見出し画像

ソイツの中身は何でしょね


午前。携帯電話がふるえる。
取り出して、確認するも知らない番号。携帯電話からの発信。
少し考える。誰かから電話が掛かってくる用事あったかしら、僕に電話で用がある人間はそれ程多くはないし、どうしようかな無視して二度寝しようかしらあなんてぐずぐず逡巡していたら電話が泣き止んでとたんに静かになった。しいんと。
携帯電話は急に静かになったり、発作的に賑やかになったりして、なんだか赤子みたいである。静かになったその機械の受け取りボックスを確認すると、言伝が吹き込まれていたので、大事な用件だったのかもしれないとすぐに確認する。なんだろうか。

「こちらグースカ運輸です、××県○○町○☆*番地〜のいちやぬぎさまのお電話でお間違いないでしょうか。アマゾネスから代引きで商品が届いております。希望日時ございましたらご連絡お願いします。では失礼致します」
配送業者からであった。荷物、、?代引き、はて?何も頼んではいない筈だけれど、、。
僕は大変な粗忽者なので注文した事自体を忘れてしまうなんて事もありそうだけれど、どれだけ考えても浮かばないので、すぐには折り返さずに、午後に電話(二度寝はせずにね)
先程言伝を吹き込んだであろう人とは別の男が出た。

「あのう...僕に荷物届いているみたいで連絡いただいたのですが」

「はあ、、あっ、スズキさんですか?」

「いえ違います」

「お名前いいですか?」

「いちやぬぎです」

「ああ、いちやぬぎさん、はいはい。えっとお住所はどこでしたっけ?」

「どこそこの〜」

「ああ代引きで荷物届いてますね、如何致しましょう?」

「荷物の差出人って確認できますか?」

「今ね、、確認できないんですよすみません」

「僕のところに電話をくれた方とは違う方ですね?」

「そうなんです、彼はさっき帰ってしまって僕ではわからないんですよ」

「そうですか、、、今日は受け取り無理そうなので明日の午前中にお願いできますか?」

「はい可能ですよ〜、では」

ふむ、矢張り、、。と電話を切った後で今の会話から、思ったところに腑に落ちて、僕はしたり顔となった。やっぱりそうだ、これは詐欺というやつだ。そうに違いない。
これはグースカ運輸の名を騙った小悪党の仕業だ!差し詰め今の電話口の中年男は、詐欺グループの一味だろう。運送会社のドライバアが午前中いっぱいで帰るなんてことあるだろうか、そして中年男は僕の情報も何も知らずに明らかに受け答えがおかしかった。
詐欺だと勘ぐりながら、明日の午前中に指定したのはちょっとした好奇心からであった。家にやってくるのは悪党なのだろうかという。今思えば、そんな事せずに電話口で断ればよかったのだが、、。

結果、家にやって来たのは本物のグースカ運輸の方だった。グースカ運輸も荷物を運ばされている被害者だったのである。
僕はてっきり代引きと称してお金をふんだくる目論みかと思ったが、どうやら違うようで送り主はしっかりアマゾネスの営業所になっておる。
アマゾネスの贈り物機能で、相手の住所さえ知っていれば、差出人の住所を明記せずに倉庫から直接、代引きで送ることができるらしい。では小悪党は何故そんな事しているのかというと、取引が完了するとポイントが付与されるらしく、全くのポイント稼ぎが狙いなのだ。なんと小賢しい。

迷惑千万。意味のない荷物を運ばされている人のことを思うと不憫である。電話口のおっちゃん、疑って申し訳なかった。

皆さまもどうかお気をつけて。










追記

先日また知らない番号からの着信
出ないでいると、何度も何度も何度もかかってくるようだから、只事ではないかもしれないと思い、出てみると

「ヘンデルやろ?」
「いいえ、違いますけど?」
「いや、ヘンデルやろ?社長から番号聞いたから」
「番号間違えてらっしゃると思いますよ」

僕の事をヘンデルだと独り決めしている若い男は、どうにも納得いかないといった様子で電話を切った。あちらが余りにも僕をヘンデルだと信じて疑わないので、そんな渾名つけられたことあったかなと此方が不安になったほどである。

普通、間違い電話というのは、相手の声を聞いて自分が間違えた事に気づくことが大半だろうが、僕とそのヘンデルはそれ程声が似ていたのだろうか、男は最後まで半信半疑であった。なんとも不思議である。
電話というのは思いもよらぬところに繋がる


歪みが存在する。電話はSFだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?