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東へ東へグースカグースカ

ここ一年ほど行けてないが、お誘いをもらって東京へ歌いにいくことがある。

旅人気分で東京へ歌いに行く。
いつも住んでいるところを離れて歌いにくのは、どこへ行くにしてもワクワクするものだけど、やっぱり他のところへ歌いに行くのとは心持ちがちょっこし変わる。単純な距離というだけの問題でもない気もする。
大体はバスに乗って行く。
楽器はバスのトランクの中に入れることがでないので手荷物として車内に持ち込んで、股の間に挟む。狭苦しく、隣の席に乗り合わせた人には大変申し訳ない気持ちでいっぱいになる。楽器持ってる人が横に座ってたらハズレだなと自分だったら思う。

しばらく走ると車内は消灯し、会話する人がいなくなり、エンジン音が響き渡る。(たまにいびきを響き渡らせている人もいる)
夜中じゅう東へと走り続け、閉められた分厚めのカーテンから光が漏れ出す頃に到着する。
バスは目的地到着までに、何度かサービスエリアにとまってトイレ休憩を挟むのだが、その都度車内が明るくなりアナウンスが流れる。僕はバスが止まる度起きてしまうのでだいたい寝不足になる。車内が明るくなってもお構いなしに眠っている人を見ると羨ましく思う。

何年前だったか、結局到着までに一睡もできずに、寝不足の中、朝のゴミ出しみたいにぽいっと外に放り出された。(無事予定通り東京まで送りとどけてくれたのにこんな言い方しては悪いけどね。勝手なやつだ)
前日に大阪でライブをしていて、終わったその足でそのままバスに乗り込み、たっぷり疲れているはずなのになぜだか興奮状態に入ってしまって一睡もできなかったのだ。

どこかで仮眠をとろうと街の中をふらふらと歩いて、ある大きい公園にたどり着いた。
ベンチを探すのも億劫だったので、原っぱにギターとリュックを放り投げて寝転んだ。
朝露が服に染みて後悔したが、どうでもよくなってそのままねることにした。
大学の時に講義で見た、サバンナに生きるライオンが朝露で喉を潤す映像を思い出した。3日間飲まず食わずのそのライオンをなぜだか美しいと感じた。

それからお巡りさんに揺り起こされるまでぐうぐうと眠った。
事情を話すと、頑張ってねと優しく声をかけてくれた。
起き上がって周りを見渡すと、犬を連れて散歩している人やジョギングしている人がいたりして街はしっかり動き出していた。もちろんここはサバンナじゃない。





こんな状況下だとなかなか遠くへ歌いに行けない。
それでも今月来月と東京でのライブが決まっている。(それもどうなるかわからないけれど)
だれも知り合いがいないころは、公園でただぼけっとしたり、本を読んでぼけっとしたり、詩を考えてぼけっとしたり。内向きな時間を過ごすことが多かったが、ちょっとずつだけど、東京に音楽の知り合いが増えて、一緒に演奏したり、呑む約束をしたり、楽しみや会いたい人が増えた。
何度も足を運んでいるはずだけど、美味しいご飯屋さんだったり美味いお酒が呑めるところなぞはまったくといっていいほど知らない。それこそ、いいお店は星の数ほどあるだろうに。


東京という街をまったく知らないままでいる。
いっそ住んでしまおうかしらんと思ったことは何度かある。




東へ東へグースカグースカ

















追記
先日、はじめて名古屋に歌いにいきました。
小さい頃住んでたことがあって、ずっとライブしに行きたいなって思ってたところ。
お客さんがあったかくて、楽しかったな。
もっといろんなところへ歌いに行きたいです。


4月18日 下北沢BASEMENT BAR
4月20日 下北沢440
5月7日 目黒パーシモンホール

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