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第24回 在宅医の佐々木淳さんに、在宅医療を体験して感じた疑問を聞く

 今回のゲストは、在宅医療専門クリニックを運営する医療法人社団悠翔会の理事長、佐々木淳さん。
 佐々木さんは2015年に医療・介護多職種連携のための学びのプラットフォーム「在宅医療カレッジ」をスタート。認知症ケア、高齢者ケア、地域共生社会の学びなど幅広い分野でセミナーを実施している。その内容をまとめた「在宅医療カレッジ・地域共生社会を支える多職種の学び21講」(医学書院)は、超高齢社会における医療・介護の実践的知識を学ぶための必読書になっている。
 今回のインタビューは、訪問医や訪問看護師らの協力で在宅で義理の母親を看取ったキャスターの相川が、実際に在宅医療に接して感じた思い、疑問などを、この分野の第一人者である佐々木さんにぶつける形で進めた。
ーー痰の吸引や胃ろうからの栄養補給など、訪問看護師に頼ればいいと甘く考えていた。実際は退院直後の医療保険で訪問看護師に来てもらえる時でも1日2回が限度。夜中には妻と交代で寝ずの番をして、私たちで痰の吸引を行った。自宅に戻ったのでひ孫にも会えるなど、豊かな時間は過ごせたが、家族も相当ケアに絡まなければならず大変だった。
佐々木 在宅医療は大変な側面もあるが、栄養や水分摂取など工夫次第で楽にする方法もある。
ーー在宅医療をどのタイミングで始めるべきだったのか。リハビリ病院を経由したが、リハビリはほとんどできない状況になってしまっていたので、急性期病院から直接在宅というルートもあったのかと思う。
佐々木 実は急性期から自宅に直接帰るというルートは、今普通に存在する。「この状態で家では面倒をみられないだろう」と思うが、家に帰ると、環境の力で、病院で騒いでたおばあちゃんが普通のおばあちゃんに戻る。
ーー回復の見込みがない段階での延命治療はしないと決めていたが、酸素飽和度が下がり、酸素吸入の必要があった。在宅クリニックの当直医の到着が時間がかかるため救急車を呼び、救急隊に酸素吸入を行ってもらった。在宅医療で救急対応は十分?
佐々木 在宅医療には、5分〜10分で来るという機能は残念ながらないので、日頃からの備えをやっておくというのがすごく重要になる。
ーー医師も働き方改革が必要と言われる中、24時間診てくれとは言わないが、さきほどまで診察に来ていて、出してくれた薬をどうするかみたいな質問さえケータイで答えてくれず、当直医任せだった。家族としては信頼できなかった。 佐々木 やっぱりふだん診てくれる先生が最後まで診るというのが見てくれるのが、患者さんにとっては一番。ですが、1人の先生がずっと24時間対応し続ける、それを何十年も続けるというのはやはり難しい。お医者さんにとっても持続可能で、家族や患者さんにとっても安心な形でなんだろうなって思った。
 一つは先生たちも休みが必要。そういう日だけは僕らのようなクリニックのお医者さんがバックアップするような仕組みがあれば、先生も頑張れるときは頑張る。  二つ目の方法としては、我々のような僕たちも大規模在宅クリニックですけが、できるだけ地域に密着しようというふうに考えて、今例えば東京だと、案件に3キロのエリアしか我々カバーしない。 そうだとしても、夜知らない先生が来て、全然話が通じないというのは、やはり困る。どうすればいいのかーー。 ここで必要なのは二つあって、一つはやっぱり主治医の先生が、患者さんご家族と信頼関係を築き、何でも相談できるっていう関係性を作ること。
 確かに主治医は夜は対応できないかもしれないけれども、その代わり患者さんたちが夜、不安におののくことがないように、昼間のうちに診療を完結させる。  在宅という、お医者さん、看護師さんが普通はいない環境であっても、安心感を高めるための工夫はできるし、そもそも医者というものは単に病気を治療しに行ってるだけではなくて、患者、家族の安心を支えに行ってる、納得できる生き方を一緒に考えるために患者さんの家に行く。
ーー地域包括医療病棟というものが新設されるそうですが。
佐々木 急性期病院で治療する力はすごく強いのだけれど、ケアする力がとても弱い。だから少し足腰が弱っている人が弱らないようにケアをしていくというのが苦手なんです。
 急性期病院とケアのちょうど間ぐらいの機能を持った役割のところが今後必要なんじゃないかっていうことで多分考えられたんだと思います。何かあったら救急車で大きい病院に運ばれるのは、安心感はあるかもしれないけど、お年寄りは、そのまま寝たきりになる。 だからそうじゃなくてもうちょっと高齢の方々の生活に近いところで、ケアもできて、ある程度医療もできという新しい医療が提供できる病院ってのが必要なんじゃないかってことで新設するようだ。

<プロフィール>佐々木 淳(ささき・じゅん)
写真:幡野広志
医師・日本内科学会認定医 日本在宅医療連合学会 評議員 日本在宅救急医学会 理事 内閣府・規制改革推進会議 専門委員 (医療・介護・感染症対応) 厚労省・薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ構成員医師・日本内科学会認定医 日本在宅医療連合学会 評議員 日本在宅救急医学会 理事 内閣府・規制改革推進会議 専門委員 (医療・介護・感染症対応) 厚労省・薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ構成員
1973年 京都市生まれ。 1998年 筑波大学医学専門学群卒業、同年、社会福祉法人三井記念病院に内科研修医として入職。2000年 同消化器内科、2003年 東京大学大学院医学系研究科博士課程入学。 2006年 在宅療養支援診療所MRCビルクリニック開設。 2008年 医療法人社団悠翔会に法人化・理事長に就任。 現在、首都圏と沖縄圏にて24カ所の在宅医療専門クリニックを運営、160名の医師とともに常時8600人の在宅患者に対し、24時間対応の在宅総合診療を提供している。 2021年8月より東京都の委託により東京23区内の新型コロナ感染者への広域支援を担当、これまでに約4000人の在宅コロナ患者に24時間対応の在宅療養支援を行ってきた。
2016年アジア太平洋高齢者ケアイノベーションアワード "Best Home Care Operator"部門、Best Innovation Implementation”部門にてグランプリ受賞。 2017年アジア太平洋高齢者ケアイノベーションアワード "Best Improvement in Health Outcome"部門にてグランプリ受賞。 2017年フォーブス・ウェルネスアワード 公共性部門グランプリ。 2018年Ageing Asia Innovation Forum / Global Ageing Influencer選出。 2018年 船井財団・グレートカンパニーアワード 特別賞受賞 2020年 船井財団・グレートカンパニーアワード 大賞受賞 2021年 日本経営財団賞(顕彰)受賞 2022年 岩佐教育財団 SGDs岩佐賞 大賞受賞
主な書籍: 「家族のための在宅医療実践ガイドブック」(幻冬舎) 「在宅医療多職種連携ハンドブック」(法研) 「超高齢社会を明るい未来にする10の提言」(日本医療企画) 「在宅医療カレッジ・地域共生社会を支える多職種の学び21講」(医学書院) 「在宅医療のエキスパートが教える 年をとったら食べなさい」(飛鳥新社)

 キャスターは町亞聖&相川浩之。
 「翔べ!ほっとエイジ」じゃYouTubeで動画配信。また、主要Podcast、 stand.fmで音声配信している。

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