70歳まで働き続けるキャリア資本術

今回は、法政大学キャリアデザイン学部教授の田中研之輔さんが書かれた「プロティアン」というキャリアに関する本をご紹介させていただきたいと思います。

いきなりですが、このような質問を投げかけられたらみなさんどう思いますか?

あなたの仕事が今、無くなったらどうしますか?

そして、明日からどう生きていきますか?

この質問にドキッとした人は読む価値があると思います。

これから私たちは人生100年時代を生きていくと言われています。はたらくことが歴史上、最も長くなる長寿化時代が到来すると言われています。

そう考えると、人生に対して不安を募らせてしまうサラリーマンや社会人だけではなく、就活生も同じ悩みを持っている思っています。

そんな悩みを払拭してくるのが、この「プロティアン・キャリア」です。

プロティアン・キャリアとは、変幻自在に形成するキャリアの事です。

プロティアンキャリアを形成する上で、大事なのがキャリア資本を築いていく事です。

キャリア資本とは、果たして何なのかこれからご紹介していきたいと思います。

キャリア資本とは大きく3つに分解できます。

1つ目はビジネス資本 2つ目は社会関係資本 3つ目は経済資本

初めに、ビジネス資本について説明していきます。

「ビジネス資本」

ビジネス資本は、①ビジネスリテラシー ビジネスプロダクティビティ ③ビジネスアダプタビリティ、という3つの資本の総和のことです。

ビジネスリテラシーとは、様々なビジネスシーンで問われる論理的思考力の基盤となるもので、日々の情報収集と継続的な学習から形成されます。

ex) 英語の学習、読書、新聞

ビジネスプロダクティビティは、ビジネスシーンでの様々な問題から目を背けずに、問題解決するために行為を遂行する力を養うことで形成されます

ex) やり抜く力、計画力、実践力、新しいことへの挑戦、問題解決力

ビジネスアダプタビリティは、様々な変化に関心を持ち、変化に対応する適応力から形成されます。

ex) テクノロジー、海外国内の社会変化に関心があるか

この3つの中から特に重要なビジネスアダプタビリティに絞ってお話しします。

今、世の中に目を向けてみると、ガソリン自動車が電気自動車へ、紙のメディアからウェブメディアへ、音楽などパッケージ販売から配信サービスへ、見渡せば色んなものが気づかないうちに大きく変容をとげてますよね。

今の時代、大きな変化に適応することが出来なければ、いつの間にかに職を失ってしまっているということも考えられます。

この変化を前向きに受け止めて、適応していくことがアダプタビリティを養うことに繋がっていきます。

プロティアン・キャリアは、ある日突然変異のように構築できるものではありません。

組織の壁を超えた様々な関係性を捉えなし、中初期でライフプランを描くこと

その上で、意識的・計画的・戦略的・長期的に行動を重ねることで、経験という見えない資産を蓄えながら、その資産を社会や組織の変化に擦り合わせて適応していかなければなりません

こう考えると、アダプタビリティを養いつつ、定期的に自分のキャリアを社会環境やマーケットの変化に応じアップデートし続けなければならないことはとても難しそうに感じますよね。

そこで日々意識してほしいことが以下の2つになります。

① 自分を客観的に評価し、自問し、内省し、他者から支援受ける方法を把握すること

② 常に学び、自分の人生やキャリアの方向性を再構築出来る能力を磨き続けること

私も、一週間に一回は必ず、自己内省だけに使う時間を設けています。それ以外は何もしないと決め、集中するよう意識してます。

「今の自分は目標とする姿からどの位の距離に位置しているのか、進んでいる方向性は間違っていないか、無駄な事はしていないか、他にやるべき事はないか、今週の課題を次週にどう生かして取り組んでいいくのか」みたいな質問を自分に問いかけるようにして、自己内省しています。

加えて、学び続ける事これもとても重要だと感じています。

本や新聞から何か学ぶことも勿論重要ですが、それと同時に誰かの話を積極的に聞く機会をつくりだして、自分にはない視点や考え方を柔軟に聞き入れて自分の学びや行動に昇華する事も大切な事だと感じています。

改めて、プロティアンキャリアとは、何かを成し遂げた「結果」をキャリアとして捉えるのではなく、経験という資産を積み重ねていく「過程」を、主体的に受け止めていくことです

だからこそ、自分で主体的にキャリアを選択しようとする人々にとって、人生を豊かにする生き抜く術になり得るということです。

次に社会関係資本について説明していきます。

「社会関係資本」

社会関係資本は、「結束型」と「橋渡し型」の2つに区分されます。

「結束型」社会関係資本とは、内向きの試行を持ち、同質的な集団を形成することを指します。

集団の密度をより強固なものにするもので、会員だけが参加できるコミュニティや町内会の組織などがそれにあたります。

「橋渡し型」社会関係資本とは、外向きの指向を持ち、多様な集まりから集団を形成して、集団を「開く」ことで緩やかなつながりを維持します。

有志の集まりや希望者が参加するボランテイアなどがそれにあたります。

社会関係資本を形成する手段として再評価すべきなのが、社外ネットワークになります。

そのネットワークを形成する場として、「異業種交流パーティー」などがあります。

でも、ただ参加して名刺を配って表面的な会話で終始してしまえば、人的ネットワークは築かれません。

そうならないためにも、人的ネットワークを築くことを意識して、変身するための機会だと捉え直すことができれば、より価値は感じられるようになるはずです。

加えて、誰に話しかけるかも重要になってきます。

自分とは異なるタイプの人たちとのコミュニケーションこそ、自分の変身資産を蓄積させることに繋がります。

こうした社外のネットワークを築く機会が得られれば、自分に学ぶや気づきを与えてくれたり、自分を見つめ直す機会を得られることにも繋がります。

これまで以上にビジネスシーン「以外」の関係性は、欠かす事の出来ないキャリア資本になるはずです。

その為、ビジネス資本と同様に、社会関係資本も戦略的かつ長期的に管理し、形成していくことが求めらるようになってくるはずです。

そして、最後に経済資本について説明します。

③ 「経済資本」

これまでお伝えしてきたビジネス資本と社会資本を、どうやって経済資本、つまりお金に転換するのか。

まずは、目の前の仕事に没頭し、ビジネス資本を形成する事。

同時に、1つの組織にキャリアを閉じ込めるのではなく、職場「以外」のネットワークを大切にして、社会関係資本も形成していくことが求められます。

その上で、私はまずこれまで当たり前と捉えられてきた古い価値観や慣習を捨て去ることが大切だと思っています。

例えば、今までは大学を卒業すると1つの会社に入り、定年まで働き続けて、引退するという一本の線で描かれた人生の既定路線は終焉を迎えよとしています。

これからは、会社が自分のキャリアや将来をずっと支えてくれる存在にはなりません。

人生100年時代、自分の意思と戦略でキャリア資本をコントロールしていかなければなりません。

キャリア資本の状況を管理するのは、会社ではなく、自分自身であること

プロティアン・キャリアを構築する上で何よりも重要なのは、自分に対する投資の戦略と、長期的な計画を練り上げていくことです。

そこで、まずはプロティアン・キャリアを形成する為のいくつか行動指針をまとめます。

・他人の価値観ではなく、自分が何を大切にするのかというアイデンティティを磨く

同業者のネットワークの中だけに埋まらない。

・組織に属しながら、外部との社会関係資本を形成する

・組織や市場、社会を分析し、変化に適応するアダプタビリティを磨く

・消費ではなく、戦略的な自己投資でキャリア資本を貯める

筆者が述べているように、変化の激しい過渡期に生きる私たちはこれから先、どんな組織に所属したとしても、自分の人生やキャリアの方向性を自分でデザインする心構えが何より大切になってくると思います。

経済資本を貯める方法として、副業や兼業という選択肢もあると思いますが、長期的に考えてやはりコツコツと自らの努力と歩み寄りでビジネス資本と社会関係資本を構築していくことが人生100年時代変幻自在なキャリアを形成し、その2つの総和が生涯経済資本を高めていくことになると考えています。

最後にまとめとして、これまでのキャリア形成と、プロティアン・キャリア形成との違いについてまとめます。

「従来型のキャリア形成」 

分析:キャリアの「過去ー現状」分析

計画:単線的なキャリアプランニング

焦点:キャリアトランジション

「プロティアン・キャリア形成」

分析:キャリアの「現状ー将来」分析

計画:螺旋的なキャリアプランニング

焦点:キャリア資本術

これまでの昇進や昇格が重視された組織内キャリアでは、過去の実績や現状の働き方がビジネスパーソンの評価基準に捉えられてきました。キャリアを分析する際の視点も「過去ー現状」に焦点を当ててきたのです。

しかし、これからはキャリアの「オーナー」を組織から個人に移すという事は、私たち一人一人が人生の経営者となって戦略を練り、そして実践していく事になります。

私たちが意識していかなければならないのは、変幻自在に「変わる」ことそのものではなく、変わりながらどのようなキャリア資本を形成していくのか、ということです。


最後に私の感想を添えて、終わりにしたいと思っています。

このコロナの自粛期間中、キャリアに関する本を多読してきました。そのうちの1つがこの本でした。

実際、読み進めていくといかに自分がまだ長期的戦略的視点で、キャリアを考えられていなかったのか痛感させられました。

就活の時には、もちろん面接で聞かれる必須事項でもあったので必死に考えて作成しましたが、それは短期的なものでありどこか面接用に合わせたキャリアプランニングなような感じがしていて納得出来ていませんでした。

就活が終わった今、もう一度自分と向き合って、真剣に考えたいと思い、この本書を手にしました。

これからは組織起点から自分のキャリアを考えていくのではなく、自分起点で主体的に自身のキャリアを築いていく姿勢が求められてきます。

その為には、常に色んな事を学びビジネス資本を蓄え、それと同時に社外にも積極的に目を向け、人的ネットワークを築き、社会資本を構築していく必要があると思います。

社会に出る前だからこそ、フラットに今後の自身のキャリアを考える絶好の機会や期間が多く設けられていると思います。

今後のキャリア形成の過程の中で、「どんな資本をこれから蓄えていくか?」「何歳までにどんなスキルや経験を得たいのか?」「その為に、今やるべき事は何か?」「今、自分の立ち位置はどこにあるのか?」常に考え続け、変化に自由自在に対応できるよう十分な準備と計画をこの一年間かけて練っていこうと思っています。

全ては、「はたらくを楽しみ」、自身のキャリアにオーナーシップを持ち自分らしい充実した人生を実現する為に。

そして、この変化のウネリが大きいマーケット感の中で変幻自在なキャリア資本を獲得し、70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術を身につける為に。