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さんぴん琉球記

4月27日 晴れ


朝6時。いつもより大きなリュックサックにボディバッグ、ギタアを持って家を出る。
傘を持って行く迷ったが雨は降っていないので、持っていかないことにした。

どんより曇り空、電車で空港へ向かう途中、酷く雨が降った。車窓から見えるビル群が鈍くけむる。旅先で雨降られては困るなあと思いつつ、「のぞまない雨はない」という言葉を思い出す。そうだそうだ。

通勤時刻の被ってしまったようで車内は満員。
お供の本は、つい先日近所の古本屋で買った獅子文六の青春怪談。車内が空いてきた後に読む。

だいぶ早めに空港に着いた。
少しして、今回旅を共にするマンドリン弾きの「ジン」という男と合流。
預かり荷物に問題があって、時間を取られはしたものの、時間に余裕を持って来ていたため、無事であった。
空を飛ぶ。
浮いた体を休ませていると、機体はすぐに着陸体制に入り、気づけばそこは琉球国であった。

空港を出るとむわっとした暑さが体の周りを纏う。こんなのではつい酒が呑みたくなるな、なぞと2人でほざく。(2人とも場所が何処であろうと同じこと事を言っていただろう。証拠に彼は飛行機内でもう既に一献やっていた。)
目についたコンビニエンスストアで、さんぴん茶を買い求める。
店員さんは、お愛想よく
「ミュージシャンの方ですか?」と話しかけてきてくれた。なんでもついさっき、すぐ近くのスタジオでラジオ収録があるとかでミュージシャンが来店したみたいなのだ。
歌いに此処へやってきた旨を伝えると、笑顔で見送ってくれ、益々琉球国へ来たのだなと実感する。因みにジンはここでも酒を買っていた。
荷物をおろすべく宿へ向かう。
もちろん、あまり上等だと言えるところではないけれど、天井が空色で三段ベッドのある良い部屋。

腹をすかした2人は、散歩しながら見つけた「あかとんぼ」というお店の「タコライス」をテイクアウトして近くの公園で食べる。
並んでいる時に後ろのお客が、「こんなにも今は値段が高くなっているのか」と何度もぼやいていたのが気になったが、とても美味いものだった。しかし元々いくらだったのか気になる。

そして腹を満たした僕らは飲み屋に赴くことにした。
国際通りから少し外れた、栄町という呑み屋街をふらふらよちよちと歩く。
此処は「せんべろ」という文字がやたら目立つ。呑むには少し早い夕刻であったが、店先で一献やっている先輩方がちらほらいる。

せんべろの一軒目。島らっきょで呑む。
早々と3杯流し込んでから、はしごをかける。ジンは先ほどのタコライスで腹が満腹であてが入らないという。

2軒目 大ちゃん
長渕ファンで昔バンドで歌っていたという、おっとりとした店主と楽しくお喋りしながら呑む。歌いに来ている旨を伝えるとCDを買ってくれると言ってくれた。
やってくる常連の方たちにも、自分たちのことをミュージシャンだと紹介してくれて、音源を持ち歩くべきだったと後悔。
明日も行くかもしれない。
ジンは、気付けば常連のおじさんと何処かへ消えていた。
オリンオンビール、サンピンハイ、泡盛をひとしきり呑んだ後、ジンと合流する。
スナックで常連のおじさんはスピッツを歌っていた。齢は70とのこと。
ジンは常連のおじさんからヤクルトスワローズのグッズをもらう約束をとりつけて、連絡先まで交換していた。彼らしい。

今日は少し呑みすぎた。ふらふら部屋へ戻り
ベットの3階に寝る



4月28日 晴れ


朝6時に目が覚める。晴れている。
ジンはまだ眠っている。
顔を洗ってから散歩がてらに飲み物を買いに外へ出る。
帰りに、宿の真下にある、牛丼屋によく似た体のそば屋に入る。初の沖縄そば。
あっさりとした出汁にうどんのような白くて、わしわしとした麺。とても美味しい。
見慣れないボトルが付いてきて、聞いてみると、島唐辛子を泡盛でつけたものらしく、かけてみたが、かなり辛いけどこれまた美味い。
今日はよく晴れているので海へと繰り出したいなと思いつつ、ふたたび布団に潜り込む。

昼になってようやっとだらだらと2人宿を抜け出し、那覇唯一の浜辺へ向かう。
向かう前に平和通り商店街のとある店でウナネギ巻きとざるもずくを食べる。
食べた後ローカルスーパーに寄る。
黒糖とタンカンがねりこまれた、「ですから唐揚げ」なるものを買う。衣にほのかな甘みと柑橘の酸味がきいてて、美味い。合わせて今日はとても暑いのでポカリスエットを買った。

日差しが強い強い。
泳ぐ人がまばらなその海は午後の光を返して輝き揺らめいていた。
波は穏やかで、手前は透き通って、遠く向こうはべっとりと青が塗りたくられている。
足だけでもとズボンをたくし上げて、その透明な海水の中にちゃぷちゃぷと入った。
遠く向こうにビルのような大きさの船が、横切ると波が生まれる。
浜辺に長くいたせいで、肌がひりりと焼けた。赤らめた体で、町へ呑みに出かける。

途中商店でスナックパインなる果物を購入。
店主であろうお婆ちゃんは方言が強くて何を言ってるのかほとんどわからなかった。

その後に牧志市場にある閉店間際の天ぷら屋に飛び込んで、魚の天ぷらを買い込みコンビニでオリオンビールを買ってこの日は始まった。
その後は牡蠣小屋で牡蠣を食べて(生牡蠣を食べたかったが我慢した)
その後、昨日出会ったおじさんと、相方のジンがやりとりして合流。
3軒目も、酒三杯とおつまみ一品で千円という手頃な店。
その後に、昨日訪れた呑み屋大ちゃんにCDを持って行く。常連さん達が既に呑んでいて、君たちが噂のミュージシャンかと、向かい入れてくれた。僕たちの話は常連さんの中で回っているようだった。 
ヤギ刺しとチャンプルをつまみながら泡盛をいただく。
最後は宿の下のそば屋で沖縄そばを〆に食べた。

やっと明日ライブである。
今日はサンダルで1日歩き続けたので、靴擦れをおこし指の間が真っ赤になった。


4月29日 曇りとスコール

11時宿を出る。
今回読んでいただいた主催者である、こころとことばというバンドの心花さんに車で迎えにきてもらった。
曰く世界一美味しい、首里城の近くにあるハンバーガー屋へ行ったが満席。明日こそは。
変わりにタコスを食べる。美味しい。
人生ではじめてタコスを食べたかもしれない。

また栄町へ行って珈琲を呑みながらゆったりと過ごす。味噌屋の前に何故か椅子が5つほど並べてあってそこに座らせてもいながらお喋り。昼間でも薄暗く路地裏のような此処は心地よい風が通る。話しているうちに段々と眠たくなってしまった。
味噌屋には石垣味噌なるものが売っていて、とても欲しかったけどキロで売っていたので断念。(とても安かった)


今日はoutputというライブハウスで歌う。
楽屋で小坂忠の訃報をしる。

「こころとことば」は4人組バンドで、ボーカルと心花さんはじめ、みんなゆるりとしている印象。歌のメロディが良くって、周りがそれを引き立たせる。MCも同じような印象受けた。
初の自主企画とのことで、そんな機会によんでもらって嬉しい。


4月30日 晴れと曇り

昨日わりかし早く寝たので朝から牧志市場へ
(ジンは昨夜、、というか今朝まで呑んでいたらしく、昼まで眠り込んでいた)

天ぷら屋でもずく天ぷらとサーターアンダギーを買う。
商店で、さんぴん茶の茶っぱとタコライスの缶詰などを買う。
商店やソーキそば屋、呑み屋など、朝からやっているところがちらほらとある。
立ち飲み屋でオリンオンビールとあてに宇那志豆腐の冷奴を食べる
出てきた豆腐は半丁ほどだろうか。驚くほどでかい。隣で朝刊を読みながら飲んでいるおっちゃんによると此処らは、以前シャッター街で最近持ち直したとのこと。
(彼にお豆腐を半分食べてもらおうとしたが、断られてしまった)

主催の心花さんたちとお昼からご飯を食べることに。先程食べた豆腐が大きすぎて、腹が膨れたのは誤算だったものの、世界一美味いというハンバーガーに期待も膨らむ。

昨日満席で入れなかったそのハンバーガー屋は小高い坂を登ったところにあって見晴らしがとても良い。

周りは家屋ばかり。それなのにお店に看板一つ立っていない。階段の手すりに小さくopenと書かれた札が書かれたのみだった。(以前はそれすらなかったみたい)
コンクリート造りの風通しよく広々とした店内に、テーブルが5つほど。僕たちは掃き出し窓のそばにあるパラソル付きのテーブルについた。
店内は至極ゆったりとした時間が流れている。明かりは殆ど灯っておらず、窓から取り入れられる自然光だけ。
那覇を景色を眺めながらお喋り。
トッピング形式で、レタス、トマト、ピクルスという組み合わせにした。

無事ありつくことにできてよかった。
本当にとってもとっても美味しかった。

食べた後は首里城と周辺散策する。
二千円札に描かれている守礼門、樹齢300年の木の姿を拝んだ。
その後一旦部屋に戻り、宿周辺にある酒屋や土産屋をまわる。
中村商店という国際通りから少し外れたところにある酒屋で、昔醸「翠古」という古酒を見つける。なんでも、シー汁浸漬という昔ながらの製法で造られているものらしく一目惚れして、これを買う。
暖流というウイスキー樽でつくられた泡盛も買って、それなりの重さに帰りが心配になる。
そして今日演奏するところへ向かう

演奏するところはAZATFAFAREというこじんまりとしたお店。(ジンが朝まで呑んでいたところである)
心花さんと弾き語りのツーマン。
こころとことばのメンバーが来てくれて、昨日打ち上げのような体となった。
心花さんと共通して好きだと判明したandymoriと僕の曲である、みゅうを一緒歌った。
お店に沖縄に呼んでもらう運びとなった今回の立役者が見に来てくれた。(ここでは詳細は割愛する)
その方はとても素敵な人で、そんな人の心に自分の歌が届いたことを嬉しく思った。
僕に珊瑚礁を見せたいと言ってくれた。
店主さんの素敵なピアノソロを聴かせてもらったのち、お暇させてもらった。
琉球最後のめしは、そばにした。


心花さん、こころとことばのメンバーの方たちには大変お世話になりました。


5月1日 曇り

今日は自分だけ一足先に帰る。
(ジンはまだ1日ふらつくとのこと)
早朝の国際通りには朝まで呑んだのであろう若者がたむろしている。

空港にて指ハブという玩具を買う。
持ってきた本を殆ど読んでいないことに気づいて、帰りに読もうと本を開くもその気にならず飛行機ではずっと寝ていた。
土産を詰めたリュックサックは重い重い。 どこにも寄らずにまっすぐに帰る。

帰京。半袖じゃ肌寒い。
南国を引きずった焼けた肌を風に撫でられ、くすぐったい。
最寄り駅の近くにあるラーメン屋でまぜそばを食べてこの旅を締めくくる。










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