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笑う閻魔に縁あって


薄暮の京の町、千本通りを北に上る。
兄に旅の土産を渡しにいく道中。
「千本ゑんま堂」(引接寺)の前を通りかかった。
此処はその名の通り閻魔様がおられるお堂で、
閻魔様といえば、あの世とこの世の間に立つ門番で、「アンタはいい子いい子だから天国さね」「おんどれは何さらしとったんじゃあ地獄じゃ地獄」といった風にして審判を下すお方である。
舌べろをひっこぬくあのお方。

そんな、ゑんま堂から何やら景気よさげな音が聞こえて来る。気づけば、よたよたほうろうとお堂の中へ入っていた。
奥にはステイジが組まれておりその両翼にはスピーカーが備付けられている。舞台後ろには松の木の絵。幕には「大念佛」の文字。
板の上には仮面を被り袴を身にまとった3人の演者達。
30ほどあるパイプ椅子は満席で座っているのは殆ど高齢者であった。
立見している人も幾らかいて、そこに混じることにした。
演目は「二人大名」というものらしく、狂言をやっているようだ。
落語は本で読んだり、実際に見たこともあるのだが狂言というものに触れることがなく、なんやらほいとなった。(厳密にいえば高校生の時分に能と狂言を生で見ているが、頭の中には何も残っちゃいない)
急いで携帯電話で演目の大体のあらましを調べる。

二人大名
大名が友人の大名を誘って、いつもお供させている家臣を連れずに旅へ出る。
しばらく歩くと自分たちで刀を持つことが、重く感じられたので、通りかかった町人に刀を持たせて、無理やりお供させようとするが、、、。



大名二人が通りかかった町人を脅して、お供させようとするのだが、この町人がいまいち要領を得ない。「後ろからついてこい」と言うと後ろから大名を「小突く」、というようなボケが続く。
それに大名は怒る(つっこむ)のだが、やがて町人は二人の大名から預かった刀をもってして大名を逆に脅しにかけるのである。
脅された大名が服を脱がされるところにはじまり、猫の喧嘩の形態模写をさせられるなどして下克上が成立するのだ。
狂言というのは、喜劇でありコントなのだということすら知らず、あまりのくだらなさ、可笑しさに驚いた。
コメディ調の形勢逆転劇。社会階級が明瞭に存在した時代にこそ痛快で、そして愉快に聴衆にハマったのだろう。
これは面白いものを発見したぞと思った。
是非最後まで見たかったが、そうだ土産だいかんいかんと、後ろ髪引かれる思いで途中退散。
お堂を出て千本通りを上ることにした。

ちなみに、後で動画を見たところ(インターネットネットにゑんま堂で行われた全演目があがっておりました)最後、大名二人が相撲をとらされるのだが、行司である町人をまきこんで、もみくちゃとなり結句、大名ふたりが町人を抱え込んで、板からはけていく、というオチだった。
(なんのこっちゃ)






閻魔様も笑っていらしたんでないかしらん。










追記
昨日テレビをみておりましたら、JA共済のCMを目撃しました。うしろで微かに流れているお歌をうたっております。
こんなことそうそうないと思いますゆえ





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