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なんでもない春の嵐は穏やかに



「今回のテストはてんで駄目だったからなあ。殆ど空欄で出しちゃったから点数1桁すら、ありえる」
なんてことを布団の中でぼんやりと考えていた。こんな時、スーパーマンのように微熱がやって来てくれればいいんだけど、そんな事あるわけ無く、体は至って健康であるから、あとは仮病を使うしかない。どうしようか、いっその事、もう一眠りなんて考えている内に、だんだんと頭が冴えてきて、僕は点数が悪い筈が無い、なぜならテストを受けていないのだからということが判明する。

夢を見ていたみたいだ。意識を取り戻してからだいぶ長い間、呆けていたようだ。朝。
僕は、今の今まで本当にテストを受けた気になっていて酷く憂鬱だったのだ。阿呆らしい。けど起きた時は本当に憂鬱だったのだ。ああテストを受けていないってなんと素晴らしい事か。

今日は雨が降ったり止んだりを繰り返している。今は降ってないけれどアスファルトは濡れている。
朝飯に残り物の小松菜のお浸しと、お粥を食べる。殆ど朝は食わないのだけれど、今日は。
それにトマトジュース。
トマトジュースは昔っからの好物で、これを飲むとむくみ改善の効果があるようで、確かに、こいつはいいかもしれない。
三杯に一杯くらいビールをレッドアイにするのもありだ。


奮発してホテルのモーニングなんかすると、特別な気持ちが味わえる。何もホテルでなくとも近所にある喫茶店でモーニングするだけで、その日一日の心持ちがだいぶと変わる。
今日はもちろん行かないけれど。

そんな今日は祝日なのね、知らなかった。
春分の日。それに国際幸福デー。電卓の日。LPレコードの日であるらしい。
僕にとって今日は「これといって特別なものがない、なんでもない日」にあたるかもしれない。

このなんでもない朝の出来事を書きつけている今は夕方、16時15分。
なんでもない朝が通り過ぎると、なんでもない昼がやってきて、そして今は、何でもない夕方の最中にいる。
なんでもない、今日をどこまで文章におこせるだろうかと思った。
珈琲を飲みながら、朝を思い出して、無理矢理にでも書いてみたのだ。

テスト結果に怯える夢をみるなんて、なんとも暢気な。
外を出ると風はびゅうびゅう。街には蝙蝠傘になってしまっている人がちらほら。
春らしく風の威勢がいい。細かい飛沫のような雨が傘を潜り抜けて顔にあたる。冷たい。
歩きながら不倫の男女を描いた曲を聴く。
軽快なテンポ。
「とっくに終わってるのよ、あなた。私。」
「家族に嘘をつき続けるのが耐えられないのね、結局普通の温泉旅館」

僕が暢気な夢から覚めた今日、そんな男女がこの世のどこかにいるだろうな、きっと。今日は国際幸福デーなのに。
やったぜ富籤大当たり!これから何しようかしら、あれやこれやを買って、あそこに遊びに行って〜、電卓カタカタ。
え?勘違い?やっぱり外れてましたって?
ふざけるな!!
電卓を投げつける。電卓の日なのに。そんな奴もいたかもしれない。
発注したレコードが届かない??
今日はレコ発企画ライブなのに?ガビーン。
今日はLPレコードの日なのに。
なんてミュージシャンもいるかもしれない。

この世になんでもない日なんて、無いのだろうな。

なんでもない事を、こうやって一々を書きつけてみると、そんな日も悪くはないなと思えるから、あら不思議。






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