誰かにたった一冊をプレゼントすること

 数年前からずっと夢だったことがあった。
『誰かに本をプレゼントされたい』というもの。もともと物欲のない自分は誕生日にプレゼント何が欲しい?と聞かれてもなかなか答えられずにいた。唯一、自分が書いた小説を読んで感想をもらえたらすごく幸せだなと思って、そうだ、本をもらえたらすごく嬉しいかも、と思うようになった。自分のことを一生懸命考えてたった一冊をわたしにプレゼントしてくれたらそんな宝物はないぞと。……はじめはそうだったけれど、いつしか『誰かに本をプレゼントしたい』の気持ちに変わっていった。
 いざプレゼントしよう!と思い立って探すのは難しかった。
 よくおすすめの本を聞かれるけれど、人の好みなんて人それぞれで、あなたが好きなジャンルとか知らないしおすすめなんて簡単に紹介できなんだ。自分の好きな本を嫌いだという人もいる。逆も然りで、結局本をプレゼントするっていうのも自分の好きだけが前面にでてしまうんじゃないかって不安だったし、だから難しかった。
 
 はじめて、誰かをおもいながら読書をした。
 たったひとりその人を考えながら読書をした。これを読んであの人はどう思うだろう、とか。なかなか見つからなかった。
「これだ!」と思っても読了後は何か違うと違和感を抱いて、また読んで、そんな繰り返し。いっそのこと、自分で書いてしまうかとも思ったんだけれどうまく筆が乗らず諦める。
 いろいろあって時間がなくなってきて、最後のチャンスで手に取ったのは詠井晴佳さんの『いつか憧れたキャラクターは現在使われておりません。』だった。普段あまり読まない類の小説だったのに、最初の一文から引き込まれてしまった。
 読めば読むほど、贈りたい相手の姿が重なっていった。苦しかった。悲しかった。辛かった。だからこそこれを読んでほしいなと思った。

 そうして決まったたった一冊。本人に渡すことができたよ。
 よかった。気にしてくれていた方、ありがとうございました。

 実は、少しだけ時間があったから短編を書こうと思い立って、結局短編もプレゼントした。
 3日くらいで書き上げたし時間をかけて推敲ともいかなかったけれど、わたしの考えを全面に出した短編ができあがった。ちょっとくどいかも(笑)でもそれを笑うような人ではないって分かっていたから贈れた。
 その作品はその人のためだけに書いた作品だから今後どこかに、というのは考えていない。ただ少し裏話をすると、ずっと前に書いた短編と世界線が重なっていて似たようなものにはなってしまった。ちなみにその短編自体、乙一さんのある短編からかなり影響を受けていてパクリかな?て感じなのでオリジナルさには欠ける。まあそうはいっても今のわたしにしか書けないものだったからよしとさせてください。

 小説が好きだ。小説家になりたいって気持ちは前よりも薄れているけれど、それ以上にずっと書き続けたいって気持ちは強くなってる。小説を書いてる自分が好き。小説を書いて頑張ってるわたしを好きだと言ってくれる人がいる。応援してくれてる人がいる。もう小説がわたしの一部だから。これからも小説を書いていこう。改めて、そう強く思えた人と出逢えた。いい縁だなぁ。

よし。長編かこう! 振り返ってみると去年の今頃には書き始めていた長編が未だに完結していません。本当に怖い。一回離れると数か月離れるから困る。来年には完結させようね?(緩すぎる目標)

笑ってこうね。


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