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"秘島生まれ 秘島育ち"「馬祖列島 北竿島 芹壁村」[建築探訪記]

知られざる台湾の秘島

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台湾台北よりプロペラ機で1時間ほどの小さな離島「馬祖列島 北竿島」は、台湾でありながらも、中国大陸にほど近い位置にあります。その地理的条件から、かつては軍事拠点として重要な役割を担っており、現在でもかつての要塞遺構が数多く残っています。原付バイクで1時間あれば一周できるようなこの小さな離島に、「芹壁村」というとても魅力的な集落があります。

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「芹壁村」は、山の傾斜地に沿って建てられた石積みの伝統集落です。集落自体は大きくなく、こじんまりとしています。山を背にして海と砂浜が目の前という最高のロケーション。外見だけでもその独特な出で立ちに圧倒されてしまいますが、この中へ入っていくとより素晴らしい風景が広がります。

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建築と土木が奏でる石の風景

今も最前線で活躍する建築家・内藤廣氏の著作「建土築木(鹿島出版会,2006)」では、自然と対峙する「土木」と、人のための構築物である「建築」を融合し、ランドスケープ的な視点でデザインする必要性が語られています。まさにこの集落はその「建土築木」が実現されている空間かと思います。

斜面地で必要とされる[土留めの役割をする石垣]や[生活動線となる石階段]などの「土木」、そして、[人が生活する住居]である「建築」

これらが[石という同じ素材]かつ[組積造という同じ構法]で作られているため、どこまでが土木でどこまでが建築なのかが曖昧になっていきます。

そういったことの積み重ねがこの魅力的な風景を生み出しているんですね。

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自然の地形と人工物の取り合いが面白いことになっています。人間だけでは作り出せないかたちです。おそらく使われている石はこの島で切り出されたものなので、空間の説得力がより抜群。

月並みな表現ですが、人工物であるにも関わらずまるで地面から生えてきているような、つまり自然と一体になった空間に感じられます。

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壁面を見ると石の積み方が部分的に違います。壁に加わる力が一方向に伝わらないよう力を分散させる効果があるのでしょうか。謎ですがなかなか面白い壁面です。閩東建築という建築様式のようです。

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石に包まれた路地をずんずん進むと、突然スッと海に視界が開けます。そして、いつの間にか高い場所に来ていたことに気づきます。ドラマチックな空間体験です。海の水平線の向こうにうっすらと見えるのが中国大陸です。すぐそこ。

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持続可能な集落

この石積みの建物にはホテルになっているものが数棟ありますので宿泊することが出来ます。ホテルのインテリアは現代的にリノベーションされ快適かつ衛生的でした。やはり建物はただ鑑賞するだけでは勿体ないし、実際に活用しながら生きたかたちで後世に継承していくことにとても共感します。

過度な観光地化はよろしくないですが、このように外部の方が訪れてこの集落を体験できるような場所を作ってあげることは、住民の方がその空間価値を見直すきっかけにもなります。もちろん、干物から分かる通り住民の方はバッチリ生活しています。

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毎日バカンスな白猫。

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最後に、強烈な画ですがこれは「老酒麺線」という酒が入った麺料理です。しかも酔っぱらいそうなくらいお酒感が強い。ですが、意外とというか、とても美味しい!隣に座った台湾本島から遊びに来たおばさんは芹壁村でしか食べれないのよ。と教えてくれました。もし行かれる方は是非お召し上がりいただければと思います。

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※ 記事内で紹介した「建土築木(鹿島出版会,2006)」(全2巻) についてですが、随分昔に読んだ本なので解釈が間違ってたらすみません。とても良い本ですので、興味があれば是非読んでいただけたらと思います。





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