Bチームの悲劇

二段階降格

このワードを聞いて疑問に思った人も多いのではないでしょうか。サッカー界の常識でいえば、財政破綻でない限り、二段階降格なんてありえないはずなのです。
ではなぜ、こんなことが起こってしまったのでしょうか。
それはセグンダBのレギュレーションが来期から変更になり、プリメーラRFEFとセグンダRFEFのふたつに2分されるからです。
その上で、テルセーラRFEF(今季は4部相当、来季は5部相当)への降格制度も依然として存在していたのが、複雑な今期のセグンダBのレギュレーションです。

アトレティコBは今期、セグンダBのグループ5Aで、10チーム中8位に終わり、上位2(3)チームを除いてテルセーラRFEFに降格する降格プレーオフへと進み、その降格プレーオフでは、8チーム中4位に終わりテルセーラRFEFへ降格することが決定しました。

これにより、セグンダB(3部相当)から、テルセーラRFEF(5部相当)へと降格したため、二段階降格と呼ばれるのです。

では、なぜ二段階降格という結果に終わってしまったのでしょうか。

シーズン前半:昨季との違いと監督の失策

上画像は昨季19-20シーズンのメンバーです。
中心選手は右IHのクレメンテと両翼でプレーしたロロの2人。苦しい状況でもクレメンテが前へ前へとボールを運び、バレラ、セドリックも含めて相手に必ず質的優位を取れるウインガー陣で崩す形が基本。
チーム内得点王は10試合10得点のポベダと、IHながら、攻撃の中心を担い、10ゴールを挙げたクレメンテの2人。

プレーオフまで進出したチームに待っているのはもちろん草刈り場となる現実。
スタメン11人から、残留したのは5人。
中心選手は10人がステップアップを遂げました。

そして新加入選手です。
GK サン・ロマン (ローンバック)
GK ハウメ・バレンス
GK クリスティアン(ローンバック)
CB マリアーノ
CB マルコ・モレノ(昇格)
CM グティエレス
CM カストロ(ローンバック)
CM イザイア(昇格)
OM マリオ・ソリアーノ(昇格)
WG ナンド(昇格)
WG フォルセン
CF テナス(昇格)

以上のように、登録メンバーの半数を入れ替えて新シーズンに望みました。

昨季までアンカーが中心だったトニモヤをIHまで上げて、アンカーにカラベラを起用。左ウイングには昇格してきたナンドを据えますが、攻撃が全く上手くいかず
年末まで8試合で1勝2分け5敗の大不振。

理由は4つ
①クレメンテが移籍し前にボールを運べなくなった。→ソリアーノを起用して改善する試合あり
②ボールサイドのIHが前に出て4-4-2へ守備時に可変するフォーメーションだが、両IHが吊り出される構造的な欠陥。
③両ウイングの能力が昨季に比べて低下したため、サイドからの打開が難しくなる。(バレラにマークが集中する事態に)
④ボルハ、カメジョの不調

これにより致命的な得点力不足に陥るものの、前半戦は大きな修正を加えることなく終了します。
これは監督の技量の問題と言えるでしょう。
※早い段階で監督を切るべきだった、フロントにも問題はあります。

シーズン中盤:冬の市場と3バックの導入

冬の移籍市場で大規模なテコ入れを行います。

主力のボルハ、バレラ、サナブリアをセグンダへローンで送り出し、出場機会のなかったイザイア、パフォーマンスが低下していたマリアーノも放出します。
そして、WGのダボ、リカール1人だったRBにカムス、ボルハの抜けたCFにディアバテを獲得します。

そして戦術も大きく変更します。WGでこそ質的優位は取れなかったものの、昨季から継続して出場している両SBの攻撃力を生かすべく、3バックを導入したのです。
また、得点力不足解消のために、フベニルAで活躍していたシメオネの三男坊ジュリアーノを昇格させます。
更に、スタメンに固定されたマリオ・ソリアーノが、昨季クレメンテが担っていたボールを運んでチャンスメイクする役回りを務めることで、攻撃の時間も長くなりました。トップチームで同ポジションを務めるレマルに負けず劣らずのパフォーマンスは後半戦のチームMVPに値するでしょう。

これにより、8戦1勝だったチームは、その後の10試合で3勝5分け2敗と大きく持ち直します。が、17節のカスティージャとのデルビーに惜敗し、勝てば残留だった最終節も引き分け。
結果、残留ラインに勝ち点1届かず、8位で降格プレーオフへ進むことになります。

最終盤:プレーオフ・監督交代・そして降格

降格プレーオフに回ったアトレティコですが、プレーオフ開始時の勝ち点は3位タイ。
絶対残留の2位との勝ち点差もほぼない状態でした。リーグ戦最終盤の上り調子を考えると残留の芽はしっかりと残っていたはずでした。
しかし8試合で3勝1分け4敗と大きく苦しみ、途中には監督ナチョ・フェルナンデスを解任し、フベニルAの監督アントニオ・リバスを昇格させるなど、改革の手は打ちました。が、解任ブーストは2試合で終了し、得点力不足も解決には至らず。
条件付き残留の3位に勝ち点差1、絶対残留の2位に勝ち点差4届かず、最終節を残してテルセーラ降格が決まってしまいました。

ちなみに、アントニオ・リバスは4-3-3へ戦術を戻し、ナチョフェルナンデスが重用しなかったグティエレスやフォルセンといった選手達を積極的に起用しました。
ベティスでトップデビュー済みのグティエレスはさすがのプレーを見せましたが、フォルセンは能力の片鱗は見せつつも、決定的なプレーを多くは見せることが出来ませんでした。

総括:責任はどこへ

今期もBチームでカピタンを務めたトニ・モヤは、ご存知の方も多いと思いますが、プリメーラのアラベスへの移籍が既に決定しています。他にも、能力の高い選手は多く在籍していました。
それなのに、なぜこんな結果に陥ってしまったのでしょうか。

監督:昨季はクオリティの高い選手を適材適所で配置し、マンパワーに任せるところはありながらも、上手くチームをまとめあげていました。
しかし、多くの選手が入れ替わった今期も、変化を恐れたのか、昨季と同じ4-3-3のシステムを使い続け多くの勝ち点を失いました。

選手:マドリードダービーこそ気概溢れるプレーを見せた選手は多かったものの、1点ビハインドや同点で試合最終盤を迎えても、1点をもぎとりに行くような姿勢があまり感じられなかったのが残念です。

フロント:補強に大失敗、ローン戦略も失敗、監督交代も失敗といい所なし。全責任がここにある、とは言えませんが、今季の失敗の大部分はここから始まっています。
実際に大規模な人事異動が行われているようですが、二度とあっては行けない過ちを犯しました。

来季展望:明るい未来はあるのか

5部相当、となると能力のある選手の慰留はかなり難しいでしょう。
多くの選手が退団、あるいはローン修行の旅に出ることになると思われます。
Bチームと、トップチームのレベルの差を不安視する方も多く見られますし、それは当たり前のこと。
ただ、結局欠員が出てもベンチに入れるだけでほぼ試合には出ない現状なら大きな損害は無いようにも思えます。

来季のBチームは現在のフベニルA組が中心となって行くことでしょう。更に、Bチームでは多くの選手が飛び級で出番を得ることになるとも予想できます。
今まで以上に、より若い年代にもトップチームと練習したり、全年代でのプレーができる機会が与えられるとも言えます。
もちろん、1年でまずはセグンダRFEFに返り咲くことが大前提ですが、良くも悪くも今までとは違った刺激がカンテラに与えられると思うので、それが良い方に転ぶことを願っています...

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