思いつく限りの項目が記載されています。

例えば、1枚目の画像の左ページに「パン」というカテゴリがありますが、そのカテゴリの中にパンの名前と思わしき項目がずらりと並んでいます。

本書の中で「自分だけの力では、自分が何を知らないかを知ることをはできない」という内容の主張がありますが、その主張に対して著者は自分の体験したありとあらゆる事象を、チェックリストという形で30ページに渡って書いているのです。

この中には勿論私が知らなかった食べ物やお店もありました。

「この世にはまだまだ知らないものが沢山あるんだな」と、自分の無知をとんでもないパワーで知ることになったいいきっかけでしたし、それと同時にこれを書いた飲茶さんの経験値と知識量には脱帽するばかりです。

エンジニアと本と人生

4冊の本を紹介させて頂きました。

この本以外にも、ゆる読書会で読まれた本は記事執筆現在で185冊あり、これからも増え続けることでしょう。

このコミュニティに入ってから、ゆる読書会をきっかけに「次はどの本を発表しようか」という考えになり、読書習慣の後押しをしてもらっているような気がします。

今コミュニティに入っている方は、後半の共有だけでも参加してみると色々と気付きも多いのかなと思いますし、コミュニティに入られていない方は、ゆる読書会とそこで生まれるコミュニケーションを期待して入ってみるというのもアリなのかなと感じました。

今回は「技術系の本以外」という制約を設けましたが、技術系の本も多く読まれています。

私自身まだエンジニア4年目のペーペーなので、エンジニアとして技量をつけるためにも、更に豊かに過ごすためにも、うまく本とコミュニティと向き合っていく所存です。

明日のアドベントカレンダーはYuiさんの記事です!お楽しみに!

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