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月組バウ"Golden Dead Schiele"を全力でおすすめしたい記事

ご縁をいただき、何度か現地で拝見することができました。
あみちゃん、彩海せらさんの、初・バウ主演公演。

語りたいことは正直星の数ほどあるのですが、もはや多すぎて自分の中でまったくまとまってくれず、ぽろぽろとXでこぼすばかりで、noteをひらくところまで行けないままでいました。
しかし明日、2/3は、せっかくの配信のある日。
私もここが、あみちゃんのエゴン・シーレを拝見できる最後になります。

なので、それこそ、できればたくさんのかたの感想を聞きたくて。
ちょっとでも興味を持ってもらえたら、と思い、ネタバレは極力回避して、この作品が好きだ!と私が思うところを、思いつけるまま、つらつらとあげていきたいと思います。

主演と脚本・演出について

エゴン・シーレ:彩海せらさん

最初にあみちゃんのバウ初主演が決定し、このエゴン・シーレという人物を題材にした熊倉先生のホンだとわかったとき、私は狂喜乱舞しました。
エゴンは、それこそwikipediaなんかでちょっとさらっただけでもすぐにわかるくらい、まったくもって「良い人」ではありません。
こんな人物を、あのかわいい、まじめな、優等生とたくさんのひとに言われてきた彩海せらさんが演じる。どれだけクズの部分があるんだろうね!?と、友人とひとしきり騒いだ記憶もまだ正直、わりと新しく、あります。(笑)

そしてそして。
果たしてあみちゃんの演じるエゴンは、根っこがどうにもクズでどこか幼く、たいへんに自分勝手な人間でした。
(むろん、多くのことがとてもマイルドに好意的に描かれている前提はありつつも)
何が一番勝手かって、「勝手にふるまうことを周囲が許してくれている」ことに、物語の最初から最後まで、微塵も気づいてなさそうなところ。それが彼にとっては「世界のあたりまえ」で、たぶんそこに関して、一切何も考えたこともなさそうなとこですよ…。
考えなくていいというのが、そもそも「ブルジョワ」なのだというのにね。
そういう勝手で、いろいろを起こしていってしまうというのにね。

そう。劇中のすべてのできごとは、畢竟エゴン自身の言動が招いた、さまざまなものごとのドミノ倒しの結果でしかありません。
これがたいへんにおもしろい。「それでも絵が描きたい」と盲走するエゴンを熱演するあみちゃん、誇張じゃなく全体の8割、舞台上にエゴンとして居ます。ひとりでも、誰かとでも歌い、喋り、相対し意気投合しては反目し、別離し、踊り、孤独し、悶え、絶望に舞台上に這いつくばり…。
あみちゃんご本人の雰囲気や、彼女の芝居巧者具合、この公演期間中にも破竹の勢いで伸び続けるミュージカル歌唱の能力をもって、そんな自業自得系クズなのに目が離せない、どうにも手を差し伸べてしまいたくなるような、魅力ある、魔性じみた人物造形に仕上がっているのです。
なんかどうにも、かわいくてほっとけないんですよね。
クズなのに。自己中のクズなのに。天才ってそういうもんなのかな。

エゴンの見せ場は歌でも芝居でも数多くあるのですが、特に絶対に記しておきたいのが、1幕ラストの10分間。
ここではネタバレはしませんので、具体的なことは書きません。ただ、ぜひ、見てほしい。なにもかもに、あまりに容赦がなく、えげつない。
私は特に初見時、あまりに圧倒されて息をおさえてしまい、休憩に入った後もしばらく衝撃とその息こらえの影響で胸が痛むような状態になりました。
こんな場面を、こんなくるしみを。
舞台芸術を、彼女を中心に炸裂させてきた熊倉先生、本当に伏して御礼申し上げたい。なんちゅうもんを創り上げてくれたんだ。

あみちゃんは、それこそ雪組の下級生時代から未来を嘱望されていた子のひとりです。
細身で華奢、決して男役として恵まれた体格ではありませんが、芝居ができて、歌えて、ダンスも踊らせれば踊らせるほど舞台で大きく躍る。もちろんファンの欲目でしかないことは億も承知ですが(笑)、かなり高いレベルで、3拍子がそろった男役さんだと思っています。ずっと、優等生と言われてきたタイプの子でもあります。キラキラ系とも。
けれど今回は、もう、それだけじゃない。
こんなにも「まんなか」を担う、担いきる力のある役者さんだったのだと、見るたびに感動しきりでした。
だってバウホールじゃ狭かったもん。スケールがもうとっくにホールの規模越しちゃってるもの。
いやいやファンの欲目だろうとぜひ疑ってかかって、配信で確認していただきたいです。

  

脚本演出:熊倉飛鳥先生

星組のバウ公演「ベアタ・ベアトリクス」で演出家デビューした熊倉先生の、本作は脚本・演出2作目にあたります。
あみちゃんとはなんと入団同期らしく。
そして、タカラヅカの演出家、生田大和先生の、おそらく弟子のような位置づけにある方、なのかなと思っています。ミライ演出家の生田先生回で、生田先生とテニスして対談してたのが熊倉先生でした。メンター/メンティみたいな関係性なのかなと見てました。
でもってここで知りましたが、熊倉先生、タカラヅカでの初の演出補佐経験がドン・ジュアンなんだって。
こ、濃くない…?しょっぱながあまりにも特濃過ぎない…?

でも、だからこそ、と言いましょうか。
「生田先生の弟子」かつ、星組バウのほの聞く好評も相まって、最初から、特に何も心配はしていませんでした。
熊倉先生の主題はなんだろう、あみちゃんで、描き出したい景色はなんだろう。
それを、とても、楽しみにしていました。

結果として。
熊倉先生の、彩海せらというタカラジェンヌへの信頼があまりにも巨大で、衝撃を受けることになりました。
それこそ↑でも少しふれたとおり、今作においてあみちゃんは、本当に冗談ではなく8割、舞台上にいます。
彼女がいなくなるのは、ほぼ彼女が着替えるタイミングでだけです。
当たり前のように、舞台の上手で、下手で、重ね着ているものを一枚「エゴンとして舞台上で」脱いで、歌い、愛を囁き、喧嘩し、反発して、踊り、悶えて。はっきりした暗転は少なくシームレスに進んでゆく物語の、常に中心に、熊倉先生は彩海せらを据えています。
この続いてゆき方に、やらせてゆくものの多さに。
熊倉先生の、あみちゃんへの信頼と期待を感じて、本当にうれしくなってしまいました。またそのとんでもなく重いものを、楽しそうに大回転してクリアしていくあみちゃんが、ほんとうに頼もしくて。
大がかりなセット。小道具として登場するいくつもの絵画・素描。幾度となく舞台上にあらわれる「死と乙女」、その構図。
鉄道役員のこどもなのに、幼少エゴンに紺と白のセーラー服を着せるのは、ちょっとやりすぎだと思います。たいへんありがとうございます。


フィナーレ

今回、フィナーレがついています。
本編では一切出番のなかったミラーボールが、容赦なく本編の余韻をぶっ飛ばす勢いで陽気に回転を始める瞬間、いつも笑ってしまいます。
一周回ってそれが良い…(笑)

男役群舞は、シンプルな黒燕尾。
男役たちを従えてセンターゼロ番に立つあみちゃんの、輝きとダンスのキレが半端ないんです。とてもきれい。男役として、きれい。
すっと背筋がまっすぐで跳躍点が高く、指の先までぴんと神経のめぐったポージングに、彼女が追いかける「理想」の姿が確かに見えて。毎回堪らなくなります。
ちょうど2年前に、そのときは2番手の位置で踊った黒燕尾よりは少しだけ年を重ねて。でも、大劇場で見るものよりは、まだ、良い意味で若くてしなやかで鋭くて、どこか未完成味もある。
今のあみちゃんにしか、できない黒燕尾だと思います。
かっこいいんだ…みずみずしいカッコよさで満ち満ちているんだ…。

ヒロイン・ヴァリを演じる白河りりさんとのデュエットダンスもあります。
本編が本編なぶん、二人の笑顔が、そのやわらかさが、なんとも、沁みます。
あみちゃんの娘役さんをリードするときの自然な優しさが好きです。ぜひご覧になってほしい。


ううむ、本当はもっともっといっぱいおすすめポイントあるのですが、どうもタイムオーバーなので!
最後に公式のライブ配信についてのリンクと楽天TVのリンクを貼っておきます!ぜひ!このとんでもないものを見届けてください…!


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