お役立ち本(2)ダニエル・ピンク著『フリーエージェント社会の到来』


 お役立ち本の2冊目は、ダニエル・ピンク著『フリーエージェント社会の到来』(新装版、ダイヤモンド社)だ。2016年1月10日に、私のプライベートのブログに書いた記事を転載する。

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 ダニエル・ピンク著『フリーエージェント社会の到来』(新装版、ダイヤモンド社、2014年8月28日第一刷発行)は、私にとって、定年を前に、これからのライフキャリアを考える際のバイブル的存在になっている。

 昨年はブログは開店休業状態だったが、今年は、これからの人生設計に役立つ本をブログで紹介していこうと思う。すでに読み終わった本を取り上げることが多くなりそうだが、ブログをまとめるにあたって、再読することが、自分にとっても血となり肉となる気がする。
 「フリーエージェント」(free agent, FA)といえば、まず、思い浮かぶのは、プロ野球のFAだろう。ウィキペディアによるとーー。
 いずれの球団とも選手契約を締結できる権利をもつ選手のこと。フリーエージェントとなることができる権利を「フリーエージェント(FA)権」、選手がFA権を行使することを「FA宣言」という。
 FA宣言をして、大リーグで活躍する選手を見ているためか、この言葉には夢を感じる。そして、この本を読むと、特に、定年退職した人の理想の生き方として、フリーエージェントが浮かび上がってくる。
 感動を持って、読み終えたこの本の内容をまとめようと思い、読み返すと、玄田有史氏(東京大学社会科学研究所教授)の序文が、的確にポイントとなる部分を解説してくれているので、この序文をもとに、まず、この本の中身を紹介し、その後で、ぐっと来たフレーズを本文から引用することにしよう。
 ⑴序文より
 「そろそろ、私たちは、組織か、個人か、という不毛な二分法から抜け出さなければならない。大事なのは、組織も、個人も、である」「そんな二者択一を軽々と飛び越えてしまう存在。組織をうまく活用しつつ、同時に個人としての自由や成功を謳歌する。それが本書で示されるフリーエージェントの姿だ」。
 「フリーエージェントとは『インターネットを使って、自宅でひとりで働き、組織の庇護を受けることなく自分の知恵だけを頼りに、独立していると同時に社会とつながっているビジネスを築き上げた』人々のことである」「フリーエージェントに共通するのは、インターネットや地域コミュニティーを活用した、ヨコのネットワークの存在である。ヨコのつながりの存在こそ、フリーエージェントがプロジェクトを成し遂げるための根幹であり、セーフティーネットである」。
 「フリーエージェントの世界では、遊びと仕事の境界がいい意味で曖昧である。むしろその渾然とした状態こそが『クール・フュージョン(かっこいい融合)』という考え方が、フリーエージェントには根を下ろしている」。
 「インターネットが普及し、組織の外部とも格段につながりやすくなり、同時にグローバル化が競争のスピードを加速させるようになると、仕事の前提は『組織』から『プロジェクト(事業)』へ移っていく。仕事はまず組織ありでなく、顧客や取引先から『プロジェクト』がダイレクトに舞い降りてくる。もしくは経営からトップダウンで、リーダーに対し『プロジェクト』のミッションが伝えられ、一定期間内での遂行が求められる」「組織のタテ社会の人間関係に縛られているならば、プロジェクトの期限内での実現は到底不可能である。必要なのは、組織のしがらみにとらわれることなく、適材適所で縦横無尽に活躍できるフリーエージェントの存在だ。重要なプロジェクトの多くは、既存組織のメンバーだけから構成されるのではなく、組織を超えて集まったフリーエージェントたちの手を借りることによってのみ、成し遂げられるのだ」。
 「何から始めればよいのか。まずは、自分はフリーエージェントになると『フリーエージェント(FA)宣言』することだろう。自分のホームページをつくり、そこでFAとなることを宣言する。その上でフリーエージェントとして自分がやりたいこと、やれることの発信をとにかく始めるのだ」「情報であれ、環境であれ、医療・福祉であれ、コミュニティー・ビジネスであれ、今後成長が期待される分野に共通する法則がある。それは『与えられた者こそが与えられる』という法則だ。インターネット上では、情報を発信する人ほど、貴重な情報が集まる」「その上で、日頃思っていたり感じていることについて率直に話し合える仲間を、働いている会社や通っている学校などの外に、せっせとつくることである。それは、SNS、コネクション、同窓会、保護者会、自治会、NPO活動、地域活動など、なんでもかまわない。大事なのは、心をむなしくし、そこで交わされる他人の話や、自分の知らない世界に耳を澄まし、深くうなずき、ときに感動することだ」。
 「フリーエージェントは、けっして夢物語ではない。会社で働いている人なら、オーガニゼーション・マン(組織人)の世界にだけとどまることなく、フリーエージェントとしてもうひとつの別の場所と時間を、今日からつくるはじめるべきだ。大事なのは夢見ることではない。行動することである」。
 1冊を読み終わってしまったような気分になる素晴らしい序文だが(笑)、本文を読み進めていくと、さらにフリーエージェントとして生き、様々なコラボレーションによって、プロジェクトを進めていくことがいかに楽しいか、が分かってくる。
 ⑵本文より
 「大勢のアメリカ人がーーそして次第にほかの国の人々もーー産業革命の最も大きな遺産のひとつである『雇用』という労働形態を捨て、新しい働き方を生み出しはじめている。自宅を拠点に小さなビジネスを立ち上げたり、臨時社員やフリーランスとして働く人が増えているのだ」
 「政治や主流派メディアのレーダーに映らない場所で、数千万人ものアメリカ人がフリーエージェントとして働いている。嫌な上司や非効率な職場、期待はずれの給料に嫌気が差して会社を辞めた人もいる。あるいは、レイオフや企業の合併、勤め先の倒産により、会社を離れざるを得なくなった人もいる。いずれにせよ、彼らの行き着いた場所は同じだった。そして、さらに大勢の人たちがその後に続こうとしている」。
 「いま、力の所在は、組織から個人に移りはじめている。組織ではなく個人が経済の基本単位になった。ひと言で言えば、社会は『ハリウッドの世界』に変わりはじめたのだ」「いまの映画産業は、かつてとはまるで違う仕組みで動いている。特定のプロジェクトごとに、俳優や監督、脚本家、アニメーター、大道具係などの人材や小さな会社が集まる。プロジェクトが完了すると、チームは解散する。その都度、メンバーは新しい技能を身につけ、新しいコネを手に入れ、既存の人脈を強化し、業界での自らの評価を高め、履歴書に書き込む項目をひとつ増やすのだ」。
 「大半のフリーエージェントにとって、必ずしも『大きいことはいいこと』ではない。自分にとっていいことこそ、いいことなのだ。出世や金など『共通サイズの服』の基準で成功を目指す時代はもう終わった。自由、自分らしさ、名誉、やり甲斐など、『自分サイズの服』の基準で成功を目指す時代になったのだ」。
 「資産運用の世界と同じように、仕事の世界でも『分散投資』が生き残りの条件になりつつあるのだ」。
 「弱い絆で結ばれている知り合いは、いつも親しくしている相手ではないからこそ、自分とは縁遠い考え方や情報、チャンスに触れる機会を与えてくれるのだ」。
 「多くの場合、仕事と家庭のバランスを取るという『ゼロ・サム』の世界より、ブレンドするという『ポジティブ・サム』の世界のほうが幸せなのだ。
 「かつて当たり前だった『引退』という制度は、やがて歴史上の一時的な特異な現象として記憶されるようになるのかもしれない」「知識経済の時代には、年輪の刻まれた脳ミソは大きな財産なのだ」。
 「フリーエージェント経済の時代には、人々が生涯を通じて学べるようにするシステムが不可欠だ」。
 「フリーエージェントたちは、職場のコミュニティーを失った代わりに、新しいグループや人的ネットワークを自分たちで築いていく可能性が強い」。
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 私自身も近い将来、フリーエージェントとなり、魅力的なプロジェクトをコラボレーションで進めていきたいと思っている。「君ならコラボしてもいいよ」と言ってもらえるように、フリーエージェントとしての力をいかに蓄えていくか、が当面の課題だ。

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