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生の美味しいウニはプリンみたいな味がする。

・2限は10時過ぎからだ。いつもは9時頃に起きていそいそと用意をするけれど、今日は8時前に起きていたので余裕を持って家を出られた。
 余裕を持って起きた時ほど忘れ物をする。これは、私がいつも思うことだ。「今日は早起きしたし、ちょっと早めに家出るかぁ」なんて思っていると、目的地について唖然とする。アレがない、コレがない、と。今日は筆箱を忘れた。

・そんなことにも気がつかず、今日に限って最低限の荷物を持って大学へ向かう。生憎の雨。でも、好都合だ。今日から新しい本を読み始めたから。今読んでいるのはディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』だ。
 沼地が舞台なので、雨との親和性が高い。冒頭の土地の説明が頭にするする入ってきて、周囲の景観も相まって世界の中にいるようだった。
 あらすじを読むとサスペンス、っぽいのだけれど、結末に感動とか驚愕とか書いてある。どうなるんだろう。海外の小説は登場人物を覚えきれないので、どこかにメモしようかな。

・教室に着いて、いつも通り一番前に座る。一番前に座るのは、真面目だからとか講義を聴きたいからという訳ではない。絶対空いているからだ。どこでも講義は聴けるから、出来るなら後ろで受けたい。でも、友達と一緒に座りたい人の邪魔になるのは嫌だ。嫌だというか、「す、座っちゃってすみません……」って思う。だから、一度座った席にずっと座るようにしている。
 机に資料を置いて、次にペンを……と鞄に差し入れた手は空を切った。いや、実際には入れっぱなしのレシートとかを掴んだ。そこにペンは無かった。消しゴムはあった。何でだ。
 これが高校の時なら、隣とかに借りれば良い。ただ、大学はそんな感じじゃ無い。残念ながらこの講義に友達はいない。知り合いはいても借りられる(私が貸してと言っても相手に負担をかけない)関係性ではない。困った。講義のメモはスマホさえあれば取れる。ただ、この講義は紙の用紙に感想を書いて出席とするタイプなのだ。
 講義が始まるまで5分。二階下の購買に行くべきか。いや、間に合わない。本当は行っても良かったと思うけど、最終手段。先生に借りることにした。
 先生、ペンを忘れました。貸して頂けませんか。
 先生は初めて見る動物と遭遇したかのように目を丸くした。大学にペンを持ってこなくて、友達にも借りられない人間とは初遭遇だったのかもしれない。それでも、先生は筆箱を探って2つのペンを取り出した。左手に鉛筆を、右手にボールペンを握っていた。
 どっちがいい?
 先生はそう言った。選べるとは思っていなかった私はフリーズしかけたけれど、何となく鉛筆を手に取った。今日の講義は今まで以上に真面目に聞かなければならない。鉛筆は軽かったけれど、プレッシャーは重くのしかかった。

・そんな講義の中で、先生が「生の美味しいウニはプリンみたいな味がする。」みたいなことを言っていた。先生も笑っていたけれど、何かループしている気がする。
 「プリンに醤油でウニの味」はよく聴く。先生は「美味しいウニはプリンの味」と言っている。つまり、ウニが上限突破した先はプリンにたどり着いてしまうということ。もちろん、前者のプリンは安いプリンで、後者は高いプリンだろう。前者は私もやったことがある。正直全然違う。でも、高いプリンに醤油をかけたことは無い。先生の言葉を信じるなら高いプリンに醤油かけた時、ウニの味になる可能性がある。あるのか?

・ちょっと赤裸々に書きすぎたかもしれない。個人は特定されないので、セーフだと思う。

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