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百八の煩悩 四煩悩目

昔の出来事を一つずつ思い出しながら
今と照らし合わせて行く
そんな煩悩を昇華出来れば

先日テレビで「大阪の都市伝説赤い服の女」とやっていた。懐かしい、もう20年以上前の話だが
大阪に住んでいた頃、確かにその噂があった

高校卒業後の進路は「お笑い芸人」だった
もともとお笑いには興味があった
そのお陰で学生生活は円満だった、その詳しい話はいつかまた

というわけで、お笑いなら大阪だろうと上阪
初めての大都会は人、人、人だらけ
平日なのにお祭りがあるんだと思うほど
初めての都会、初めての一人暮らし
19歳の自分は楽しくて楽しくて毎日遊んでた
本当に寝る時間が勿体無いと寝ずに遊んでたら
酷い不眠症になった
夜が寝れない、、大阪一人暮らしも3ヶ月が経ち
慣れ始めてのホームシックなのか、、いや
遊び過ぎの不摂生なのかとにかく眠れなかった
夕方までバイトして帰ってきて朝まで眠れない
仕方なく寝ないでバイトに行く、「帰ったら寝れるだろう」と思ってたら全く眠れない・・
それが何日も続いた
毎日毎日テレビが終わるまで見てて
番組が終了して、大阪の街の映像をボッーと見る
寝ようにも寝れない、バイト中も頭がボッーとする
脳がオーバーヒート気味になり7階に住んでたのに
犬を連れて歩く人の音が聞こえる
火の用心の音と話し声が聞こえる
ちょっとヤバイ状態だった
それが2週間以上続いてて、どうせ寝れないからと
友達と飲んでた時に友達が「赤い服の女」の話をした。

バイト先のカラオケのある部屋に
「赤い服の女」が現れるという
決まって朝方の閉店後のひとりで掃除をしてる時にポゥッと隅の暗がりに立ってるという
「ギャァ」となって皆で見に行くと誰もいない
というそんな話
しかし、聞くところによるとそれはいい霊で
その赤い服の女を見ると幸せになれるらしい
初めて見た大学生はいいとこに就職して起業し若くして社長になったりとか
それを見た女性は結婚して玉の輿になり神戸の高級住宅街に住んでるとか
長いバイトリーダーが言ってたらしい
「なんで俺長いのに見れんのや」とぼやいてたとか

という話をオーバーヒート脳で、ふ〜んと聞いていた、「ウチも見てみたいわー」と言っていた
そんな訳の分からない赤い女とかどうでもいい
不眠症はいよいよ危ない段階まで来ていた
まともな考えが出来ないし、集中力がない
簡単な計算も出来ないし、何よりも極度な疑心暗鬼になっていた。
誰もかれも信じられないし、誰にも会いたくない
何よりも生きる気力も無くなっていく
ご飯が食べれない、食欲が湧かない
ドンドン痩せていくし目は窪み頬は痩けていく
友達達は心配して「病院行きやー」と言うが
疑心暗鬼に陥ってる為にまともに取り合わない
もうこのまま死んでもいいかと思うようになった

それは日曜の夕方、フラフラでバイトから帰って来て、床にヘナヘナと座り込みベットにもたれ掛かった。
テレビで笑点がやっていて笑い声が耳障りだった
夕焼けの日差しが差し込んで酷く落ち込んだ気持ちになる、耳障りな笑い声と差し込む夕日でどうでもよくなりベットに首をもたれかけて
体が動かなくなった
するとワンルームのせまい部屋の玄関の扉がゆっくりと開いた・・
「あれ?鍵かけたはずなのに?大家さん?」などと思っているが、体が動かない
ゆっくりと開いた扉から光が差し込んで
真っ赤なハイヒールがにゅっと入ってきた
「え?」と思っていると
真っ赤なマニキュアをした手が入ってきて
真っ赤なトレンチコートを着た長い髪で顔を隠した背の高い女の人が茶色い紙袋を持って入って来た
「おっおっおっ!ど、ど、泥棒」と思うが
声が出ないし、体が動かない
スルスルと全身赤の女が近づいてくる
「殺される」とか思うはずだが
脳がオーバーヒートしてる自分は
「いや、土足かい!」
とか
「いや、全身赤で紙袋は茶色かい!」
とかツッコんでいた
自分の頭の上まで赤い女が近づいて
長い髪が自分の顔にかかる距離で見下ろしている
しかし女性の顔は見えない真っ暗
「あぁ、殺されるのかな」と思ってたら
細い骨が浮き出た手を出して
自分の目を覆った・・・

ハッと気づいたら
部屋は真っ暗になっていた
テレビは消えていて、ちゃんとベッドの上で寝ていた。
本当に久しぶりに熟睡していて
日曜の夕方だったはずなのに
月曜の夜になっていた
携帯の着信とメールがいっぱいだったがそれも気づかず爆睡していたのだ
赤い女!と思って玄関の鍵を確認したら
ちゃんと閉まっていた
後日、友達に話したら
「それ全く一緒やん、え?なんであんたの所来たん?」と言っていたが自分が聞きたい

でもそれから、不眠症は治り
普通に生活出来るようになり、彼女も出来た
赤い服の女に救われたのだ
ただ、テレビで特集していた「赤い服の女」は恐怖の対象になっていた、赤い服の女に襲われるなど
20年経って、変わってしまったのかわからないが
何事も見た目だけでは決めてはいけない
20年前の我々はあんな怖い見た目を幸せになると思っていた寛容さがあったかもしれない
見知らぬ女性が急に入ってきても「土足かい!」
とツッコめる自分も褒めたい

人生の中で伏線は張り巡らされている
だから無駄な事なんてない色んな事にしっかり聞いて見る事が大事であって
自分が意図してないから無駄だからでシャットアウトすると起こるべき事に対処出来ない
様々な経験はするべきものであって
無駄な経験などないのだ
知らないからで終わってしまうのは勿体無い
大事なのは「まぁいいか」と思える寛容さである
初体験を沢山経験すると自分の引き出しが増える
四十になると引き出しの多さが物を言う
話の軽い奴に出会うと大した経験してないなと思う
世界を旅して経験してきた話を聞くと
自分はまだまだひよっこだといくつになっても
経験は出来るなぁと海の向こうに夢を見る

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