先行研究

地域人材とは
地域を担う人材は職業や肩書が決まっているわけではない。地域への関わり方が多様であるため、地域で活動する人たちの名称も多様なのである。
地域での活動に何かしらの形で取り組んでいる人を大きく括って「地域人材」と捉える。

中野(2018)による整理では、1990年代後半から「地域人材」という言葉が一般的に使われ始めた。当初は「その地域にいる人」というほどの意味だったものから「地域づくりの担い手」という積極的な意味合いを持つようになる。2010年前後には頻繁に使われるようになったと指摘している。

地域で活動する人たちを表現するほかの言葉も数多く存在する。
広く認知を得ている肩書は「地域おこし協力隊」であろう。

「地域おこし協力隊」は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に移住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取り組みです。

https://www.chiikiokoshitai.jp/about/

総務省が2009年に創設した制度であり、協力隊員数は6000人以上、受け入れ自治体数は1000団体を超える。
これは知名度の上昇を背景としており、東日本大震災やテレビドラマが影響しているようであると石川は指摘する。
都市部から地方への移住を促進していることが特徴である。

総務省が使っている言葉はほかにも「地域プロジェクトマネージャー」がある。

地域プロジェクトマネージャーは、おおむね1年以上3年以下の期間、市町村が実施する地域の重要プロジェクトの現場における責任者としてプロジェクトチームを運営し、関係者間を適切に調整し、及び橋渡ししながら当該プロジェクトを推進するとともに、人材育成や体制整備などプロジェクトの自走化に向けた手立てを講じることにより、地域活性化に向けた成果をあげていく者をいう。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000745994.pdf

地域の多様な関係者の間を橋渡しし、連携してプロジェクトを推進するための「地域プロジェクトマネージャー」を、市町村が雇用する際に総務省が支援する制度がである。

外部から人材を任用することにより地域活性化プロジェクトを推進して成果をあげていくことを後押しする制度

https://www.soumu.go.jp/main_content/000812869.pdf

であり、地域おこし協力隊OB・OGが想定されている。

総務省の制度上で使われる地域人材の言葉には「集落支援員」「復興支援員」「地域力創造アドバイザー」「地域活性化起業人」などもある。

また地域に関わる人を分類する言葉として「交流人口」「関係人口」「定住人口」もある。総務省は移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉として「関係人口」の創出に力を入れている。

地域に住んでいるか、いないかという観点での違いに着目した人材の名称に「土の人」「風の人」がある。

山崎は「コミュニティデザイナー」と名乗り、地域で活躍している。「地域の課題を住民が主体的に考えて解決するための活動を手伝う」ことがコミュニティデザイナーの仕事と山崎(2015「ふるさとを元気にする仕事」)は定義している。

そのほかまちづくりを冠するものに「まちづくり人材」「まちづくりリーダー」「まちづくりアドバイザー」等もある。「地域を表す言葉」と「肩書を表す言葉」が接続して地域人材は多様な名称で表現されることが多い。

地域に関する言葉は「地域」「コミュニティ」「まちづくり」「地域活性化」「ローカル」などが使われる。その後ろに「人材」「人口」「マネージャー」「リーダー」「プロデューサー」「コーディネーター」「イノベーター」「デザイナー」「プレイヤー」等が続く。「アドバイザー」「キュレーター」「ヒーロー、ヒロイン」「コミュニケーター」「クリエイター」「アーティスト」「プランナー」「ディレクター」「コンシェルジュ」などが続く言葉も目にすることがある。

「地域人材」について定義がなされている言葉は少なく、専門性がわかりにくい言葉が多い。資格や資質も明らかでないためか、使い分けも明確ではない。

これらの言葉は特定の専門的な人材を指しているわけではなく、総合職のような役割を地域で担っている。

一方で地域において専門職のような立場で、活動している人も存在する。パン屋を営む方も地域に関わる人材と捉えるとパン作りという専門性を持っている。また子育て支援の団体に関わっている人も子育ての分野に特化した地域人材である。地域における専門職には地域人材であるとわかりやすい肩書は使っていないが、地域人材の一人であることは間違いない。

地域人材は「総合型」と「専門型」に分類することができるのではないか。

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