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第15回 経営コンサルタントの濱田孝一さんに聞く「高齢者住宅バブルは崩壊する?」

  第15回のゲストは、高齢者介護に詳しい経営コンサルタントの濱田孝一さん.。昨年末に、『高齢者住宅バブルは崩壊する』という本を出した。
 終の棲家になるような高齢者住宅に住みたい。相川、町はどのような終の棲家を考えているのか。
 相川は、自宅で可能な限り暮らしたいと思っているが、要介護度が高くなった時には施設に入ることもやむを得ないと考えている。「母親も在宅で暮らしてもらおうと思っていたが、認知症がひどくなりグループホームに入居した」。「グループホームはアットホームでケアマネジャーが親身になって母を支えてくれた」。
 町は、一人暮らしをしているが、もし具合が悪くなった場合に不安を感じており、独身の友人と一緒に住むことも考えている。介護サービスをうまく使って、上手に晩年を過ごしたいという。
 濱田さんは「家族による介護は限界があり、最終的にはプロに任せた方が良い」とアドバイスする。「家族の役割は家族にしかできないこと。契約や判断、死後の後始末など」。そして、「誰に介護を頼むか、きちっと準備をしておくことは大切だ」という。自宅で生活する場合は「できるだけ長く自宅で生活できるように、自宅をバリアフリーにするなどシステムを構築することが大切。そして自宅で暮らせなくなったら老人ホームやグループホームにに入るのが基本」。
 自宅を売ってそれを入居一時金に充てて有料老人ホームに入居する人がいるが、リスクは高い。有料老人ホームは運営会社が倒産する可能性もあるからだ。そうなるとお金も返ってこないし、「出ていってくれ」と言われる可能性もある。
 終の棲家になるような高齢者住宅をどのように探せばいいか。 公的な相談窓口はあるのか。
 民間の紹介センターが多数存在し、老人ホームなどの情報提供を行っている。 紹介業者には法的な資格が必要ではなく、紹介した有料老人ホームからお金をもらうケースが多い。紹介業者は中立を装っているが、実際には営業のアウトソーシングであり、トラブルも多発している。 ケアマネジャーに相談しても、彼らは高齢者住宅の専門家ではない。高齢者住宅の相談に乗れる人材不足が問題視されている  行政が高齢者住宅の専門センターを作り、指導監査やトラブル対応・苦情対応など一体的なサポート体制を整える必要性がある。  
 高齢者住宅選びは難しいが、駄目な老人ホームには特徴がある。駄目なところは情報開示不足であり、価格の説明の曖昧だ。 住宅を選ぶ際には、自立向けの住宅と要介護保険住宅の違いも理解する必要がある。曖昧な説明をする施設は信用できない。美辞麗句やビジネストークが多い施設も基本的に避けた方が良い。 良い老人ホームと悪い老人ホームの違いはリスク管理ができているかどうか。
 低所得者を囲い込むビジネスも横行している。ケアマネジャーを分離させ、ケアマネジメントを改善する必要がある。介護報酬を上げ、独立経営を可能にすることで囲い込みビジネスは潰れる可能性がある。高齢者住宅の価格が安い理由は「囲い込み」であることが多い。介護サービスを系列の介護事業者が担い、必ずしも必要ではないサービスなどもケアプランに盛り込むことにより、利益を得る。
 それでは囲い込みであることにどう気づけばいいのか。濱田さんは「特養よりも15万円以下の低価格な住宅は、基本的にありえない」という。低価格の高齢者住宅は必ずしも必要ではない介護サービスを提供し、社会保障費が膨らんでしまっている。  サ高住の場合、自宅にいる要介護者が介護サービスを依頼するのと同じ介護報酬単価なのだが、同じ建物に高齢者が居住するため、効率よく、介護サービスが提供でき、それゆえに、利益がでやすい。ただ、これを「企業努力:と認められるかといえば疑問だ。もちろん系列の介護事業者にサービスを依頼すること自体は問題ないが、不要なサービスやお年寄りが望まないサービスを提供しようとするのには問題がある。  制度設計が悪く報酬の単価の決め方も実態に即していない。これは国が見直す必要がある。
 高齢者住宅の経営は大変だが、投資ファンドも参入しており利益を出している。そのお金が介護スタッフに回らないのも問題だ。
 「高齢者住宅に限らず、これからの介護サービスは国ではなく自治体が仕切る形になる」と濱田さんは言う。地域包括ケアが2025年、本格スタートし、「医療介護の地方分権」が始まる。 市町村が介護保険制度の保険者であり、地域包括ケアシステムを中心に行うことになる  国からの財政支援はほとんど受けられないため、自治体によって介護サービスの質や内容が異なってくる。地域ニーズに合わせて介護システムを整える必要があるが、財源や人材確保は各自治体の責任であるため、介護サービスのの質は自治体によって変わってくる。老人ホームを指導監査することは自治体の責任だが、実際にはできていない。
 厚生労働省と国交省が縦割りで似たような高齢者住宅を展開しており、統一した基準でも管理運営することができない。自治体では住宅部局と福祉部局に管轄が分かれており、統一感がなく指導監査体制が乱れている。
 地域包括ケアが本格始動すると、自治体は国から最適なサービスを構築するよう求めらるが、自治体によって使える社会保障費が異なり、潰れる自治体も出てくる可能性がある。
 高齢者住宅バブル崩壊と社会保障全般の問題を俯瞰して考える必要性がある。

  キャスターは町亞聖&相川浩之。
 「翔べ!ほっとエイジ」は、YouTube(動画)と主要Podcast、stand.fm(音声)で配信。

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