VCV Rack2 基本操作

上の動画の内容備忘録

今回は、VCO、ADSR、VCAの具体的な動作を深く掘り下げて見ていく。
動作を分析するために、波形を見るSCOPE、基音が何Hzかを見るTUNATHOR、そしてスペクトラムアナライザーも回路に組み込む。

このように

知らない単語が出てきたので調べる。
*基音と倍音
すべての音は、ピッチ(周波数)の異なるサイン波の足し算でできているらしい。そして、基準になる一番大元のサイン波を「基音(基本波)」という。
例えば、ラの音は440Hz。1オクターブ上のラは880Hz。1オクターブ下のラは220Hz。
こういった基音に対して整数倍の関係にあるサイン波を「倍音(高調波)」という。
人間の知覚できる周波数は20Hzから20KHzと言われているので、一番低い「ラ」 のサイン波は27.5Hz、一番高い「ラ」のサイン波は14.080KHzということになる。 これら全てのサイン波の含まれ方で音色が変わってくる。
一般的に、音に含まれる倍音が多くなればなるほど音色は 明るくなり、逆に倍音の量が少ないと暗くなる。
倍音の種類と音量によって音色は大きく変わる。
周波数の高い倍音ばかり含んでいる音はキラキラしていてクッキリした音、 周波数の低い倍音を多く含んでいる音はどっしりした太い音になる。
ということは、いわゆる「太い音」というのは基音と その周辺の周波数成分に粒が揃っている音ということになる。
非整数倍の周波数を持つ倍音は、非整数倍音と言う。
例えば、打楽器や金属音など、音程のハッキリしない音に多く含まれる。
ピアノの音は弦を叩いた音だけど、叩いた瞬間のハンマーの音もピアノの音の一部。そこには非整数倍音も含まれている。他にもバイオリンを擦った瞬間のノイズ、トランペットやフルートの息を吹き込む音など、雑音のような音も大事な役割を持っている。

本題に戻る。
そもそも、このモジュラーシンセで使われる、V/OCTとか、 ゲートとかっていう信号はなんなのか、どういった信号がケーブルを流れているのか。
これらはすべて電圧(voltage)で、送る電圧によって、モジュールの動作を決めている。

MIDI > CV
MIDIの信号をCV(controlled voltage)、操作するための電圧に直すモジュール。各出力がどのような信号を出しているのか見てみる。

V/OCT
Cの音を弾いてみると、SCOPEは0Vを示す。

C

1オクターブ上のCを弾くと、SCOPEは1Vを示す。

1オクターブ上のC

1オクターブ上がると電圧が1V上がる、という情報を出力している。だから、V/OCT。

GATE
鍵盤を押した/押し続けている/離した、という情報をモジュールに送っている。鍵盤を押してみると、押した瞬間に電圧が10Vになる。押し続けている間は電圧はそのまま10Vで、離すとと0Vになる。何もしないと、0Vのまま。っていう信号がGATEから出ている。

VEL(velocity)
MIDI界隈におけるベロシティっていう用語は、鍵盤の叩き方の強弱が音に反映されることを指す。pcのキーボードにはベロシティの機能がついていないので、キーボードで演奏するとこのVELの信号は動かない。ベロシティに対応してるMIDIなら、弱く弾けば0Vに近く、大きく弾けば10Vに近い信号が出る。

pcのキーボードでは、VELは10Vに振り切れっぱなし

PW(pitch wheel)
ピッチホイールとは、回すことで滑らかにピッチが変化するノブ。ギターのチョーキングみたいな音が出せる。pcのキーボードには当然ついてないから関係ないけど、これがついてるMIDIなら、ピッチホイールを動かすことで電圧が-5Vから5Vの間で変化する。PWは、そう言う信号が送られている出力。

MW(mod wheel)
モジュレーションホイールは、いじることで何かしらの効果がかかるノブ。機種によって違うけど、ビブラートがかかるシンセが多いらしい。SCOPEでは、何もいじらないと0Vで、ノブを回していくと10Vまで電圧が上がる。下げると、0Vに戻ってく。MWはそう言う信号が送られている出力。

RETR(retrigger)
リトリガー。SCOPEに繋いでみると、鍵盤を押した瞬間にパルス波が出て、そこから押し続けようがすぐに引っ込む。押した!って言う合図だけが出る出力。場面により、GATEと使い分けする。

次に、VCO。

SIN
サイン波が出てる。

サイン波

だけど、スペクトラムアナライザーを見てみると、サイン波なのに倍音が出てる。

本来サイン波には倍音がないはず。なんで倍音があるかって言うと、このVCV Rack2のデフォルトのVCOはアナログタイプドオシレーターだから。どの波形も、綺麗な波ではなく少し歪んでいる。プラグインのオシレーターには理想的な波形の出るデジタルタイプドもある。

各波形の特徴を見ていく。

サイン波

サイン波は、倍音を含まず、基音しか出ない。

三角波

三角波は、奇数倍音が少し出てるけど、すぐに減衰していって、高い周波数の倍音は出てない。

矩形波

矩形波は、三角波と同じく奇数倍音しか出てないけど、こっちは高周波数域にも音が出てる。だから、三角波よりもキンキンした高い倍音の入った音がする。

ノコギリ波

ノコギリ波は、奇数倍音に加えて偶数倍音が入ってる。みっちり倍音が詰まってるから、他の波よりうるさいというか、バリバリした音がする。

次に、VCOのパラメータについて見ていく。

FM(フリーケンシーモジュレーション)
別のモジュラーからの信号を送れる
試しにVCOのFMにVCOの信号を送って、どのように音が変化しているのかを見る。

サイン波をFMで送る
紫が元のVCOの波形、緑がFMに繋いだVCO(オペレーター)の波形

波形を見ればわかるように、緑の波が上(+5Vの地点)にきた時、元のオシレーターの波が圧縮されている。つまり、周波数が上がって速い振動になっている。逆に、緑の波が下(-5V)にきた時は、元の波が間伸びしている。つまり、周波数が低くなっている。
このように、取り込んだ波形の振幅によって周波数を変化させ、音色を変えるのが一般的なFMシンセサイザーの仕組み。
根本的な仕組みはモジュレーションソースとして取り込んだ波形の電圧が高いと元の音の周波数が上がり(音が上がり)、低いと周波数が下がる(音が低くなる)ということ。今までは波形としての波打った電圧の値を送っていたけど、定数をモジュレーションソースとして与えるとどうなるのか。

定数を送れる8VERTをFMに繋ぐ

今の状態では音に変化はない。なぜなら、設置しただけの今の状態は8VERTは0Vを送っているだけだから。

8VERTのツマミを回して電圧を上げた

オシロスコープを見ればわかるように、電圧を上げたら周波数が上がった。
このように、FMはFMシンセのように波を与えることで音を変化させるだけじゃなく、定数を与えることでピッチを調節できる。

その他のVCOの機能を見ていく。

FMの影響度を変えるツマミの右にいるLFMは、FMのモードを切り変えるもの。
外部からの信号を受けた時に、どういう変化の仕方をするのか決める。
デフォルトでは1V/OCTで、オンにすると線形で変化する。

インプットの列にあるSYNCは、位相をリセットさせるためのもの。
RETR から繋ぐことで、鍵盤を押すたびに毎回位相がリセットされる。リセットの際に位相が急激に変化することでプチプチというノイズが入ってしまうが、上にあるSOFTをオンにすることで緩和できる。
オシロスコープで波形を見てみると、SOFTをオンにした状態で音を鳴らすと鍵盤を押すたびに波形の向きが逆になっている。
VCVRackのマニュアルによると、波形の向きを切り替えた上で位相がリセットするとプチプチが乗りづらくなるんだそう。よくわからないが、音は変わらないのでいいと思う。


次に、FREQの下にあるPULSE WIDTH(パルスウィズモジュレーション)。パルス幅を変えるツマミ。幅を短くすると、ミョーンって音になる。左右どっちに回しても幅が短くなるけど、オシロスコープを見ればわかるように、左に回した時にはオフセットが上にずれて波形が0V~10Vの内に収まる。元は-5V~5V。右に回したら波形は-10V~0Vの範囲へ。これはこのモジュレーターがそういう仕様ってだけで、こうならないオシレーターもある。

左に回した時
右に回した時

次に、エンベロープジェネレーターをオシロスコープに繋いでみる。

オシロスコープを見ればわかるように、何も押していない時は0V、
押すと、エンベロープジェネレータで作った波形の通りにアタックの速さで一気に10Vまで上がり、ディケイの速さでサステインの高さまで電圧が下がり、離すとリリースの速さで0Vに戻る。そのまんまの動きだけど、何もしないと0V、最高値は10Vということは覚えていた方がいい。

次に、VCAをオシロスコープに繋いで、どういった動きをしているのかをみる。

VCAがlevel100の時の波形

VCAがlevel100の時、波形は-5Vから5Vまでのpp(peek to peek)10V。つまり、VCOから出た波形そのまま。

levelを下げた時の波形

VCAのレベルを100から下げると、振幅は短くなる。
level100で信号がそのまま出てくるということは、VCAでは音量の増幅はできないということ。つまり、VCAはvoltage-controlled amplifierと言いながら実態はアッテネーター、減衰器である。音を小さくするためのモジュールとして認識すべし。

アッテネーターとは別に、アッテニバーターという、位相を反転させることのできる振幅調整器がある。

さっき定数を送るのに使った8VERT。
エイトバートという名前からも分かるように、これはアッテニバーター。

アッテネーターが減衰器、つまり振幅を減らす、入力された信号のダイナミクスを下げて出力するものであるのに対し、アッテニバーターが何かというと、位相を減衰させるだけでなく反転できるものである。


エンベロープの出力を8VERTに繋ぎ、出力をプラスに振り切った (VCAでいう100%)波形
8VERTのノブをマイナスに振り切ると、形はそのままに位相が反転した

このエンベロープジェネレーターが出す信号は、0Vから10Vの間を波形に沿って出力されているが、それを逆に0Vから-10Vの出力に下げる、ということをしてくれたのが8VERT。基本的にこういう機能を持つものをアッテネーターと区別してアッテニバーターと呼ぶ。

まとめ
ここまで見てきたように、モジュールごとに動作は違う。では、動作が不明のモジュールがあった時にどのように動作を調べるかというと、マニュアルを読むのはもちろんだが、より直感的に、オシロスコープやスペクトラムアナライザーを使って調べるのを習慣にすること。モジュールを、なんとなくこういう効果が出るなあで済ますのでは無く、何はともあれオシロスコープに繋いで見てみる。

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