最近読んだマンガ

13日目@なろうアドベンター
https://adventar.org/calendars/5540

今回は、最近読んだマンガということで、kindle上のアクセス履歴から読んだものを遡ってゆき、その中からマンガ22選を紹介します。
本当は30選書こうとしたのですが、おもしろいと感じたところを端的に表現するのに意外と脳のリソースが削られて、中途半端になってしまいました。

メタモルフォーゼの縁側

画像1

表紙のイラストが作品の雰囲気をよく表してるので、これ以上言葉を連ねるのも野暮という気もしますが、老齢の女性「雪さん」と、書店でアルバイトをする女子高生「うららさん」が、マンガを切っ掛けに交流するお話です。

雪さんは夫を亡くし、娘も結婚して外国に住んでおり、終活を意識して身の回りの物を整理するような生活をしている人なのですが、若い人との交流から少しだけ日々の張り合いを得たりする様子が描写されます。
一方、おとなしく受動的だったうららさんも、しっかり者の雪さんに背中を押されるように、ほんの少し能動的になったりと、お互いに力を与え合う年の離れた二人の穏やかな友情が心地よいです。

2021年1月5日に最終巻となる5巻が発売予定なので、今から読み始めてリアルタイムでフィナーレに立ち会いましょう。

推しが武道館いってくれたら死ぬ

最近アニメ化もした、百合×地下アイドルをテーマにしたマンガ。

地下アイドルグループ「Cham Jam」に所属するアイドル「舞菜」と、彼女を推すアイドルおたく「えりぴよ」を中心に、地下アイドル界隈を楽しく軽妙に描いています。

「Cham Jam」のメンバーはみんな個性的かつ魅力的で、それだけでも楽しいマンガなのですが、作品全体のトーンが妙にシュールなギャグ調なところもツボに入って、読むと明るい気分になれます。

画像2

裏世界ピクニック

2021年1月クールからアニメが放映される小説のコミカライズです。
インターネット上で流布される噂話や怪談で形作られたかのような裏世界を、女子大生コンビが探索するお話。

裏世界に登場するのは、クネクネやきさらぎ駅等、インターネットの噂話に詳しい人ならピンとくる内容を踏襲しているのですが、それらを内包する世界の謎めいた空気感が安易な理解をさせず、程よい緊張感が保たれています。

いちおうこれも百合SFということらしいのですが、甘い雰囲気というにはやや拗らせた感じで、百合としてはちょっと上級者向けかもしれません。

画像3

コーヒームーン

作者の方がTwitterで書かれていた「エロ漫画家が一般漫画を描くようになる理由の考察とコーヒームーン裏話」が興味深く、イメージプロットも雰囲気があったので読み始めました

11月末に単行本の2巻が発売されたばかりですが、イメージプロット通り、モノトーンの美しい世界と、謎めいた世界観、表情豊かな登場人物(エロ漫画がうまい人は表情がうまい)と、どんどんおもしろくなる雰囲気で、今後が注目の作品です。

薬屋のひとりごと

小説家になろうから商業ベースに出版された小説を原作とするコミック作品。中世中国風の世界で、後宮で毒見として働く少女「猫猫」の活躍を描くお話です。

薬学に精通した猫猫がその知識を駆使して後宮に渦巻く陰謀を紐解く探偵ものとしての要素や、美貌の宦官との凸凹ロマンス(?)等、なかなか楽しみの奥が深い作品です。

画像4

この作品、なぜか全く同時期に二つの出版社から並行してコミカライズがされているのですが、私は絵柄が好みのビッグガンガン版を読んでいます。
連載ペースはサンデーGX版の方が速い様子なので、先の展開が気になる方はそちらを読んでもよいかもしれません。

原作小説は、文章技巧が巧みという感じではないのですが、言葉のチョイスなどに不思議な味わいがあり、文章は知識ではなくセンスだというのがよくわかります。

氷菓

京都アニメーションからアニメ化され、一世を風靡した青春小説のコミカライズです。

基本的にアニメ版のキャラクターデザインや描写をなぞるコミカライズなのですが、尺の都合でアニメ版からは削られた原作の描写を取り入れたりしており、アニメ版のファンも一読の価値があります。

また、11月末に発売された最新刊では、アニメ版の最終回の次のエピソードに踏み込んでおり、そういう意味ではアニメの最終回のその先を補完するものとしても大変意義深いコミカライズになっています。

画像5

個人的にはいつの日かアニメ版の2期が実現される日がくることを祈っています。

オールラウンダー廻

初代タイガーマスクとして知られる佐山聡氏によって創設され、日本の総合格闘技の歴史を切り開いた格闘技団体"修斗"、そのアマチュア大会に青春を燃やす若者を描いたスポーツ漫画です。
2016年に完結済みのマンガですが、引きこもり生活のついでに積んでいたのを一気に読破しました。

作者の遠藤浩輝氏は、前作「EDEN」において、荒廃し、暴力に満ちた無情の未来世界を描いており、本作でも人間模様などにほの暗い作風の一端が見え隠れするのですが、本筋はさわやかなスポーツ描写にフォーカスが絞られており、広くおすすめできる内容になっています。

格闘技の世界でも比較的マイナーな団体である修斗、そのアマチュア大会が舞台とあって、全体的に地味な絵面であることは否めません。
しかし、作者が描きたいことにこだわって描きぬいたということがよくわかる精緻な試合描写は圧巻の一言。

画像6

少しでも総合格闘技に興味がある方は必見の漫画です。

ソウナンですか?

少し前に15分枠でアニメ化した作品です。

女子高生4人が無人島に漂着し、サバイバル生活をして生き抜くというCGDCT(Cute Girls Doing Cute Things)の文法に則った作品ではあるのですが、原作の岡本健太郎氏が兼業猟師として身に着けた実践的サバイバル知識を活用し、全体的にはエンターテインメント作品としてまとめつつ、ところどころにピリッとした緊張感を差し挟み、そんじょそこらのCGDCTとは一風変わった作風を確立しています。

画像7

とはいえ、全体的には明るいギャグテイストなので、気負わずに読める作品です。4人がサバイバル生活を通してそれぞれに成長し、絆を深めていく正統派の青春ものとしても楽しめます。

画像8

異世界居酒屋「のぶ」

小説家になろう発の小説のコミカライズです。
一応、サンライズからアニメ化もされましたが、かなり原作とは作風の異なるアニメ化だったため、そちらを知っている人はいったんその印象は忘れてみた方がよいかもしれません。

日本の居酒屋(といっても料亭で修業した板前が仕切る小料理屋といった風情の店)の入り口がドイツ的な芋ばっか食ってる異世界につながってしまうという筋立てで、現代社会の我々にも理解・共感できる食事風景を通して異文化に生きる人々の悲喜こもごものドラマを描くといった内容です。

作品の初期には、異世界ものによくある現代の進んだ食文化で異世界ドイツにマウントを取りに行くような展開が多く見られるのですが、徐々に読者にも馴染みのあるうまい食事を通じて異文化に属する人々のドラマが描かれるといった内容にシフトしてゆきます。

コミカライズを担当したヴァージニア二等兵氏の素晴らしい作画で描かれる食事風景は、居酒屋などには行きづらい時勢にあって、読者の心を慰めてくれます。

画像9

シャドーハウス

真っ黒なシルエットでしかその姿を捉えることができない謎に満ちた高貴な人々と、そのうつしみのように同じ輪郭を備え、"顔"を持つ従者たちが暮らす館の物語。

画像10

主人公の天真爛漫な少女「エミリコ」が大変愛らしく描かれており、陰のある不気味な世界観との間に不思議な空気感を醸し出しています。

不気味な世界観と愛らしい少女という組み合わせは、同じ作者の前作「黒」にも共通する特徴で、本作を楽しめた方には前作もお勧めします。

五等分の花嫁

少年マガジンから出て、2021年1月クールにはアニメ第2期も放送される押しも押されぬ王道ラブコメ作品です。

優れた作品には新旧を超越する力がある、というのは一面の真実だとは思うのですが、新しい作品がよく見えるのはすべて慣れの問題、とまで言い切ってしまうのは、工夫を積み重ねて技術を進歩させてきた先人の努力を蔑ろにすることにように感じます。

何が言いたいかというと、私はこの作品にラブコメ技術論の先端を感じた、ということです。五つ子のヒロインという時点で、旧態依然のラブコメ技術論ではキャラの描き分けを失敗するのではということが懸念されますが、本作ではそれぞれに魅力あるキャラとして見事に描き分けられています。

画像11

この表情に込められた乙女の一念よ……!

しかし、ラブコメの機微というのは微妙なニュアンスの積み重ねから醸されるものであり、ちょっとしたセリフのニュアンスでがらりと印象が変わってしまうことがあります。本作のアニメ版は基本的には原作の筋を忠実になぞるものではあるのですが、演出のセンスは古いラブコメの技術論に拠っており、原作の味をやや損なっているとも感じています。

私としては、アニメ版から入って楽しまれたのであれば、原作コミックスにもあたってみることをお勧めしたいです。

きのう何食べた?

幾度となく実写ドラマ化された女性向けコミックの巨匠、よしながふみ氏の作品。
アラフォー弁護士「筧」と、その同性愛相手である理容師の「ケンジ」。
節約料理を趣味とする筧の日々の食事の調理風景を挟みながら、中年のゲイカップルの家庭を描いています。

ゲイカップルとはいっても、年齢相応に落ち着いたもので、ロマンスものというよりは、一般的な結婚という家庭の形を持たなかった中年男性の日常生活といった雰囲気の作品です。

中年男性の人生観といったところが妙に身につまされるものがあり、自炊にはあまり興味がないのについつい共感して読んでしまう作品です。

なお、作中に登場する自炊レシピはリーズナブルで手間もかからないものが多く、特に9巻に登場した簡単ローストビーフは、ちゃんとした手順で作るよりはるかに簡単で美味しいと、私の実家では大好評でした。

画像12

白熱日本酒教室

「新米姉妹のふたりごはん」にコラムを寄せられている料理漫画研究家の杉村啓氏(通称むむ先生)による、日本酒に関する学習漫画です。

吟醸、生、濾過、原酒と、複雑な日本酒の区分を、製法やその味わいに触れながら漫画でわかりやすく語っています。

画像13

日本酒を楽しむための知識を楽しく学べる素晴らしい本でした。
また、具体的なオススメ銘柄についても言及されており、リモート飲み会で紹介された銘柄に挑戦する楽しみができました。

同作者によるビール教室、洋酒教室等の書籍も、コミカライズが待ち望まれます。(活字を読むのがしんどい年ごろ)

虚構推理

2020年1月クールにアニメが放映され、先ごろ2期の制作も発表されたオカルト風味のミステリ作品となります。
原作の城平京氏による小説版が原作ということにはなりますが、小説と並行してコミックが展開されており、マルチメディア展開といった方が近いかもしれません。

主人公サイドがしばしばオカルト的手段で真相に至るという、ミステリとしては反則気味の展開もありますが、それはそれとして読者の目線からは真実を推理する楽しみが残されており、立派にミステリとして成り立っていると思います。

今年放映されたアニメでは、長編エピソード「鋼人七瀬」に尺の大部分を費やしていましたが、鋼人七瀬編は原作でもメインのエピソードだっただけに、"虚構を武器にするミステリ"というコンセプトに縛られ過ぎた感もあり、個人的にはその後の短編エピソードの方が好みでした。

特に、鰻屋に居合わせた岩永について、友人同士が語り合う短編がお気に入りなので、2期での映像化が楽しみです。

画像14

雨の日も神様と相撲を

こちらも、虚構推理の城平京氏の手掛ける小説のコミカライズとなります。

神事としての相撲が盛んな田舎町に引っ越してきた、小柄だけど相撲知識の豊富な少年が、神事相撲や、事件に関わっていくというお話です。

先日2巻が発売されたばかりではありますが、城平氏の得意とする少し変わった味付けをしたミステリ、といった要素もあり、最終巻となる3巻が楽しみです。

相撲描写にも力が入っており、相撲博士の美少年がマッチョな男たちにモテモテな様子も楽しめます。(?

画像15

僕の心のヤバイやつ

今年、Twitter等で大きな話題を呼んだ桜井のりお氏によるラブコメ漫画。
「みつどもえ」のヒットもあり、ギャグセンスが優れているというイメージが強かった作家ですが、ここまでラブコメが巧いとは思いもよりませんでした。

ラブコメ連載漫画では、作者の中で人物同士の関係性や性質が記号化されることで、同じような展開が繰り返されるといった弊害が起こりがちですが、本作では時間の経過、ドラマの積み重ねによって二人の関係性が変化していく様子が巧みに描かれており、展開から目が離せなくなります。

また、関係性の変化が安易な説明セリフ等で表現されず、登場人物のちょっとした表情、動きや展開等で表現されており、匠の技を感じます。

画像16

というか、この人の絵で登場人物をかわいいと感じるとは、みつどもえ読んでるときには想像だにしませんでした。
絵ってそれだけのものではなくて、ドラマによる意味付けで大きく印象が変わるんだなと感じました。

辺境の老騎士 バルド・ローエン

小説家になろう発の小説のコミカライズとなります。
原作タイトルは単に「辺境の老騎士」なのですが、それだと地味すぎるということでか、主人公の名前がタイトルに祭り上げられています。

本作は、ファンタジー的世界観を舞台に、引退した老騎士が旅の先々で弱きを助け、強きを挫く様子を描くという筋立てなのですが、旅の成り行きでやがて中原全土を巻き込む戦いに関わってゆくという、熱い冒険譚に発展してゆきます。

また、騎士の誓いにおいて守るべき徳目を"食徳"としたバルドが旅の先々で食に喜びを見出す様子も力を入れて描かれており、グルメ漫画としても楽しめます。

画像17

主人公の周辺がむさくるしいおじさんばかりで、絵面が地味なので、なかなか商業ベースでは苦労していそうな雰囲気でしたが、今冬に発売されると目される最新7巻では、ようやく華やかな女性騎士や美形剣士が登場するはずですので、ここから売り上げも巻き返してアニメ化まで期待したいところです。

戦争は女の顔をしていない

第二次世界大戦時のソ連では、世界史に類を見ない総力戦が展開された結果、女性兵の動員が多くあったとのこと。
本作は、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ氏による従軍女性へのインタビュー書籍のコミカライズとなります。

基本的にはドキュメンタリーなので、わかりやすく劇的なドラマが展開されるわけではありませんが、丁寧に描写される登場人物の心情が、現実と地続きの出来事として戦争を感じさせます。

画像18

こうした本に触れると、なにかと答えや教訓を見つけようとする訓練を我々は国語教育で受けていますが、本作については、特段そういうことは考えずにフラットに読んでみるのもよいと思います。

ストーカーズ

ストーカー的なアプローチをしてしまう、様々な片恋のエピソードをオムニバス形式で綴った作品です。
テーマがここまで限定的だと似たような話が並ぶことになりそうなものですが、各話工夫を凝らしており、3巻完結まで飽きさせずに描き切ったのは見事だと思います。

画像19

実際のストーカー被害ということを絡めるとセンシティブな話題になってはしまいますが、根本的には誰しも少しは心当たりのある、片恋をしている時に相手のことを知りたいと思う感情を描いており、恋愛ものとして素敵な作品になっています。

麻衣の虫ぐらし

筆が遅く、決して多作とは言えないけれど、作品を読んだ人には確かに印象を刻み込む伝説の作家、雨がっぱ少女群氏の作品です。

就職活動がうまくいかず、フリーターをしながら友人「菜々子」の畑を手伝う「麻衣」を主人公に、畑や田舎暮らしにまつわる虫トークをアクセントにしながら、日々の暮らしがゆったりと綴られています。

画像20

2巻できれいに完結するので、さっと読めて読後感の良い良作を探している方にはお勧めです。ちなみに百合です。

ブルーストライカー

「エアマスター」の柴田ヨクサル原作のストリートファイター漫画。
主人公の「根津田」は、仕事をなくして妻子にも去られた冴えない中年男性ですが、ふとした拍子にストリートファイトの世界に足を踏み入れ、情熱を取り戻してゆくという中年再生の物語です。

ストリートファイトという、一見なんの役にも立たない無価値な活動を通して、社会によって意味付けされた価値ではない、本能に根差した"生きる"ということが描かれています。

画像21

ちなみに、本作は「エアマスター」の続編的要素もあり、前作主人公の血を引くストリートファイターが登場したりもするのですが、その辺の方向性がばらけたのが原因なのか、残念ながら4巻で打ち切りとなってしまいました。

今更打ち切られた漫画を読もうという人も少ないかもしれませんが、1巻の最後に登場する懸垂使エピソードあたりは本当に良いエピソードなので、kindleあたりで安売りしてたら読んでみてください。

乙女のてにをは

昭和日本の女子高生の日常をオムニバスで描く日常マンガです。
2016年頃のマンガなのですが、作者のるなツー氏は現在は商業での活動をあまりされておらず、旧作ですが折に触れ読み返しています。

内容はなんてことのない、"毎日決まった時間にラジオ番組を録音している少女の話"だったり、"制服スカートの寝押しにこだわる少女の話"だったりと、昭和の生活感がリアルに描写されており、ノスタルジーを呼びます。

画像22

旧作が売れるともしかすると新作が発売されるということもあるかもしれませんので、みなさまご協力をお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?