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【OAK】PO逸に導いたブルペン運用。SF,TBとの比較

今回は分析、というかA'sがなぜプレーオフを逃したのかを数字から考えていきたい。

「A'sはなぜ届かなかったのか」
その答えは多岐に渡ると思う。
前半戦オルソンに頼り切りだった打線、バシットを失ってから安定感を失った先発ローテなど...

だが、人々の印象に深く刻まれているのは、9月になってから失速し、数多の勝ち試合を吹き飛ばしたブルペンの崩壊ではないだろうか。

OAKブルペン 防御率推移

ブルペンの崩壊の主たる要因は何かといえば"タレント不足"の一言に尽きる。
1年11Mで契約したトレバー・ローゼンタールは行方不明、トレードで獲得のアダム・コラレックはAAAに幽閉され、エースリリーバーとして期待されたJB ウェンデルケンはシーズン中にDFAとなった。

その結果、比較的安定していたルー・トリビーノ、ユスメイロ・プティート、ジェイク・ディークマン、そしてシーズン中に調子を上げたセルジオ・ロモの4人に負担が集中した。実にブルペンの全登板のうちの56%がその4人のものだった。

そしてその4人の9月のERAが以下の通り...

トリビーノ : 6.00
プティート : 7.84
ディークマン : 8.71
ロモ : 12.10 

見事なまでのリバウンドを果たし、この4人は9月にBSVマシーンと化してしまったわけだ。

この数字は「もしブルペンの負担を分散させていれば、このような9月の顛末は避けられたかもしれない」という可能性を示唆している。
今回は投手運用に長けたコンテンダーとの比較も交え、その仮説について考えていく。

SFとTBのブルペンマネージメント

1000球以上投げたリリーバー(_9_30)

これはコンテンダー18チーム中、1000球以上を投じたリリーバーの人数を示している。ご覧の通り、A'sが5人と最多となっている(トリビーノ/プティート/ディークマン/ロモ/ゲラ)。

その一方で、チームブルペンERAが1位のSFはわずか1人(タイラー・ロジャース)、2位のTBに至っては0人という結果が出ている。

これはSFとTBがリリーバーの負担を分散させることに成功したことを示している。特定のリリーバーの酷使はたいてい良い結果を招かないのだ。

ただ、実はこの2チームが負担を分散させるために用いる手法は全く異なる。

TBはといえば、先進的な球団として知られ、特に近年ではオープナーやブルペンデーの生みの親として前例のない投手運用を行なっている球団である。

TBはオープナーなどブルペンに負担のかかる継投策を多用することもあって、ブルペンの投球回687.1回はメジャー最多1登板あたりのアウト数/投球数も同トップだった。

イニング数が嵩む中、どう負担を分散させていたかといえば、中日を取らせることによってであった。
コンテンダー内で連投数72は2番目という少なさだった。

チーム連投数

そしてご覧いただければ分かる通り、連投数でトップに立っているのがSFである(141)。

しかも、連投数でトップ、ブルペン投球回614.2も10位と決してブルペンにかかる負担自体は少なくなく、しかも勝率の高さ故にセーブシチュエーションやハイレバレッジシチュエーションの多さもメジャートップクラスだった。ブルペンにとっては過酷な状況下でどう負担を分散させていたのか。

SFが採ったのは、1登板辺りの投球数を少なくする手法だった。
1登板辺りの投球数16はメジャー最小、マルチイニング起用・アウト数では軒並みメジャーでも少ない部類に入った。


対するA'sはといえば、メジャーで最もイニングを稼ぐ先発ローテのおかげで投げるイニングは少なく済み、ハイレバレッジシチュエーションもメジャーで下から3番目という少なさだったにも拘らず、1000球以上投げたリリーバーが5人も出るほど負担を集中させてしまった

ブルペン運用の柔軟性を欠いていた、それは疑いようのない事実である。

ただ、これをメルビン監督の采配ミスと糾弾するのは容易いが、それはあまりに雑な帰結に思われる。メルビン監督は滅多にミスを犯さない監督でもある。

では、なぜA'sは柔軟性を欠くブルペン運用に固執せざるを得なかったのだろうか?これもTBを例に見てみよう。

TBの果敢な運用

非常に良い記事を見つけた。

この中でTBにセーブを記録した投手が13人もいたことが言及されている。そのブルペン運用についてキャッシュ監督のコメントも掲載されていた。

「リリーバーはその状況やマッチアップなどで決める。全てのリリーバーにセーブチャンスを与えることで、彼らは勝負強さを身に着けていく。リリーバーの層が厚くなり、これから臨むことになるビッグゲームに重要な役割を果たしてくれるはず」

TBは投手のコーチングに長け、次から次へと新しくブレイクする投手が生えてくるチームである。投手が生えすぎるあまり、今年もベストリリーバーのディエゴ・カスティーヨと在籍当時は1点台のERAを記録していたハンター・ストリックランドをトレードするなど、もはや"整理"が必要なほどだ。

卵が先か、ニワトリが先か。という議論はあるだろう。
TBはセーブシチュエーションを任せるに足る投手がたくさんいるからこそ、セーブシチュエーションの運用に対して柔軟になれるのであって、その逆ではない

しかし、アグレッシブにリリーバーを運用することによって、リリーバーの層を厚くしているという側面があることも否めない。
例えば、オリンピックでのパフォーマンスから契約に至ったデビッド・ロバートソンも、TBでなければあそこまでいきなり重要な場面を任されることはなかったのではないか。

ここでA'sに戻ると、A'sのブルペン運用は臆病なようだった。
ドミンゴ・アセベド、サム・モール、そしてシーズン当初のデオリス・ゲラなど、ローレバレッジのシチュエーションで結果を出している投手をハイレバレッジのシチュエーションに移すことをなかなかしなかった。

これはA'sが投手のコーチングに確信を持てていないということの裏返しでもある。覚醒するという兆候が得られなければ、確かに実績のない投手を信用することは難しい。


今年はここで挙げたTB、SFに加え、大躍進を果たしたSEAなど、ブルペンが強みのコンテンダーが目立った。
これら3球団のブルペンには、リアム・ヘンドリクスやジョシュ・ヘイダーがいるわけではない。しかし、無名の投手を一流のリリーバーに仕立て上げてここまできたという点は共通している。

本来はA'sも無名を一流に変える球団の代表例のはずだが、今年はそのメソッドが上手く機能しなかった。多くのリリーバーがFAとなることもあって、今一度ブルペンの運用について見つめ直すオフシーズンになることだろう。

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