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第20回 精神科医の和田秀樹さんに聞く〜シン・老人力とは

 今回のゲストは、精神科医の和田秀樹さん。和田さんは2012年の夏に、町、相川がキャスターを務めるラジオNIKKEIの番組『集まれ!ほっとエイジ』に出演。和田さんが監督した映画『「わたし」の人生(みち) 我が命のタンゴ』が公開されるタイミングで話を聞いた。
 この作品は、認知症で問題行動を繰り返す大学の名誉教授役を務めた橋爪功さんや、父親の介護で葛藤する娘役の秋吉久美子さんらが出演、話題を呼んだ。
 「この間で印象的だったことは?」との質問に和田は「3年間のコロナ禍」と語る。「高齢者は会話や散歩などをすることで足腰や脳の力が保たれる」が「自粛生活で、脳や足腰の機能が衰えた人が多かった」と和田さん。
 「日本は臓器別診療が進み、専門家が患者をみる」(和田さん)国だが、高齢者には、さまざまな疾患があり、一人の人間として向き合わないと、誤った医療を施すことにもつながる。「しかし、コロナ禍では感染対策ばかりが優先され、高齢者は自粛で免疫力が大幅に落ちてしまった。「そういった点に警鐘を鳴らす人は少なかった」。
 そんな流れの中で昨年、和田さんが著した『70歳が老化の分かれ道』と、『80歳の壁』は、ベストセラーに。高齢者を改めて考える時代の到来と思いきや、テレビを見ていると、「高齢者」についてしっかり論じる番組も高齢者を楽しませる番組も皆無に近く「70代、80代のライフスタイルを取り上げる本がベストセラーになる時代なのにテレビメディアでは相変わらず若者ばかりを意識した番組づくりが続く」と和田さんは苦言を呈する。
 岸田政権は少子化対策に全力を投入しようとしているが、「政策がうまくいったとしても効果が表れるのは20年後。やはり高齢者を要介護状態にしない。元気高齢者を増やしていくというのが少子高齢化対策の要ではないか」という。
 政府は、将来の労働力不足を危惧するが「AI化やロボット化により、将来的には人手不足ではなく人余りが起こる可能性さえある」と和田さんは予想する。和田さんは最近、高齢者のIT普及に尽力する若宮正子さんとの対談。「若宮さんに限らず、高齢者はスマホやパソコンを使いこなしている。高齢者はITが苦手というのは思い込み」とし、こうした思い込みを払拭するために著したのが「シン・老人力」であると語る。

<プロフィール>和田秀樹(わだ・ひでき)1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。東京大学医学部付属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学学校国際フェローを経て、現在は精神 科医。国際医療福祉大学教授。ヒデキ・ワダ・インスティテュート代表。一橋大学国際公共政策大学院特任教授。川崎幸病院精神科顧問。(写真撮影:三浦憲治)


 キャスターは町亞聖&相川浩之。
 「翔べ!ほっとエイジ」はYouTube(動画)と主要Podcast、stand.fm(音声)で配信。

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